私有の自動車を業務命令で使用しているが、ガソリン代を請求できないかという相談
2024年09月14日労働事件
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市に住む30代の会社員男性です。業務中の移動に私の自動車を利用しているのですが、ガソリン代が結構かかります。会社に出してもらいたいと思うのですが、法的に請求できるでしょうか。
A、本来は業務に必要な備品は会社が準備すべきものです。ガソリン代は請求できるでしょう。
【解説】
「私物」を業務で利用するということはしばしばあります。文房具程度であれば特に問題になりませんが、ご相談のような自動車など一定の費用がかかる場合には問題になります。原則として、業務遂行に必要な備品は会社が用意すべきものですので、そこを私物で代替した場合には使用者に対してその費用を請求できると考えられます。「制服を強制的に購入させる」ということもその意味では問題になるでしょう。ただし、参考リンクにあるように一定の手順を踏んでいれば実費を負担させることも有効とされることもあります。
【参考リンク】
仕事で使う備品を労働者に負担させることはできるか
https://www.gourmetcaree.jp/contents/workqa/other/3751.html
【参考記事】
佐々木宗啓ほか編著『類型別労働関係訴訟の実務〔改訂版〕Ⅰ』(青林書院,2021年6月)44頁
【作業用品代,出張旅費,交際費,作業服,制服,作業器具損料といった業務遂行に必要な設備・費用は,本来使用者が負担すべきものであって,労働の対償ではないから,使用者が労働者に支給していても「賃金」には当たらない。私有自動車を社用に使ったときの定額の維持費, 自動車税の一部支給,ガソリン代などは, 実費弁償であり賃金ではない。】
荒木尚志『労働法〔第5版〕』(有斐閣,2022年12月)151頁
【4 業務必要経費
企業設備,作業備品,業務関連経費等の実費弁済は,本来企業が業務遂行のために負担すべきものであり,作業服39), 作業用品代,出張旅費,社用交際費器具損料等は,通例,「労働の対償」ではない。】