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薬院法律事務所

刑事弁護

「不送致(保留処分)」について(書類送検の意義)


2021年09月09日読書メモ

刑事訴訟法では、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、微罪処分の場合を除き、検察官に送致(書類送致)しなければならないと定めています。

もっとも、これにはいくつか例外があります。①通常の在宅事件、②身柄事件、③告訴・告発・自首に係る事件に分けて説明いたします。

1.通常の在宅事件

告訴・告発・自首にあたらない在宅事件で、犯罪の嫌疑が十分でないという場合には検察官送致がされないことがあります。合法なのか問題はありますが、そういう運用です。

 

2.身柄事件

逮捕し留置された事件は当然送致(身柄送致)されます。これは刑事訴訟法203条です。

但し、刑事資料研究会(警察庁刑事局刑事企画課)編『新捜査手続問答』(刑事資料研究会,1992年7月)331~332頁では、逮捕留置したけど犯罪が成立しないことが明らかとなったため釈放したときは、送致を要しない場合もありえるとしています。

【A刑事 はい、分かりました。それでは告訴事件等につき被疑者を逮捕して捜査した場合には、送付と送致のいずれによるべきなのでしょうか。

刑事課長 刑訴法203条の規定は、同法246条の送致手続及び同法242条の送付手続の特則を定めたものと解されているので、48時間以内に検察官に送致する手続(刑訴法203条)を採ればいいんだよ。なお、被疑者を逮捕留置して取り調べたところ、犯罪が成立しないことが明らかになったため、釈放したときは、一般事件については送致を要しない場合もあり得るだろうが、当該事件が告訴に係る事件である場合には、刑訴法202条の趣旨にかんがみ送付の手続を採るべきだろうね。】

刑事訴訟法

第二百三条

司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

なお、警視庁の運用としては、強制捜査(捜索・差押・検証等)をした事案、重大で社会的耳目を集めた事案、立件票一放火・殺人・傷害致死・強盗致死傷・強姦致死その他これに準ずる重要事件について、検察官が鑑定処分許可状その他の令状を請求したとき、検察官認知事件であることを明らかにするため当該事件取扱警察署に対して交付する通知書一が交付された事案は送致しているそうです。

 

3.告訴・告発・自首に係る事件

告訴、告発、自首の事件も送致(正式には「送付」)されます。告訴事件は、送検前に告訴取消がなされたとしても送検されます。告訴したこと自体が消滅するわけではないからです。

但し、警視庁においては、自首に係る事件の場合、身代わりであったり虚偽であったりして当該自首に係る事件について嫌疑がないときは自首といえないことから、逮捕した場合は格別、送付する必要はないとされます。

刑事訴訟法

第二百四十二条

司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

第二百四十五条

第二百四十一条及び第二百四十二条の規定は、自首についてこれを準用する。

第二百四十六条

司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

最後に、書類送検とはマスコミ用語です。良く書類送検がニュースになるのは2つの理由が考えられます。ひとつは、警察の在宅事件における報道発表時期が送致後であること、もうひとつは、警察の捜査が一通り完了した区切りになるからです。