小規模弁護士事務所の経営について
2019年09月16日弁護士業・雑感
最近多くの街弁の経営が苦しくなってきているようです。
それは、経営環境の変化に旧来の成功モデルが通用しなくなっているためだと思います。
昔の弁護士のビジネスモデルとして、『どんな事件でも、正当な事件であれば値段に関わらず引き受けて全力を尽くす。』というものがありました。
これは、弁護士へのアクセスがクチコミに限られていた時代は合理的戦略でした。「あの先生であればなんとかしてくれる」ということで多くの客が集まり、その中で利益率の高い事件も来るという。このビジネスモデルは社会の役に立っていたように思います。
ところが、広告規制の緩和で、広告宣伝を活発にする大規模事務所(「大規模広告事務所」とします。)が出現したことにより、このビジネスモデルは崩れました。利益率の高い顧客がそちらに流れ(事務員にまず聞き取りさせて選別するようです)、残った顧客が街弁に流れるからです。
例えば、昔だと、
1少年事件で手弁当で頑張った、
2その少年の周りで、交通事故で重度後遺障害になり弁護士を探している人がいた
3少年からの紹介で来る
といったこともありえましたが、今は2の時点でスマホで探した大規模広告事務所に流れるわけです。もちろん、それでも3まで進むパターンもありますが、以前よりぐっと少なくなったと思います。
そうすると、街弁の利益率は当然下がります。時間も多少余るので、以前であれば受けなかった事件でも無理して受けたり、あるいは広告費をかけて消耗戦に進みます。広い信用の蓄積を維持している事務所や、その道でトップクラスの事務所は戦えても、それがない事務所は苦しくなる一方です。
「法テラスで値下げ圧力がかかって苦しくなった」という声もありますが、違うと思います。むしろ法テラスで以前は弁護士に依頼できなかった顧客を拾うことで街弁の破綻を先送りしていたのではないかと。
そうなると、固定費を下げて損益分岐点を下げることがまず大事だと思います。そして、一つの方針に拘らずに色々と試しながら進むのが良いのではないかと。私も自分の得意分野はありますが、幅広く事件を受けて色々試行錯誤しています。
一時期、某社が「専門分野で地域一番店を目指せ」とか言っていました。しかし、大規模広告事務所が広告を打つと、実際に支店にいるのは新人でも地域一番店に見えます。なのでこの戦略はあまり有効でないと思います。
私は、一人一人のお客さんに、費用を出す価値のある弁護士なんだと思って頂けるように勉強を続けて、仕事に一生懸命取り組むことを続けるしかないと思っています。しっかり頑張ります。