ご本人に会い、身柄拘束の根拠を確かめ、必要な段階で動く。
ご家族が逮捕されたと知らされても、詳しい事情が分からず、何をすればよいか判断できないことがあると思います。「いつ帰れるのか」「仕事や学校はどうなるのか」「本人は何を話しているのか」と、心配が重なることもあるでしょう。
当事務所では、まずご本人と接見して事情を確認し、現在どの段階にあるのか、身柄拘束を続ける理由と必要性があるのかを検討します。そのうえで、警察官、検察官、裁判官それぞれの判断の段階に応じて、必要な働きかけを行います。
「早く釈放してほしい」という希望を、事実と資料に基づいた主張にする。そのために、事件の内容と捜査状況、ご本人やご家族の生活を丁寧に確認し、弁護活動を組み立てます。
現在、逮捕・勾留中の事件は、福岡県内に限って対応しています。
お問い合わせの際は、ご本人のお名前、留置されている警察署、逮捕された日時、警察から説明された事件の内容を、分かる範囲でお知らせください。すでに弁護士が接見している場合は、その旨もお伝えください。
接見の可否と対応できる日程は、お問い合わせ内容を確認してご案内します。事件の内容やご本人の事情による受任方針については、「刑事弁護のご依頼」をご確認ください。
ご相談・ご依頼後の流れ
1.まず接見し、事件の詳細とご本人の事情を確認します
2.勾留される前から、身柄解放に向けて行動します
3.勾留決定後も、準抗告などで身柄解放を目指します
4.処分の決定過程を踏まえ、検察官と交渉します
5.起訴後の弁護を継続して依頼するか、協議します
1.まず接見し、事件の詳細とご本人の事情を確認します
身柄拘束事件では、ご家族から初回接見のご依頼を受け、私が警察署などに出向くことが多くあります。急いで対応する必要があるため、ご家族が把握していることを事前に伺い、それを踏まえて接見します。
接見では、何があったのか、警察からどのような説明や取調べを受けているのか、すでに何を話したのかを確認します。事件の内容だけでなく、仕事、ご家族との生活、健康状態など、身柄解放に向けた検討に必要な事情もお聞きします。
逮捕されたからといって、疑われている事実が正しいと決まったわけではありません。捜査機関がどのような証拠や事情を根拠に逮捕し、拘束を続けようとしているのか、その前提や評価に問題がないかを検討します。
ご家族からも、生活状況や心配されていることを伺います
ご家族には、事件について知っていること、逮捕までの経過、ご本人の仕事や生活、ご家族が心配していることを、可能な範囲でまとめていただきます。分からないことまで推測して埋める必要はありません。
接見後に速やかに方針を協議できるよう、日程やご都合が合う場合には、ご家族に警察署でお待ちいただくこともあります。ご本人も、ご家族や仕事のことを心配している場合があるため、必要な連絡をどうするかも確認します。
ご本人の弁護方針は、ご本人の意思を確認しながら考えます。ご家族への情報共有についても、ご本人の意向を踏まえ、どの内容を、どのように伝えるかを相談します。
2.勾留される前から、身柄解放に向けて行動します
逮捕された後、必ずそのまま勾留されるわけではありません。警察が留置を続けるか、検察官が勾留を請求するか、裁判官が勾留を認めるかという、それぞれの判断の段階があります。
弁護人としては、今後の判断を待つだけでなく、判断がされる前に、必要な事情と資料を伝えることを重視します。
① 警察段階――留置を続ける必要があるかを検討します
警察は、逮捕した被疑者について、留置を続ける必要があるかを判断します。犯罪捜査規範第130条は、事件の軽重・態様、逃亡や証拠隠滅、口裏合わせなどによる捜査上の支障の有無、ご本人の年齢、境遇、健康などを考慮することを定めています。
現行犯逮捕後など、警察段階で早期の釈放を求める余地がある場合には、その時点で意見を伝えます。一方、逮捕状を取得して逮捕している場合には、通常は事前に逮捕の理由や必要性が検討されています。そのため、判断の前提に誤りがないか、これまで考慮されていない事情がないかを、具体的に確認することが重要になります。
逮捕の形式だけで結論を決めず、現在の事情に照らして、なお拘束を続ける必要があるのかを検討します。
