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薬院法律事務所

刑事弁護

盗撮事件の慰謝料相場(東京地判令和2年1月29日判決紹介)


2021年02月10日盗撮問題

盗撮被害については、なかなか裁判にならず慰謝料の基準が見いだしにくいです。私の経験では、駅などでの下着盗撮は10~30万円、トイレ盗撮は20~30万円、性行為盗撮は30~50万円くらいです。幅があるのは、現行犯で逮捕され拡散の可能性があるかないかといったことを考慮します。

今回、デリヘル盗撮での慰謝料請求の事例がありましたので、ご紹介します。

【■29058760

東京地方裁判所

令和1年(ワ)第18444号

令和02年01月29日

東京都(以下略)
原告 X
同訴訟代理人弁護士 山崎明宏
東京都(以下略)
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 若林翔
同 森脇慎也

主文
1 被告は、原告に対し、50万円及びこれに対する平成30年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを7分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
被告は、原告に対し、118万6000円及びこれに対する平成30年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、無店舗型性風俗特殊営業を営む風俗店において接客従業者(いわゆるデリヘル嬢)として勤務していた原告が、原告から性的サービスを受けた被告(顧客)に対し、被告に対する性的サービス中の状況等を被告が原告に無断で撮影したと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害として主張する慰謝料等の合計額118万6000円及びこれに対する不法行為日とする平成30年9月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
なお、被告は、当該無断撮影(盗撮)の事実を否認している。】

 

【3 原告の損害額及び因果関係の有無(争点(2))について
(1) 逸失利益
本件において、原告は、本件盗撮によるショックのため、本件盗撮後の3か月間、本件風俗店を欠勤することが多くなったとして、合計48万6000円の損害(逸失利益)を被った旨を主張し、本件風俗店の代表者が作成した支払証明書(甲4)には、平成30年10月から同年12月まで、原告がそれぞれ4日、3日、2日(合計9日間)、本件風俗店を欠勤した旨の記載がある。
しかし、被告は、原告から本件サービスを受けた際、原告が、年内は学会や就職活動があるため、なかなか出勤できないと発言していた旨を供述している(被告本人8頁)ため、原告が本件盗撮による被害を受けた後、平成30年10月から同年12月まで、本件風俗店を欠勤した事実があったとしても、その原因は、本件盗撮による精神的ショックとは別のもの(上記の学会や就職活動)であった可能性がある。このほか、原告が本件盗撮による精神的ショックにより本件店舗を欠勤するに至ったことを客観的・具体的に裏付ける証拠はない。
そのため、原告が主張する上記の逸失利益については、本件盗撮との相当因果関係を認めるに足りないというほかない。
(2) 慰謝料
他方、被告の本件盗撮それ自体により、性的サービス中の状況を無断で撮影された原告が恐怖、不安を感じたことは、容易に推認される。
それに加えて、本件サービスを受けていた被告が、その状況等を盗撮したこと(本件盗撮に及んだこと)からすると、その際、本件機器には盗撮した動画を保存するための記録媒体(SDカード等)が挿入されていたと推認されるにもかかわらず、前記1(1)ウ(エ)のとおり、被告が逃走の際に本件風俗店のスタッフに手渡した本件機器には、これが挿入されていなかったのであるから、原告が、自身が全裸で2時間にわたって性的サービスを提供する動画を記録した媒体がどこかに存在するのではないか、今後、これがインターネット上に流出・公開されるなどし、自身に不利益が及ぶ恐れがあるのではないかといった恐怖、不安を感じていることも、推認される。
本件盗撮は、原告に対し、上記のような恐怖、不安を与えるものであり、この点を十分に斟酌する必要がある。このほか、本件盗撮の場所・時間・行為態様、撮影された動画内容、これが発覚した後の経緯、原告が本件風俗店を退職するに至るまでの経過など、本件において現れた一切の事情を併せて考慮すると、その精神的苦痛に対する慰謝料は、50万円と認めるのが相当である。
(3) 小括
以上のとおり、原告は、本件盗撮により50万円の損害を被ったものと認められる。
4 結論
よって、原告の請求は主文記載の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
なお、仮執行宣言については、主文第1項に限って認めるのが相当であるから、その限度で認めることとする。

民事第12部

(裁判官 大島広規)

別紙(省略)】