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薬院法律事務所

刑事弁護

兵庫県迷惑行為防止条例の盗撮規制について


2021年08月22日読書メモ

兵庫県の迷惑行為防止条例は、公共空間以外での盗撮規制を始めた先駆けの自治体です。そこでは、警察と検察協議が行われ、のぞき見は規制できないが、盗撮は規制できるという結論になりました。紹介します。

検察庁の意見では、「社会情勢の変化や情報技術の発展に伴い、写真機等の撮影がインターネット上に流出すれば、被害回復が困難であり、損害も多大であるなど軽犯罪法制定時には想定されていなかったもので、県民感情や立法事実からしても条例で上乗せする必要性及び合理性が認められる。」としています。

もっとも、私は、これは立法する場合の議論で、条例での制定が許されるという根拠にはならないと考えます。重要と思われますので、引用します。

「平成27年11月19日
検察庁に対する迷惑防止条例改正検討会議の結果について(報告)

(略)
【検】軽犯罪法との関係は。また、法の目的は違うのか。
【深】(のぞき見とは)観念的競合になる。保護法益が異なる。
【富】軽犯は、人が居ようが居まいが構成要件に該当するが、今回の規制は、人が居なければ罪にならない。ただ、トイレの個室等に人が居れば、服を着ていようがいまいが構成要件に該当することになる。
【検】両方とも成立することも考えられる。法律レベルで、条例でそれ以上の規制を禁止されているという趣旨で読まれる可能性はないか。
【深】上乗せ条例にはなっているが、地域的特殊性、県内の情勢から、目的も軽犯罪法と違い、また判例的にも目的が違えば上乗せは行けると判断している。
【検】同じような条例で、そういう裁判例はあるのか。
【深】この関係の上乗せ条例の規制では、調べたが判例はない」

「平成28年1月13日(水)神戸地方検察庁 改正迷防条例協議

【神戸地方検察庁意見 概要】
○改正条例中
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けないでいるような場所にいる人の姿態を見、写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない

の『人の姿態を見る』規制は、軽犯罪法第1条第23号の『のぞき見』と重複している。この重複は、法で規定される刑罰に対して、条例で上乗せの刑罰となっており、当該上乗せに必要性又は合理性は認められない。」

「ひわい言動に係る改正については、これまでは「ひわいな言動」という抽象的な構成要件で規制していたが、その従前の要件を置きつつ、特に公共の場所等以外においてひわいな言動のうち、写真機等を向ける、撮影するといった行為を類型明示して規制した。
これは、写真機等を向ける、撮影するといえども、軽犯罪法違反の「のぞき見」と重複する部分であり、上乗せといえるが、社会情勢の変化や情報技術の発展に伴い、写真機等の撮影がインターネット上に流出すれば、被害回復が困難であり、損害も多大であるなど軽犯罪法制定時には想定されていなかったもので、県民感情や立法事実からしても条例で上乗せする必要性及び合理性が認められる。
しかし、人の姿態を見る行為については、軽犯罪法違反の量刑を上乗せする必要性、合理性(単に発生件数のみの立法事実ではなく、軽犯罪法違反の量刑では抑止効果が得られず、更に重い刑罰を設定する必要があるという因果関係を疎明する事実)が認められない。
全国的にも、こうした住居等を対象にした、のぞき見の規制を条例で規定しているのは神奈川県のみであったので、神奈川地検での検討資料も確認したが、同地検ではその条項について検討された経緯が確認できなかった。その他の府県で、のぞき見を規制しているのは公共の場所に限っている。これは、軽犯罪法制定時からの時代変化により、公共空間のあり方の変化から、より重い規制を課す必要性があったと思われる。
以上のとおり、神戸地検の意見を提出するので、県警として検討願いたい」