② 検察官の判断前――勾留を請求せず、釈放するよう意見を述べます
一般に、警察が逮捕した場合、警察は身体拘束から48時間以内に、釈放するか、ご本人を書類・証拠物とともに検察官に送致する手続を行います。
送致を受けた検察官は、ご本人を受け取ってから24時間以内、かつ身体拘束から72時間以内に、勾留請求、起訴、釈放のいずれかの対応をすることになります。これは原則的な時間制限であり、法律上の例外もあります。
「逮捕から72時間が経過すれば必ず釈放される」という意味ではありません。期限内に勾留が請求され、その後に裁判官が勾留を認めれば、拘束は続きます。
そこで、検察官が勾留を請求するかどうかを判断する前に、事件の内容やご本人の事情を踏まえ、勾留請求をせずに釈放するべき理由を伝えます。
参考:刑事訴訟法第203条・第205条・第206条(e-Gov法令検索)
③ 勾留請求後――裁判官に、勾留を認めるべきでない理由を伝えます
検察官が勾留を請求すると、裁判官は、ご本人から言い分を聞く「勾留質問」などの手続を経て、引き続き身柄を拘束するかどうかを判断します。
勾留が請求された場合には、裁判官に対して意見書や関係資料を提出するなどして、勾留請求を却下するよう求めます。却下の判断が出た後も、検察官による不服申立ての有無や、実際に釈放されるまでの状況を確認します。
「勾留の理由」と「勾留の必要性」を分けて検討します
勾留には、ご本人が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることに加え、原則として、定まった住居がないこと、証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかが必要です。軽微な事件には要件の特則があります。
さらに、勾留をする必要があるかも問題になります。「身柄を拘束した方が取調べをしやすい」ということと、勾留の必要性が認められることは別です。逃亡や証拠隠滅の現実的な危険と、拘束によってご本人が受ける不利益などを踏まえ、勾留することが相当かを検討します。
こうした区別は、警察官・検察官向けの実務文献でも説明されています。私は、その実務上の考え方も踏まえ、その事件でなぜ身柄拘束を続けるべきではないのかを、具体的に主張します。
参考:刑事訴訟法第60条・第87条・第207条/杉山徳明ほか編著『令状請求ハンドブック〔第2版〕』(立花書房、2021年9月)99頁。
「証拠隠滅のおそれ」を、抽象的な可能性のままにしない
身柄解放に向けた意見を述べる際には、疑われている事実を正確に理解し、その立証に必要な証拠と、証拠隠滅の危険を具体的に検討します。
- どのような証拠が問題になるのか。
すでに確保されている資料と、これから収集されると考えられる証拠を、把握できる範囲で整理します。 - ご本人に、その証拠を隠滅する現実的な可能性があるのか。
証拠の保管状況や事件関係者との関係などを確認し、捜査機関が想定している支障を検討します。 - 身柄を拘束しなくても、手続を進められる事情があるか。
住居、仕事、これまでの出頭状況、身元引受人の有無などを確認し、拘束を続けることによる生活上の不利益も整理します。
例えば、身元引受人がいる場合には、陳述書を取得し、どのような生活環境で、誰が、どのような協力をできるのかを示します。「家族が監督します」という一言だけで済ませず、実際にできることを確認して資料にまとめます。
ご家族にできない約束をしていただくのではなく、協力できる範囲を踏まえて説明します。また、捜査機関の証拠をすべて把握できるとは限らないため、確認できた事情と、なお不明な点を分けて検討します。
参考判例:事件の重さだけで、勾留の必要性は決まりません
最高裁平成27年10月22日決定は、被害額300万円の業務上横領事件について、長期間にわたり在宅で捜査が続けられ、ご本人が任意の出頭要請に応じていたことなどを踏まえ、罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が高いとは認められないとしました。
