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薬院法律事務所

刑事弁護

ネットサーフィンをしていたら児童ポルノを見てしまったという相談


2021年07月13日読書メモ

時々ある相談ですが、意図的に探していたとかいう場合でなければ心配するような話ではないです。

現実的には、偶然ネットサーフィンで見つけた程度で捜査の対象になることはないと思います。単純所持といっても「自己の性的好奇心を満たす目的」が必要だからです。

江口寛章・谷山敬一「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部改正」

警察学論集67巻10号

■「自己の性的好奇心を満たす目的」とは、どのような意味か。

(1)所持の態様としては、

①嫌がらせなどによりメールで送り付けられた場合

②ネットサーフィンによる意図しないアクセス

③パソコンがウイルスに感染し、勝手に児童ポルノをダウンロードした場合

④インターネット上の掲示板に児童ポルノが掲載された場合における掲示板の管理者やサーバの管理者

などの事例も想定されることから、処罰範囲を合理的に限定するため、「自己の性的好奇心を満たす目的」での所持を対象とすることとされたもの。

(2) したがって、上記①から④のような事例は、処罰の対象とはしないこととされた。

(3) なお、この「自己の性的好奇心を満たす目的」という文言は、現行法でも、第2条第2項の児童買春の定義において用いられており、解釈上確立されている。また、所持の目的については、所持の態様、分量、所持している対象の内容等の客観的事情からの推認により立証される。

<参考>平成21年6月26日衆・法務委員会政府答弁4)

○大野政府参考人(法務省刑事局長)「…・“自己の性的好奇心を満たす目的でありましても、そうしていわゆる児童ポルノを所持するに至ったいきさつ、偶然飛び込んできたものなのか、それとも例えば買い集めたものなのか。それから所持している児童ポルノの内容ということもございます。普通の写真なのか、特別に、いわゆるえげつのない内容のものなのか。もちろん量もございますし、それから、どういう形で所持しているのか。たまたま一つだけ持っていたのか、大量に持っていたのか等々の、そうした外部的事情から立証することになるだろうというふうに考えております。」

(児童ポルノ所持、提供等)
第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。