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薬院法律事務所

一般民事

離婚慰謝料を不貞相手に請求できないとする最高裁判例の調査官解説


2019年07月04日読書メモ

今年2月19日に出た、離婚慰謝料を不貞相手に請求できないという最高裁判例、法律のひろばの最新号に家原尚秀調査官による解説が掲載されています。かなり踏み込んだ内容です。

【本判決が「不貞行為に及ぶにとどまらず」と説示していることからすると、単なる不貞行為では足りず、客観的に何らかの付加的な行為(例えば、不貞関係をもった配偶者を編し、脅迫するなど)があってはじめて「離婚のやむなきに至らしめた」と評価されることになるものと解される。そして、この「特段の事情」の主張立証責任については、原告側が負うと考えられるから、実際上その主張立証が奏功する事案は限られるように思われる。】

【不貞慰謝料額の算定において、これまで下級審の裁判例では、不貞行為の結果、婚姻関係が破綻し、離婚するに至った場合においては、そのことを考慮することが多かったといえるところ、本判決の考え方からすると、単純に損害として離婚慰謝料を上乗せすることは許されないものと考えられる。他方で、不貞行為の結果、婚姻が破綻し、離婚するに至った場合には、不貞慰謝料の被侵害利益である「夫又は妻としての権利」という人格的利益に対する侵害も大きかったものと評価することができると考えられる。したがって、前記のような事情について、慰謝料の増額要素として考慮すること自体は許されるものと解される。】

【不貞相手に対する不貞慰謝料と配偶者に対する離婚慰謝料との関係
最一小判平成6年11月24日集民173号431頁は、不貞相手に対して請求された不貞慰謝料に係る債務と、配偶者が負っていた離婚慰謝料に係る債務が、共同不法行為に基づく損害賠償債務であって不真正連帯債務であるとした原審の認定判断を正当として是認する判断を示している。本判決は前記判断を変更するものではないから、今後も両者は不真正連帯債務であると解されることになろう。
ただし、配偶者に対する離婚慰謝料と、不貞相手に対する不貞慰謝料とでは、被侵害利益が異なり、慰謝料の中身が異なる(不貞慰謝料には、離婚自体によって発生する慰謝料を含まない。)ため、このことを考慮して損害額を算定する必要があり、通常は、損害額が異なることとなる(不貞以外の事情が認められない場合は、離婚慰謝料の方が多額になる。)ものと解される。】

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88422%E3%80%80