そのうえで、勾留の必要性を否定した当初の判断を覆すに足りる理由がないとして、勾留を認めた準抗告審の決定を取り消しています。事件の重さだけでなく、具体的な捜査経過とご本人の事情を検討することの重要性を示す事例です。
3.勾留決定後も、準抗告などで身柄解放を目指します
勾留が認められた場合も、その判断をそのまま受け入れて満期を待つのではなく、不服申立てや、その後の事情に応じた身柄解放の方法を検討します。
勾留決定に対する「準抗告」を検討します
捜査段階で裁判官がした勾留の決定に対しては、「準抗告」という不服申立てにより、その決定の取消しなどを求めることができます。勾留の理由や必要性の判断に問題がないかを検討し、主張と資料を整理して申し立てます。
また、示談が成立した、身元引受人が確保できた、捜査が進んで証拠隠滅のおそれが低下したといった事情も、その後の身柄解放を検討する材料になります。
当初の決定の当否を争う準抗告と、勾留の理由や必要性がなくなったことを理由とする勾留取消しの請求などを区別し、その時点の事情に合った手続を選びます。
事案によっては、あえて準抗告をしないこともあります。その場合には、何を優先し、なぜその対応を選ぶのかを説明します。
参考:刑事訴訟法第87条・第207条・第429条(e-Gov法令検索)
勾留の延長についても、その必要性を検討します
被疑者の勾留期間は、原則として勾留を請求した日から10日間です。やむを得ない事情がある場合には、検察官の請求により、裁判官がさらに10日以内の延長を認めることがあります。
この期間は、必ずその日数だけ拘束しなければならないという意味ではありません。期間の途中でも、勾留の理由や必要性がなくなれば、釈放を求めることを検討します。
勾留の延長が問題となる段階では、残っている捜査と、そのために拘束を続ける必要があるのかを検討し、検察官に延長請求をしないよう働きかけます。延長が認められた場合には、原則として準抗告等により争います。
なお、特定の犯罪についての延長の特則や、別の事件での逮捕・勾留など、期間の見通しが異なる場合があります。ご本人の事件については、具体的な手続の状況を確認して説明します。
参考:刑事訴訟法第208条・第208条の2(e-Gov法令検索)
拘束期間中も接見し、取調べへの対応を相談します
身柄拘束が続いている間は、必要に応じて接見し、取調べの内容や捜査の進展、ご本人が困っていることを確認します。そのうえで、黙秘権を含む権利と、取調べへの対応を説明し、ご本人と相談します。
早く帰りたいという思いが強くても、事実と異なる内容を認めるよう勧めることはありません。身柄解放に向けた活動と、事件そのものについてどのように説明・主張するかを、関連づけながらも分けて考えます。
受任後は、ご家族にも私の携帯電話番号をお伝えし、必要な連絡が取れるようにしています。担当警察官や、示談交渉が必要な場合の被害者側にも、連絡先を伝えて対応します。ご家族との情報共有は、ご本人の意向を確認しながら進めます。
4.処分の決定過程を踏まえ、検察官と交渉します
身柄解放に向けた活動と並行して、不起訴や、事案に応じた罰金刑による解決など、事件の最終的な処分についても検察官と意見交換・交渉を行います。
勾留満期だけでなく、検察庁内部の「決裁」も見据えます
担当検察官が処分を決める際には、上司である検察官による「決裁」という、方針の確認・承認を受ける過程があります。弁護人としては、勾留満期の直前になって初めて意見を伝えるのではなく、この検討過程に間に合うように動くことが重要です。
例えば、勾留満期の2日前ころには処分方針の検討や決裁が進んでいることを念頭に置き、必要な主張と資料を準備します。ただし、これはすべての事件に共通する決まった日程ではありません。事件の状況を踏まえ、できるだけ早い段階から意見を伝えます。
口頭の意見交換だけでなく、決裁を担当する検察官にも、主張と根拠が伝わるように、意見書を作成・提出することがあります。
起訴後の立証と、裁判所の判断を見据えて意見を述べます
検察官との交渉では、警察官・検察官向けの実務書や、『警察学論集』『捜査研究』などに掲載されている検察官・裁判官の論文も参考にします。
