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薬院法律事務所

一般民事

ラブホテルに入ったけど不貞はしていないという抗弁について


2019年02月26日家事事件

ラブホテルに入ったけど不貞はしていないという抗弁は、離婚原因の判断においては無意味です。慰謝料にもあまり意味がないとされています。

東弁『平成17年度専門弁護士養成連続講座 家族法』(商事法務,2007年4月)
「離婚原因」について
裁判実務における離婚請求権を巡る攻防
東京地方裁判所判事 阿部潤

16~17頁
『それでは、不貞行為は、どこまで立証が必要なのでしょうか。先ほど、婚姻破綻について述べましたが、離婚請求を認容するには、不貞行為の存在は必要条件ではありません。婚姻が破綻していれば、不貞行為が認定できなくても、離婚請求は認容されます。例えば、婚姻関係にありながら、正当化されない親密な交際の事実が立証できれば十分です。
よく、親密な交際の事実を認めながら、性的関係はないので、離婚原因はないとの答弁をする場合がありますが、これは正しくはありません(これまた、弁護士が被告代理人となっていながら、このような答弁書が多いのです)。
実際の事件であったのですが、夫が妻以外の女性と、複数回、ラブホテルに宿泊したというのです。しかしながら、いずれの日も疲れていたので、性的関係をもたなかったというのです。被告側は、性的関係があったということが決定的なポイントと思っているのでしょうが、裁判所の認識はいささか異なります。婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかという観点では、すでに、自白が成立しているようなものだからです。
もっとも、慰籍料の額に影響があるのではないかという見方があるかもしれませんが、実際には、慰籍料は総合判断ですので、それほど影響がないというのが実感です。』

不貞行為の相手方との関係でも、不法行為の成否には基本的に無意味です。ただ、こちらは慰謝料の額に影響するかもしれません。特に最近の最高裁判例で不貞の相手方に対する慰謝料請求を制限する方向性が示されていますので。

中里和伸『判例による不貞慰謝料請求の実務』(LABO,2015年6月)68頁
『東京地方裁判所平成25年3月25日では、Yが、自らは性的能力がないためAとの不貞関係がなかったと主張したが、裁判所は、次のように判示し不法行為が成立するとした。

結局のところ、合理的な理由なくラブホテル等を継続的に利用するということは、不貞行為が存在するものと社会的に推認されるべき事情であるし、仮に不貞行為が存在していなかったと仮定しても、異性とラブホテルで一緒に過ごすこと自体が、婚姻の継続を著しく困難にする事情に当たると解するのが相当であるから、本件においては、いずれにしても不貞行為の存在と同視すべき不法行為が成立するというべきである。』