内縁配偶者の相続権と共有物分割請求について
2018年07月20日家事事件
内縁配偶者には相続権が認められていません。
しかし、配偶者とともに財産を築いていたのに、死亡後は全て財産を兄弟に持って行かれるということは著しく不当な場合があります。
そういった場合には、共有持分権があることを理由に請求することが考えられます。
田村洋三(元名古屋高裁部総括判事)ほか『実務相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル』121頁
「民法は,法定相続主義を採っているので,事実婚の配偶者については相続権が認められていない。 このように事実婚の妻には,事実婚の夫の相続財産に対する相続権がないため,財産権に係る訴訟等で,事実婚の配偶者の相続が争点となることはない。
しかし,事実婚の夫が死亡した場合,事実婚の妻が,事実婚の夫と同居生活をしている間に形成した財産について共有持分があると主張して,上記事実婚の夫の相続人に対して,共有持分確認請求又は共有物分割請求をすることが考えられる。その場合,事実婚の夫婦の双方の収入,共有とされる財産の名義及び使用方法,税負担等が検討され,共有であるか否か及び共有である場合の持分が判断されることになる。」
実際にやったことはないですが、「内縁の配偶者だから相続権がない」といって諦めるのは早いかもしれません。
※『有斐閣双書民法(8)親族 第4版増補補訂版』152頁
「相続の問題とは別に、内縁配偶者は、所有名義が死亡した他方配偶者であっても、実質上夫婦の共有に属していた財産については、相続人に対して、その清算を求めることができると解すべきである(大阪高判昭和57年11月30家月36巻1号139頁参照)。」
https://www.kajo.co.jp/book/40628000002.html