18・19歳の特定少年が大麻事件を起こしたら?刑事手続の流れと親の対応ポイント(ChatGPT4.5作成)
2025年07月17日刑事弁護
18・19歳の特定少年が大麻事件を起こしたら?刑事手続の流れと親の対応ポイント
「特定少年」とは?成年年齢引下げ後の18・19歳の扱い
まず「特定少年」とは何かを確認しましょう。2022年4月1日の少年法改正で新設された概念で、**「犯罪行為に及んだ18歳、19歳の少年」**を指します。民法上は成人年齢が18歳に引き下げられましたが、刑事手続では20歳未満であれば依然として「少年」(=少年法の適用対象)と扱われます。つまり18歳・19歳でも少年法の枠組みに沿って手続きが進みますが、17歳以下の少年とは異なる特別ルールがいくつか定められています。
特定少年という区分が設けられた背景には、成年年齢の引下げとのバランスがあります。18歳・19歳は社会的にもある程度成熟しており、自立した行動をとる年齢層です。そのため「未成年だから一律に保護する」だけでなく、必要に応じて厳格な対応も可能にする目的で、少年法上で特定少年に関する規定が追加されました。具体的には原則逆送(後述)対象事件の範囲拡大や実名報道禁止の一部緩和など、18・19歳だけに適用される特例が設けられています。要は**「民法上は成人扱いになる18歳・19歳も、刑事手続では少年法を適用しつつ、従来より厳格な扱いを一部導入した」**という位置づけになります。
逮捕から検察送致まで:成人同様?それとも少年扱い?
それでは、18歳・19歳の特定少年が大麻事件を起こした場合の捜査の流れを見てみましょう。基本的に14歳以上の少年であれば、大人と同じく逮捕され取調べを受ける可能性があります。大麻の所持・使用でも、18歳・19歳であれば十分逮捕され得るので、「未成年だから逮捕されない」というわけではありません。警察での取調べ後は事件が検察官に送致され(通常逮捕から送致までは最長48時間)、検察官がさらに身柄を拘束する必要があるか判断します。
送致後の身柄の扱いについては、大人の場合と少年の場合で手続きが異なります。特定少年であっても基本は少年法の手続きが適用されるため、原則として「勾留」(刑事施設での身柄拘束)ではなく「勾留に代わる観護措置」がとられます。観護措置決定が出ると、特定少年は少年鑑別所に収容され、専門家による性格・環境などの調査を受けることになります。大人のように警察の留置場や拘置所に勾留されるのは、「例外的にやむを得ない場合」に限られるという建前です(少年法48条)。実務上は18・19歳だと勾留が認められるケースも少なくありませんが、法律上は鑑別所での調査を優先する仕組みになっています。
もっとも、特定少年は高校卒業後の大学生や社会人世代でもあるため、家庭裁判所の判断次第では観護措置をとらず在宅のまま調査を進めるケースもあります。例えば家庭や学校・職場での監督体制が整っており逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断されれば、身柄を拘束されずに家庭裁判所の調査を受けることも可能です。このように、捜査段階では原則少年扱い(観護措置)となるものの、状況に応じて在宅手続もあり得る点に留意してください。なお、事件自体は全件送致主義にもとづき、原則として必ず家庭裁判所に送られて審判が行われます。
原則逆送事件の拡大:大麻事案は検察官送致される?
「原則逆送」とは、家庭裁判所が原則として検察官送致(いわゆる逆送致)を決定すべき一定の重大事件類型を指します。少年事件は本来、非行少年の更生を図るため家庭裁判所で保護処分等の教育的措置を講ずるのが基本ですが、凶悪性が高い事件では家庭裁判所から検察官へ事件を送り、成人と同様の刑事裁判にかける仕組みが設けられています。2022年の改正少年法では、この原則逆送の対象事件が18歳・19歳の特定少年に限り大幅に拡大されました。従来は「16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合」等に限定されていたものが、特定少年については殺人、強盗、強制性交等、放火など重大犯罪にまで拡張されています。
では、大麻の所持・使用事件はどうでしょうか?結論から言うと、大麻単純所持・使用は原則逆送対象事件には含まれません。原則逆送の範囲は「死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」が基準であり(少年法第20条及び第62条)、大麻取締法違反(単純所持・使用)の法定刑は**「1か月以上7年以下の懲役」(営利目的でなければ)**と下限が1年未満です。したがって、18歳・19歳の特定少年が大麻を所持・使用しても、それ自体では法律上は原則逆送の対象にはならないことになります。基本的には家庭裁判所で審判が行われ、保護処分(後述)が科されるケースが高いでしょう。
