【解決事例】迷惑行為防止条例違反(否認)、あえて示談交渉をしたことで釈放・不起訴
2021年06月15日解決事例
〈相談前〉
スーパーにおいて女性につきまとって臀部、太もも、胸元などを撮影するという卑わいな言動をしたということで、逮捕され、勾留されていました。
〈相談後〉
着衣の上からの無断撮影行為については、原則として迷惑行為防止条例違反にはあたりません。しかし、一定の場合には「卑わいな言動」として処罰の対象になります。撮影態様、対象、時間といった事情が考慮されて判断されます。
※参考
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37011
判示事項
1 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号)2条の2第1項4号にいう「卑わいな言動」の意義
2 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号)2条の2第1項4号の「卑わいな言動」の要件は不明確か
3 ズボンを着用した女性の臀部を撮影した行為が,被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たるとされた事例
裁判要旨
1 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号)2条の2第1項4号にいう「卑わいな言動」とは,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう。
2 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号)2条の2第1項4号の「卑わいな言動」は,同条1項柱書きの「公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し,正当な理由がないのに,著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような」と相まって,日常用語としてこれを合理的に解釈することが可能であり,不明確ではない。
3 ショッピングセンターにおいて女性客の後ろを執ように付けねらい,デジタルカメラ機能付きの携帯電話でズボンを着用した同女の臀部を近い距離から多数回撮影した本件行為(判文参照)は,被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たる。
(3につき反対意見がある。)
本人は無断撮影行為は認めるものの、つきまとい行為を否認していました。
そうすると、示談交渉はしないで、黙秘ないし否認を貫くという選択肢もあります。
しかし、本人の行為が相手方に対して不快感・不安感を与える行為であったことは間違いありません。
そこで、示談交渉を行うこととし、10万円の示談金で示談を成立させました。
検察官に示談成立を報告すると、速やかに釈放され、不起訴処分となりました。
〈鐘ケ江啓司弁護士からのコメント〉
この事案では、検察官から被疑者に対して弁護人をつけての示談交渉が勧められていました。
検察官としても最終的に起訴できるか疑問の残る案件だったのだと思います。
しかし、現に裁判所が勾留を認めていること、起訴された場合に負担が大きいことを考えると、否認は否認のままで、示談交渉をして示談成立をさせることが有効と判断しました。