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薬院法律事務所

刑事弁護

警察に押収されたスマートフォンを返してもらえないという相談


2021年09月14日読書メモ

良く「警察に押収されたスマホが返してもらえない」という相談があります。否認事件とか、自白事件でも解析に回されているといった場合が多いです。

 

一般的には、スマートフォンには証拠が多数含まれていることから、いかんともしがたいことが多いです。一応、還付請求ができることや、こういう裁判例があることを伝えます。その上で行うかどうかという判断になります。さっさと別のスマートフォンを購入した方がいいことも。

 

還付請求拒否に対する準抗告申立書の書式はあまり見当たらないのですが、大阪弁護士会編『新版・捜査弁護の実務』(大阪弁護士協同組合,1996年3月)191頁には記載があります。

 

長沼範良ほか編著『別冊判例タイムズ26号 警察基本判例・実務200』(判例タイムズ社,2010年2月)199頁

【66 押収物還付請求却下に対する準抗告
大阪地裁昭和45年9月1 1日決定
昭和45年(む)第202号
押収物件の還付請求についての検察官の却下処分に対する準抗告申立事件
却下処分取消
判時613号104頁
刑事訴訟法430条.222条・ 123条・ 124条

長瀬敬昭
司法研修所教官・判事

1 問題の所在
押収物で留置の必要のないものは,決定で還付しなければならず(刑訴法123条1項), また,所有者等の請求によって仮還付することができることとされ(同条2項) , さらに,被害者に還付すべき理由が明らかなものは被害者に還付すべきものとされているが(同法124条1項), これらの規定は, 捜査機関が行う押収について準用されている(同法222条1項)。 また, 同法430条1項, 2項により,捜査機関が行った押収物の還付に関する処分に不服がある者は,準抗告を申し立てることができる。押収に関する処分については, 明示的な処分が行われることが多いと思われるが,押収物の還付に関する処分については,明示的な処分行為がない場合もあり得るし,そもそも押収処分を受けた者に還付請求権があるのかといった前提問題についても検討しておく必要がある。本件決定は‘還付請求権を肯定するとともに,還付請求後相当期間を経ても還付又は仮還付がなされず,検察官の請求に応じない意思を推認できる場合には, 黙示の意思表示(還付請求却下の処分)がなされたものとして,準抗告を認めた事案である。
また, 実体判断の分野になるが,押収物につき, その留置の必要がないとの判断を示した事案である。】

 

この論点に関する近時の文献としては、金子大作「149押収物の還付請求に対し捜査機関が応じない場合の措置 」(田中康郎監修『令状実務詳解』(立花書房,2020年9月)833頁)があります。

 

刑事訴訟法

第百二十三条

押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。

② 押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができる。

 

伊丹俊彦・合田悦三『逐条実務刑事訴訟法』(立花書房,2018年11月)222頁

【「留置の必要がない」とは,押収物の占有を継続する必要がないことをいい,当該被告事件の審理及び没収の裁判の執行の保全の観点から判断すべきである。証拠としての価値に比べて押収の継続により被押収者の受ける不利益が著しい場合等も含まれる。】

 

高田卓爾・鈴木茂綱編『新・判例コンメンタール刑事訴訟法Ⅱ総則(2)99条~188条7』(三省堂,1995年4月)75頁

【そこで,本条は次条とともに,押収を継続する必要がなくなった場合は,被告事件の終結前に所有者等に押収物を返すことを定めたものである。押収の必要がなくなった場合とは,没収が不必要または不可能であることが明確になった場合または証拠でないことが明らかになった場合のみならず,証拠としての価値に比べ押収の継続によって所有者などの失う財産的価値のほうがはるかに大きい場合なども含むものと解されている。ただ,後者の場合には, 2項に定める仮還付によるのが適当であろう。】

 

河上和雄ほか編『大コンメンタール刑事訴訟法第二版第2巻〔第57条~第127条〕』(青林書院,2010年9月)464頁

【3 留置の必要がない場合
押収の効果としての占有を継続する必要がないことをいう (121条1項による場合も含む)。捜査段階においては犯罪捜査の見地から(将来の公訴維持をも含むことは, もちろんである),被告事件においては公訴維持の観点から判断すべきである(堀籠幸男「押収物の還付」捜査法大系III165頁)。
没収することが不可能であることが判明した場合,任意的没収の対象物について没収の必要がないことの明らかな場合,証拠物でないことが判明した場合,証拠として利用できる見込みのない場合などが, これに当たる(注解刑訴(上)〔高田] 390頁,注釈刑訴2巻〔増井]240頁,高田・刑訴182頁, ポケット出276頁,松尾ほか・条解刑訴237頁)。
さらに,証拠物又は没収対象物として留置の必要が認められる場合であっても,留置の必要性に比して被押収者の不利益が著しい場合も含む(田宮・注釈刑訴142頁,注釈刑訴2巻〔増井〕240頁,捜査法大系111 [堀籠] 166頁)。】