ただし例外的に検察官送致(逆送)があり得るケースもあります。改正少年法では原則逆送該当事件以外でも、家庭裁判所が「刑事処分相当」(保護処分では不十分)と判断すれば検察官に送致できます。大麻事案でも、例えば営利目的で大麻を大量に所持・譲渡していた場合や、他の重大犯罪と併せて行っていた場合など、犯行の動機・態様が悪質と認められれば、家庭裁判所が敢えて逆送を決定する可能性はゼロではありません。もっとも大半のケースでは初犯かつ自己使用目的であることが多く、その場合は家庭裁判所での保護処分で終了するのが一般的です。
刑事裁判になる場合と実名報道のリスク
万一、家庭裁判所が検察官送致を決定し起訴(正式裁判)に至った場合、18歳・19歳の特定少年でも成人と同じ刑事裁判を受けることになります。この場合、少年法が定める実名報道禁止の規定(少年法61条)の適用が除外され、氏名が公表される可能性が出てきます。改正少年法第68条により、特定少年が犯した罪で起訴された場合(※略式手続を除く)は実名や顔写真を報道できると明記されたためです。つまり18歳・19歳でも正式に起訴され公判となれば、テレビや新聞・ネットニュースで実名が報じられ得るわけです。
ただし、略式手続(略式起訴による罰金刑など)にとどまる場合は、引き続き実名報道はされません。略式命令で罰金処分となったケースでは公開の法廷で裁判を行わないため、名前が公になることはないのが通常です。また前述のとおり、大麻の単純使用・所持事件であれば多くは家庭裁判所の保護処分か、場合によっては起訴猶予(不起訴)で終了することが考えられます。実際、初犯で少量の大麻事案なら保護観察処分となる可能性が高く、その場合は前科(有罪歴)はつかず家庭裁判所で手続きが完結します。したがって「必ず実名が報道されるのでは」「いきなり懲役刑になるのでは」と過度に心配しすぎる必要はありません。もっとも起訴され公判になれば実名公表のリスクがあることは心得ておくべきですし、逆送・起訴とならないよう早い段階で適切な対応をとることが重要です。
親の対応ポイント:成年扱いとの違いに注意
18歳・19歳の子どもが大麻事件を起こした場合、親御さんのサポートも未成年と同様に重要な役割を果たします。特定少年とはいえ基本は家庭裁判所での保護手続となるため、親として以下の点に留意して対応しましょう。
- 付添人弁護士の選任: まず真っ先に少年事件に詳しい弁護士(付添人となる弁護士)に相談・依頼することをおすすめします。逮捕直後は家族でも面会できませんが、弁護士であれば接見して状況把握や少年への助言が可能です。その後の家庭裁判所審判でも、付添人弁護士が家族と協力して更生に向けたサポート策を立案・実行し、最適な処分を得られるよう働きかけてくれます。家族だけでできることには限界があるので、早期に専門家の力を借りるのが得策です。
- 環境調整と再発防止策: 少年の更生のためには、家庭環境の立て直しが不可欠です。親は子どもとしっかり話し合い、非行の原因となった生活上の問題点を洗い出して改善策を講じましょう。例えば交友関係の見直しや、生活リズム・金銭管理のルール作りなどです。実際に、付添人弁護士の助言を受けた親御さんが家庭内の監督体制を強化する具体的ルールを定め、親子関係の問題点を改善した結果、審判で不処分(注意のみ)となったケースもあります。親子で真摯に反省し再発防止に取り組む姿勢は、家庭裁判所の心証を良くし処分にも好影響を与えます。
- 学校・職場への対応: 特定少年は高校を卒業していれば学校や職場といった社会生活の場があります。事件が発覚すれば在学先や勤務先にも何らかの影響が及ぶ可能性は避けられません。逮捕・観護措置となれば一定期間拘束されるため、学校には公欠や停学などの手続き、職場には休職や処分の協議が必要になるでしょう。基本的には弁護士と相談しつつ、しかるべき相手(担任教師や会社の上司など)に早めに事情を説明して協力を得ることが望ましいです。隠して進めて後で知られると却って不信を招くため、誠意を持って対応しましょう。
- 報道対応の備え: 前述のように、起訴され公判になると実名報道されるリスクがあります。この場合、マスコミが自宅に押しかけたり周囲の知人に取材したりする可能性もあります。もしそのような事態になったら、対応はすべて弁護士を通じて行うのが基本です。むやみに取材に答えたりコメントを出したりせず、プライバシーの確保に努めましょう。また、起訴に至らないよう弁護士と二人三脚で防御活動を尽くすことが何よりの報道対策となります。
以上のように、特定少年の事件では**「民法上は成人でも刑事手続では少年」**という特有の立場を踏まえ、未成年事件と同じく家族の協力体制が重要です。一方で社会的責任が問われる年齢でもあるため、学校や仕事、報道など周辺への対応にも目を配る必要があります。親としては動揺も大きいでしょうが、まずは冷静に専門家へ相談し、子どもと向き合って更生への道筋を立ててください。親子で一丸となって更生に取り組む姿勢は必ずや良い結果に繋がるはずです。