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薬院法律事務所

違法薬物問題

警察から、防犯カメラを見られて逮捕されないか心配という相談(刑事弁護、万引き、盗撮、痴漢等)


2024年09月07日違法薬物問題

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

Q、万引きをしてしまいました。その場で呼び止められたのですが、振り切って逃げました。帽子を被っていましたし、顔は良く映っていないと思っているのですが、捕まるでしょうか。防犯カメラのリレー捜査という手法があると見て怯えています。どの位の期間が経てば大丈夫でしょうか。

A、逮捕される可能性はあります。どの位の期間が経てば心配ないということはいえません。警察がどれだけその事件に取り組んでいるかに左右され、後回しになっている可能性があるからです。

 

【解説】

リレー捜査とは、近時、捜査実務で多用されている捜査手法です。犯行現場やその付近の防犯カメラ、それに犯人が映っている防犯カメラをたぐっていって、犯人が誰であるかを特定する捜査手法です。重大事件にとどまらず、窃盗事件や現場から犯人が逃走した盗撮事件などにも広く活用されています。この捜査手法のために、警察は防犯カメラの設置場所と管理者についてのマップを作成しています(福岡県の場合)。

 

【参考文献】

警察公論2019年11月号40頁

TERMINOLOGY2019
昇任試験に必須の最新時事用語
Partl(Part2は57頁)

【各所に設置されている防犯カメラの画像等を繋ぎ合わせて,事件現場から被疑者の関係先までの足取りを追う捜査手法のこと。「点」にすぎない個々の防犯カメラをリレーのように結びつけて1本の「線」とすることから, このように呼ばれている。この捜査に関しては,警視庁の捜査支援分析センターが顕著な実績を挙げており,例えば,本年5月にお茶の水女子大学付属中学校で発生した秋篠宮家ご長男の悠仁様の机上に刃物が置かれた事件(東京都文京区)でも, この捜査手法が用いられ,犯人の早期逮捕に繋がった。】

 

警察公論2023年5月号付録Win 204-205頁

「リレー方式による防犯カメラ捜査要領について述べなさい」が詳しい手順を書いています。

 

現時点では、これは捜査官が手作業でしていますが、現在はAIによる映像追跡システムの導入が進んでいるそうです。顔が映っていない防犯カメラでも追えるようになっているようで、私は、数年後には日中の街頭犯罪で逃げ切ることは極めて困難という時代が来るのではないかとみています。

 

捜査研究2023年6月号(872号)

平田豊「法執行機関における「DXの推進」について(下)」17-30頁

【都会では、地下街、駅、商業施設など、顔認証のリレー方式で被疑者を追うことができるでしょう。専門の捜査員の育成もされていますが、地方の警察ではそうはいきません。
まず顔が写っている防犯カメラが極めて少なく、遠くに姿が映っていればいい方です。それで被疑者ではないかと自信がもてるはずがありません。そこでAIによって人物の全身の特徴量を数値化して判断するという手法を採用しました。これはかなり優秀で、顔が写っていなくても、後ろ姿でも、横向きでも特徴量から一致と判断していきます。構築してくれたメーカーの開発者に尋ねたところ、正直AIが判断するものは、なぜ一致と見たかは、AIにしか分からないと言っていました。ただ、平易な言葉で説明すると、知人が50メートル先を遠ざかるように歩いている後ろ姿を見たとき、人は○○さんだと分かると思います。それと同じです。そして、その方との付き合いが長ければ長いほど、確度は上がるということで、その関係性の長さがAIにとっては学習データで鍛えるという理論です。
この開発に一番苦労した点は、民間が街頭に設置している防犯カメラの記録形式がまちまちで、統一した記録形式に変換してAIで処理しないとシステムとして機能しないという点でした。そのような変換ツールはこの世に存在しなかったため、一から作り上げる必要があったということです。この変換ツールは、単独で画像の鮮明化等のシステムでも利用できるため、多くの県警察が導入を検討されているようです。
このシステムは、映像追跡システムとして、岡山県警察ではまだまだ運用が始まったばかりで、AIを鍛えている段階ですが、きっと将来には抜群の効果を上げることでしょう。】

 

防犯カメラ映像の収集や再現実験不存在等の不備を指摘して犯人性を否定したバイクとの接触転倒による自動車運転致死事例(福岡地判令4.1.26)