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薬院法律事務所

解決事例

【解決事例】児童買春で逮捕・勾留された事件について勾留取消の上、青少年健全育成条例違反で処理


2021年06月14日解決事例

[相談前]

家出した少女を自宅に泊めたことについて、

自宅に泊めることを対価に性交した、と児童買春罪で逮捕・勾留されました。

[相談後]

まず、検察官に意見書を提出し、児童買春罪が成立しないことを主張しました。

児童買春罪の成立については、

①児童(18歳未満)であることの認識
②性交等をすることに対する反対給付として、対償の供与・供与の約束がなされ、

供与されたこと(供与の約束)が社会通念上経済的利益といえること。
③性交等の前に対償が供与され、又は供与の約束があったこと。
④性交等がなされたこと。

の要件が満たされる必要があります。

今回の場合は、②と③が問題になります。

警察官向けの書籍では、「「対償」とは、売春防止法2条にいう「対償」と同義で、現金のみならず物品や債務の免除のほか、役務の提供(労力やサービス等の提供)及び職務の提供(就職のあっせん)についても、具体的な事実関係のもとでこれら性交等をすることに対する反対給付と認められ、かつ、社会通念上それらが経済的利益と認められる場合には「対償」に当たると解される。」とされているところです(福祉犯研究会編『6訂版 執務資料 福祉犯罪の捜査』(東京法令出版,2014年12月)186頁。

その観点からすると、宿泊場所を提供したということは、単純に性交に伴うものとして対償性を欠くとも考えられますし、交換価値があるものを提供したわけでもないので「経済的利益性」を欠くとも考えられます。本人がその間出て行ったわけでもなく、特別に部屋を借りて提供したといったわけでもないので、本人に経済的損失も生じていません。「対償」にはあたらないというべきです。

その後、被疑者と児童の言い分が食い違っているという理由で検察官勾留延長請求がなされました。

これに対しては、すかさず裁判所に対して勾留取消請求を行いました。

具体的な取調状況を踏まえて既に必要な取調は終了していること、警察に保護されている被害児童に対して、被疑者が連絡をとって供述内容を変えようと働きかけるというのは到底現実的ではないこと、勾留延長をすることは虚偽自白を誘発することを厳しく指摘しました。

結果、釈放され、後日青少年健全育成条例違反で罰金刑となりました。

[鐘ケ江 啓司弁護士からのコメント]

児童買春罪の場合、逮捕・勾留されることが多くあります。

示談を勧める弁護人もいますが、児童買春は示談すれば不起訴になるといったものではありません。

立法にあたって活動された議員らによる書籍には次のとおり記載されています。

森山眞弓・野田聖子編著『よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』(ぎょうせい,2005年3月)167頁

【強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、これを訴追し処罰することにより被害者の精神的苦痛等の不利益が増すことが考えられることから、被害者の保護の観点から親告罪としているものと解されています。
しかし、児童買春罪については、加害者やその背後の組織の報復を恐れて告訴できなかったり、保護者への金銭の支払で示談をし、告訴を取り下げさせたりするようなことが通常の性犯罪以上に多いことも考えられ、これを親告罪とすると、児童買春の相手方となった児童の保護や、児童を性欲の対象としてとらえる風潮の抑制、児童一般の心身の成長への重大な影響の防止を十分に図ることが困難になるので、非親告罪としました。】

そのため、私は原則として児童買春や青少年健全育成条例違反では示談交渉はしていません。

その上で、今回のように身体拘束の正当性を争ったり、成立する罪名を争うなどの弁護活動を尽くしています。

また、本人が止めたいのに止められないという性依存症の問題を抱えていることもありますので、関係機関につなぐといった弁護活動をすることもあります。

そういった弁護活動が功を奏した事例としてご紹介します。