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薬院法律事務所

『婚姻費用・養育費の算定-裁判官の視点にみる算定の実務-』(平成30年4月発行)著/松本哲泓(弁護士・元大阪高等裁判所部総括判事)

2018年07月20日読書メモ

『婚姻費用・養育費の算定-裁判官の視点にみる算定の実務-』(平成30年4月発行)著/松本哲泓(弁護士・元大阪高等裁判所部総括判事)66頁 ~

「標準的算定方式維持の合理性と今後の課題
標準的算定方式を今後も使用する際、どのように取り扱うか

標準的算定方式と日弁連算定方式を比べた場合、権利者にとって後者が有利な結果となる。これは、提言の目的が、子の利益を重視したことによるもので、その視点は、否定されるものではないが、やや理想に偏した面があり、現実性に沿わない場合も生じるように思われる。 加えて、きめ細やかな具体的妥当性を求めた結果、一部実額主義を取り入れ、細かな区分をしたので、複雑な計算を要する場合が生じる。 標準的算定方式が提案される前の実額主義の時代に戻るおそれがあるとの懸念の声もあるところである。その算定方式は、法律家がこれを用いるには、それほど困難といえないであろうが(ただし、例外的処理については、処理方法が確立していない。)、それ以外の人にとっては、使いづらいものとなっていると思われる。標準的算定方式は、提案以来、約15年となるが、前述のように、その時間の経過による基礎的なデータの変動も比較的少ない。そして、その方式は、実務的で利用しやすく、運用が重ねられて、より具体的妥当性のある結果を導くための検討もなされてきている。その結論である分担額は、権利者側からは低いと批判されるけれども、絶対的基準からの批判が多く、個別事情、特別事情がある場合は、これを考慮すれば、それほど低い額になるとは考えられない。標準的算定方式の算定方式としての合理性は、失われているとはいえないといえる。
ただし、標準的算定方式の 提案以来約15年が経過した過程で、前記のように、公租公課、職業費、 特別経費の割合は、2%程度減少している。その割合は低いが、分担額としては、5~10%の差となる。この数値は、当事者にとって、必ずしも低い額ではないから、総収入が、200万円程度を超える事例にあって は、この程度の割合を加算する扱いを提案する。 標準的算定方式はこれが普及したことも一因となり、その運用には やや硬直したものとなったとの批判がある。他方、実務は、個別事情 及び特別事情を類型的に考慮する方法によって、具体的妥当性を図っ ているという側面もある。
標準的算定方式の運用における今後の課題としては、当事者から、 個別事情、特別事情についての考慮が足りないとの非難もあるので、 特に、代理人のいない当事者の事件では親切に、個別事情、特別事情 の有無を検討し、柔軟な解決を図る必要はあろう。」

→日弁連算定方式は実務に取り入れられていませんが、こういった指摘があることを踏まえて、権利者側であれば金額の増加を主張することが考えられます。

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