車で居酒屋にきた友人に酒を勧めることは、犯罪になるのかという相談
2024年09月12日交通事故(刑事)
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、先日、友人と居酒屋で飲みました。友人は車で来たということでしたが、話が盛り上がるなかで私が酒を勧め、友人も酒を注文していました。翌日、友人が飲酒運転で捕まったと聞きました。私も警察から呼び出しを受けているのですが、処罰されるのでしょうか。
A、いわゆる酒類提供罪(道路交通法65条3項)にはあたりませんが、教唆犯や幇助犯として処罰される危険性はあります。弁護士に相談するべきでしょう。
【解説】
現在、酒気帯び運転に対しては厳しい罰則が課されています。酒類提供罪は、飲酒運転を抑止するために、飲酒運転に対する幇助行為のなかでも悪質性が高いものについて、独立の処罰類型を設けたものです。ただし、条文の構造として、「酒類を提供」したものには罰則を設けているものの、「すすめた」に過ぎない者には罰則を設けていません。そのため、ご相談の事例では酒類提供罪としては処罰されない、という回答になります。
とはいえ、教唆犯や幇助犯として処罰される危険性がありますので、警察から呼び出しがあった場合は弁護士に相談して、故意がなかったことを警察にきちんと主張していくべきでしょう。
【参考文献】
道路交通執務研究会編著『執務資料道路交通法解説(19訂版)』(東京法令出版,2024年1月)662頁
【(3)「酒類を提供」とは
「酒類」とは、酒税法第二条一項に規定するものをいう。アルコール分一度未満の飲料は、ここにいう酒類とはならない。「酒類の提供」とは、自らが事実上支配している酒類を飲酒できる状態におくことをいう。提供を受ける者の要求の有無や有償・無償の別を問わない。単に目の前にある酒をつぐ行為、例えば宴席ですでに自分の前に出されていた酒を隣の者にお酌する行為等は、ここにいう提供には当たらないが、行為が飲酒運転の教唆、幇助行為に当たる場合は教唆犯、幇助犯として立件することとなる。酒類の提供者となり得るのは、酒類を事実上支配している者である。飲食店の従業員で、経営者や責任者等から指示された酒を運ぶだけの役割しかない場合には、酒類を提供しているとは言えない。】
【(4)「飲酒をすすめてはならない」とは
本項の罰則が適用されるのは、酒類の提供行為であり、「すすめる行為」に対しては罰則が設けられていない。これは、単に飲酒を「すすめる行為」だけでは、飲酒運転への関与も弱く、罰則を設けるまでの必要性が認められないことによるものである。ただし、「すすめる行為」が教唆、幇助に該当する場合は、教唆犯、常助犯として処罰されることとなる。】
道路交通研究会「交通警察の基礎知識242 飲酒運転周辺者三罪等について」月刊交通2023年1月号(662号)68頁
※道路交通法
(酒気帯び運転等の禁止)
第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
3 何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
(罰則 第一項については第百十七条の二第一号、第百十七条の二の二第三号 第二項については第百十七条の二第二号、第百十七条の二の二第四号 第三項については第百十七条の二の二第五号、第百十七条の三の二第二号 第四項については第百十七条の二の二第六号、第百十七条の三の二第三号)
第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
五 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第三項の規定に違反して酒類を提供した者(当該違反により当該酒類の提供を受けた者が酒に酔つた状態で車両等を運転した場合に限る。)」