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薬院法律事務所

刑事弁護

警察官の「犯罪の情状等に関する意見」


2019年10月20日読書メモ

あまり知られていませんが、警察から検察官に事件を送致する際には、「犯罪の情状等に関する意見」が添えられています。事件配点などに活用されているようです。

吉田誠治『新版補訂2版 記載例中心 事件送致の手引』(東京法令,2010年8月)265頁

【事件送致(付)害には, これまで説明した事項のほかに, 「犯罪の情状等に関する意見」 (「情状等意見」)を記載しなければならない。
情状等意見を記載する理由は,形式的には,捜査規範195条に, 「事件を送致又は送付するに当たっては,犯罪の事実及び情状等に関する意見を付した送致書又は送付書を作成し, 関係書類及び証拠物を添付するものとする。」と規定され,基本書式例様式53号に情状等意見を記載すべき欄が設けられているからであるが,実質的な理由としては,第一次捜査機関として実際に捜査を行った司法警察員が,それまでの捜査により収集した証拠に基づいて事件全体を総括し,公訴権を有する検察官に対して, 当該事件の事実認定上及び法律適用上の問題点を示すとともに,犯罪の情状及び被疑者の処分に関しても意見を付し,検察官が事件を処分する際の参考に資するためである。また,身柄事件の場合には,逮捕に引き続いて被疑者を勾留し,身柄を拘束した状態のまま捜査を継続する必要があることを勾留請求の権限を有する検察官や勾留を決定する裁判官に対し訴えかけるという趣旨も含まれている。
司法警察員は,第一次捜査機関として,事件の実態,つまり捜査の経過,事件の内容,被疑者の経歴・性格・家庭の状況等, あるいは証拠に表れない事件の背景等を最もよく知っているのであるから,事件に即した適切な情状等意見を記載する必要がある。
検察官も,事件によっては,発生当初から捜査に関与する場合もあるし,送致(付)記録のみによるのではなく,被疑者や被害者, あるいは目撃者等の参考人を直接取り調べるなどして事件の心証を得ることもあるが,通常の事件では,事件の送致(付)によって初めて事件に接するのであるから,捜査を担当した司法警察員がその事件をどのように見ているかは, その後の捜査及び事件処理に当たつて非常に参考になるものである。また,前記(第1章・第1節: 4頁参照)のとおり,第一次捜査機関が付した意見は,刑事手続の中で,姿,形を変えて検察官及び裁判官に引き継がれていき,被疑者・被告人の処分・処罰に反映されていくことになるのである。】

警察公論2018年9月号
東京区検察庁刑事部長 波田野正典
「地域検察官のための捜査書類作成ガイド~検察官はここを見る~ 第18回 簡易書式例(3)」

【本連載でもお話ししたことがありますが(本誌6月号32頁参照),送致書に記載されている「情状意見」を見ることはそう多くありませんでした。
というのも, 自ら捜査を担当していた当時は,先ほどお話しした理由のほかに,警察からの送致事件記録のうち,犯罪を立証するための具体的な証拠となる各書類を詳細に読み込んでいったためでした。
簡単に言えば,警察からの「情状意見」をほとんど参考とすることなく,警察からの送致事件記録に編綴された各書類について,証拠としての価値等を自ら評価し,事件受理時における処分(起訴・不起訴等)の見込みを判断していたからでした。
しかし,最近になって,私は,警察からの「情状意見」に目を通す頻度がかなり高くなってきました。
先ほどお話ししたように,現在の私の主たる事務は,送致事件の区検刑事部検察官への配点と,その事件処分(起訴・不起訴等)の決裁になりますが, l日に各検察官に配点する事件数は,全部で40~50件程度になります。】

【事件配点を担当する検察官が.事件受理時において,起訴・不起訴等の処分の見込みを判断した上で.事件配点時においては.その事件記録の内容を把握してから捜査を担当する各検察官へ事件配点することには.重要な意味があると思うのです。
そして, この場合にこそ,送致事件記録に記載された警察官の「情状意見」が重要となるのです。
なぜなら,通常, この情状意見には,その事件の全体像から認められる被疑者の刑事責任の軽重に関し, 当該事件の捜査を遂げた警察官の意見が記載されているからです。
つまり.捜査を担当した警察官から見て,当該事件の被疑者について,捜査により得られた証拠から評価すると, どの程度の刑事処分が妥当であるかということについて,最終的な刑事処分を決める検察官に伝えているものが「情状意見」なのです。
したがって, この「情状意見」には,当該事件を担当することとなった捜査担当検察官がその処分を決める際に参考となる重要な事項が記載されていることになります。
そのため,事件配点を担当する検察官としては, この「情状意見」の記載内容を読んだ上で, その内容を事件記録に編綴された各書類により確認していけば,事件受理時における当該事件の起訴・不起訴等の処分について一応の見込みを立てることが可能となり,迅速な事件配点にもつながることになるのです。】