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薬院法律事務所

「実例捜査セミナー 捜査方針の策定等に工夫を要したストーカー事件」東京地方検察庁検事 福永宏ほか 捜査研究2017年3月号

2018年07月20日読書メモ

捜査研究2017年3月号。

「実例捜査セミナー 捜査方針の策定等に工夫を要したストーカー事件」東京地方検察庁検事 福永宏

「ストーカー規制法に基づき、交際相手であった未成年の被害者Vに対するつきまとい等をしてはならない旨の禁止命令を受けていたAが,SNS上に,過去に撮影したVのリベンジポルノを投稿するなどした、リベンジポルノ法防止法違反事件。
Aは、前年にV宅への住居侵入罪で有罪判決を受けており、ストーカー規制法での禁止命令も受けていた。
Vはリベンジポルノの投稿を知り警察に相談。警察は犯人がSNSにログインした際のIPアドレスを特定し、A方の通信回線からの投稿と突き止めた。しかし、Aの弟もAが逮捕されたことからVに恨みを持っていることから、弟の単独犯、あるいは共犯の可能性もあった。Aのストーカー犯特有の執着性、身勝手な被害者意識からして、全面的に否認するということも想定された。そこで、まず捜索差押を実施した。この解析には相当の時間を要する見込みであったことから、十分な解析の上で逮捕に踏み切る形をとった。但し、AがVに接触しようとすれば予定を早めてAを逮捕する予定であった。
Aは、本件投稿のみならず、Vの名誉を毀損する投稿をしており、本件投稿についてリベンジポルノ防止法違反、児童ポルノ公然陳列罪が成立し、連続する投稿についてストーカー規制法違反(禁止命令違反)、名誉毀損罪が成立し、それに加えて児童ポルノ製造罪が成立すると考えられる状況であった。児童ポルノ製造については、原則として児童の同意の有無にかかわらず成立するものであり、本件では違法性を阻却すべき事由までは認められないと考えた。リベンジポルノ防止法違反と観念的競合。
ストーカー規制法違反で規制対象とされている名誉を害する事項を告げることが、同時に名誉毀損罪にも該当するときは、両罪が成立し、観念的競合になる。本件でもそう。
逮捕後、予想通りAは全面否認した。実は住居侵入時にもスマホを差し押さえて解析したが、当時はリベンジポルノに使われた画像は発見されておらず、高性能の解析機器を利用したことで、秘匿性の高いアプリケーション内に保存されていた画像を発見することが出来た。さらに投稿のIPアドレスの一部が、A方に設置された回線だけでなく、Aの契約する携帯電話会社のものであったことも分かった。
Aは第一回期日では全面否認していたが、弁護人が交代し、新たな弁護人への証拠開示が済んだ後の第2回期日で全面的に自白した。
なお、弁護人から公判請求後に度々保釈請求がされ、被告人質問段階で保釈が許可された。しかし、抗告審で取り消された。未成年者に対するストーカー行為やリベンジポルノを含むといった本件事案の内容、性質を考慮し、身体拘束や刑の執行という重大な不利益による威嚇が、十分な心理的抑制の効果を上げていなかったことを踏まえた決定。控訴・上告したが、実刑判決が確定して懲役刑が執行されるまで、Aの身体拘束は継続した」

→ストーカー行為の事件は難易度の高い事件です。DV事件と併せてくることもありますが、ストーカー行為をした者が被害者意識が強いという場合があります。「俺がこんなことをしたのはあいつのせいだ。」とか。
私は、本人が反省してもうしないという場合でないと、受けていません。

「実例捜査セミナー 知人の覚せい剤取締法違反事件についての証拠隠滅事件の捜査処理について」東京地方検察庁検事 金井洋明

「他人の家で飲んだコーヒーの砂糖に覚せい剤が入っていたかもという弁解をする被疑者甲と、その弁解に併せて覚せい剤を砂糖に混ぜた被疑者Aの話。甲の弁解通り、A方の砂糖から覚せい剤が検出されたが、Aは既に死亡した乙が持ち込んだ砂糖だと弁解した。
しかし、Aのコーヒーメーカーに使用形跡がないこと、Aの言動、甲の親族と乙の携帯電話履歴を解析・捜査することで、甲が弁解を始めた直後頃から、甲の親族とAが頻繁に通話していることが判明したこと、甲とAの交友関係、甲の親族の取調べ、乙が覚せい剤を注射で利用していたこと等から追求し、検事調べで自白「いろいろよく調べましたね。詰めの甘い証拠隠滅でしたね。」」

→明確には書いていませんが、甲の親族が甲の弁解内容を知ったのは甲の弁護人を通じてでしょう。覚せい剤関係は、弁解内容を伝えると周囲が証拠隠滅に動く可能性がありますので、弁護人としてはどこまで話すべきか悩ましいところです。検察官も、まさかAが砂糖に覚せい剤を入れてまで甲をかばうとは予想外だったようです(Aも所持で逮捕されることは見えているので)。

http://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/sousakenkyu/201703/