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薬院法律事務所

刑事弁護

大麻所持事件、早急に釈放してもらいたいという相談(大麻、刑事弁護)


2024年11月04日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市に住む50代会社員です。昨日、警察から一人暮らしをしている大学生の息子(20歳)が大麻を所持していたということで逮捕されたという連絡がありました。ネットで調べて当番弁護士さんに行ってもらったのですが、大学の友人から大麻を買って使用していたそうです。警察から取調べは受けていたけど、捕まるとは思わずに私たちにはいえなかった、ということでした。当番弁護士さんは多忙で受けられないということで、3日後には国選弁護人がつくといわれたのですが、私としてはなるべく早く出してあげたいです。どうすればいいでしょうか。

 

A、私選弁護人を就けて、勾留をしないように検察・裁判所に働きかけることが考えられます。逮捕された本人にお金がない場合、当番弁護士が、弁護士会の「被疑者援助制度」を利用して、後払い、低額の弁護士費用で受任することもありますが、様々な事情により受任できないこともあります。そういった場合は、費用はかかりますが、私選弁護人をつけることが考えられます。一般に薬物事件では勾留されやすいですが、身元がしっかりしている場合には釈放を実現できることもあります。

※大麻施用罪は令和6年12月12日施行です。

 

【解説】

近時、若年層に大麻の所持・使用が広がっています。大学生であっても、ふとしたことから大麻を手に入れてしまったということはあることです。違法薬物所持事件は逮捕されることがしばしばありますので、まずは身体拘束を解除するための弁護活動が大事になります。弁護人に依頼する場合は、捜査弁護の知識・経験、薬物事犯の知識・経験が豊富な弁護士を選ぶことが大事です。一般に、逮捕されてから、72時間以内に勾留決定がなされますが、勾留決定がなされた場合は、10日間の身体拘束が続くことになります。それだけの期間身体拘束が続くと、周囲の人に発覚する可能性もそれだけ高まります。勾留がされる可能性は高いですが、具体的事情いかんによっては勾留を回避できることもありますので、まずは勾留回避のための弁護活動を尽くすことが大事でしょう。

https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_keizi/index.html

裁判手続 刑事事件Q&A

勾留とは何ですか。
勾留は、身柄を拘束する処分ですが、捜査段階での被疑者の勾留と、起訴後の被告人の勾留とがあります。

(1) 被疑者の勾留
検察官が、逮捕に引き続き、捜査を進める上で被疑者の身柄の拘束が必要であると判断した場合には、裁判官に勾留請求をします。裁判官は、被疑者が罪を犯したことが疑われ、かつ、証拠を隠滅したり、逃亡したりするおそれがあり、勾留の必要性があるときには、勾留状を発付します。
なお,最近10年間の勾留請求事件の処理状況については,こちらをご参照ください(PDF:72KB)PDFファイル。
被疑者の勾留期間は10日間ですが、やむを得ない事情がある場合は、検察官の請求により、裁判官が更に10日間以内で勾留期間の延長を認めることもあります。

ご相談後の流れ(身柄拘束事件)

私は、覚せい剤取締法違反事件で令状発付が違法であるという認定を得たことがあります(福岡地判令和2年12月21日最高裁判所刑事判例集76巻4号430頁)。国選弁護事件で、前例のない論点での違法収集証拠を主張し、強制採尿令状発付の違法が認定されました。一審は有罪判決でしたが、高裁では別の弁護人が就任して無罪判決となっています。最高裁では逆転有罪となっていますが、全ての審級で令状の発付が違法と認定されています。
最判令和4年4月28日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91131

 

【参考リンク】

近時は、大麻の規制が厳しくなり、大麻の使用についても犯罪化されました。

 

令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html

厚生・労働2024年06月19日
大麻草から製造された医薬品の施用等の可能化・大麻等の不正な施用の禁止等に係る抜本改正
~大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律~ 令和5年12月13日公布 法律第84号
法案の解説と国会審議
執筆者:木村歩

https://www.sn-hoki.co.jp/articles/article3567820/

【(2)大麻等の施用等の禁止に関する規定・罰則の整備
① 大麻等を麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に位置付けることで、大麻等の不正な施用についても、他の麻薬と同様に、同法の禁止規定及び罰則を適用する。
なお、大麻の不正な所持、譲渡し、譲受け、輸入等については、大麻取締法に規制及び罰則があったが、これらの規定を削除し、他の麻薬と同様に、「麻薬」として麻薬及び向精神薬取締法の規制及び罰則を適用する(これに伴い、法定刑も引上げ)。】

 

【参考文献】

愛知県弁護士会刑事弁護委員会編『勾留準抗告に取り組む99事例からみる傾向と対策』(現代人文社,2017年12月)61頁

【3 犯罪類型との関係
準抗告が比較的認容されやすい犯罪類型としては、交通事件(事例⑧、⑩、ただし公判請求されるような事案や暴走行為などは棄却)、電車内盗撮/痴漢系事件(事例⑮、㊻、㊽)、比較的事案簡明かつ被害僅少の窃盗(事例⑲、⑳、㉕、㉖、㉟、㊶)、器物損壊(事例㊳、㊴、㊶)を挙げることができよう。逆に、薬物事件のうち、覚せい剤事犯では認容事例は1件もない。大麻所持について、認容事例が1件あるが(事例⑱)、これは被疑者が学年末試験を控えた大学生ということであり、一般化はできないであろう。】