どのような証拠が収集されていると考えられるか。起訴された場合に、弁護側として何を争い、どのような活動をすることになるか。その主張や証拠を裁判官がどう評価する可能性があるか。確認できる資料と捜査状況を基に、そうした点を検討します。
被害回復や示談、ご本人の生活状況なども踏まえ、なぜその処分が適切だと考えるのかを説明します。単に希望を伝えるのではなく、事実と証拠、法令、実務上の考え方を結び付けて主張することを重視しています。
このような交渉を経て、当初は起訴する意向だった検察官が不起訴とすることや、当初検討されていたものより軽い罪名で起訴することもあります。一方で、意見を述べても処分方針が変わらない場合もあり、その状況も踏まえて次の対応を考えます。
処分を保留したまま釈放することも、検討します
最終的な処分を直ちに決められない場合でも、身柄拘束を続ける必要があるかは別の問題です。事案に応じて、処分を保留したまま釈放し、在宅で捜査を続けるよう求めることもあります。
処分保留での釈放は、不起訴処分や事件の終了を意味するものではありません。釈放後も捜査が続くことがあるため、その後に必要な対応と連絡方法を確認します。
5.起訴後の弁護を継続して依頼するか、協議します
弁護活動を行っても、事案によっては起訴を避けられないことがあります。その場合は、起訴後も私に弁護を依頼するのか、別の弁護士に切り替えるのかを、ご本人と協議します。
国選弁護の利用が可能かも含め、事件の状況とご本人の意向、費用の負担を踏まえて検討します。継続してご依頼いただく場合には、担当する業務と費用について、改めて説明します。
ご本人との合意なく、そのまま起訴後の弁護も受任したものとして活動し、起訴後の弁護費用を請求することはありません。
起訴後に身柄拘束が続く場合には、保釈も検討します
保釈は、起訴後の被告人について、裁判所が定める保証金の納付などを条件として身柄を解放する制度です。起訴前の被疑者には、保釈の制度はありません。起訴前は、ここまでご説明した勾留請求の回避、準抗告、勾留取消しなどの方法で、身柄解放を目指します。
起訴後も弁護を担当する場合には、事件の内容、ご本人の生活状況などを確認し、保釈請求の方針や必要な準備についても協議します。
参考:裁判所「裁判手続 刑事事件Q&A」(勾留・保釈について)
身柄解放と処分交渉を考えるための実務文献
私は、条文や判例だけでなく、警察官・検察官・裁判官が実務上の判断をどのように整理しているかも調べ、弁護活動に生かしています。このページで取り上げた問題について、次のような文献を参照しています。
留置の必要性について
昇任試験問題研究会編著『全訂版体系整理警察実務用語辞典 第8回全訂版』(日世社、2006年9月)291頁。
勾留の理由と必要性について
杉山徳明ほか編著『令状請求ハンドブック〔第2版〕』(立花書房、2021年9月)99頁。
検察官の決裁制度について
加藤俊司「検察庁法における『指揮監督』」佐伯仁志ほか編『山口厚先生古稀祝賀論文集』(有斐閣、2023年11月)。
起訴猶予の判断について
城祐一郎「誌上講義(第38回)起訴猶予の弾力的運用 その功罪も含めて」『捜査研究』2022年11月号59頁。
刊行時期の古い文献については、現行法令との違いにも注意して参照します。文献の記述をそのまま当てはめるのではなく、その事件の事実と資料を踏まえて、自分の責任で判断することを大切にしています。
接見のご依頼・ご相談について
現在、逮捕・勾留中の事件は福岡県内に限って対応しています。ご相談・ご依頼の対象と費用については、次のページをご確認ください。
このページは、主に成人の一般的な刑事事件について、事案に応じて検討する弁護活動をご説明したものです。すべての事件で同じ活動を行うものではなく、釈放や不起訴などの結果を保証するものでもありません。接見の可否と対応可能な日程は、お問い合わせ内容を確認してご案内します。
警察実務を知る。依頼者の立場で考える。
いま誰が、何を根拠に、どのような判断をしようとしているのか。その過程を理解し、ご本人とご家族のために必要な主張と資料を届ける。身柄拘束が続く時間の重さを忘れず、一つひとつの判断の段階に向き合います。
薬院法律事務所
弁護士 鐘ケ江 啓司(福岡県弁護士会)


