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薬院法律事務所

刑事弁護

弁護人が、被疑者に完全黙秘のアドバイスをするにあたっての注意点


2024年02月18日読書メモ

否認事件において、弁護戦略として「完全黙秘」を指示すべきだという考え方があります。私は、被疑者が「やっているけど証拠不十分で不起訴を狙いたい」という場合は別として、無実を主張する否認事件であれば、積極否認をした方が良い場合が多いと考えていますが、今の刑事弁護人の中では少数派のようです。

いずれにしても、被疑者が「完全黙秘」をした場合には、警察は被疑者を「犯人」と考えて厳しい取り調べがなされる傾向にありますので、この点は弁護人は十分注意しておくべきです。警察の認識では「完全黙秘≒犯人」なので、それを前提に弁護戦略を立てる必要があります。警察の考え方について記載した近時の文献がありましたので紹介します。

越智啓太「取調べにおける心理学(第16回)被疑者調べの心理学(6) 被疑者行動の心理分析」捜査研究2021年11月号(853号)96頁
【完黙の被疑者
Bくん:なんだかんだといっても私が最もやっかいだと思うのは完黙の被疑者ですね。何を聞いても何も答えない。「何もしゃべりません」と言って完黙の人から, それさえも言わない人までいろいろいますが, こういうタイプはいろいろ試してみてもどうにもならないので, 困ります
A教授:そうだね。このパターンは本当に困ってしまうよね。
(略)
Bくん:完黙はクロといってもいいんですかね。
A教授:ここもさっきと同じように気をつけなくちゃいけないところだね。一般的にみれば,犯人でなければ,完黙のメリットはほとんどないから,クロの可能性が高いように思えるよね。ただ,実際問題としては,知人友人をかばっている場合とか会社に忠誠を尽くしている場合とかで真犯人でないのに完黙する場合はあるし, やはり,警察に良い印象を持っていない場合なんかも反抗のひとつとして完黙することもあるから, それだけで決めてはいけないと思う。
(略)
完黙は, ごまかし切れると思っていたり,勾留期間を乗り切れると思っている場合, しゃべらなければ起訴されないという場合,知人や家族などをかばっている場合などで発生する。
また,事件について弁明できず,話してしまえば確実に有罪になるとか逮捕されると思っているケースでも発生する。】

捜査段階における「積極否認」のメリット