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薬院法律事務所

「成年後見制度を取り巻く課題と実務」自由と正義2017年12月号

2018年07月20日読書メモ

自由と正義の2017年12月号を読んでいます。特集は「成年後見制度を取り巻く課題と実務」。色々と考えさせられます。以下長文です。

成年後見人は,認知症などになった本人に代わって,包括的な代理権を有します。この代理権の行使にあたっては,「その意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない(民法858条)」とされています。

これは、後見人が一般的には本人の意思を尊重はしつつも、本人保護の観点から本人の意思に沿わない決定もする、という形で運用されてきました。

これに対して、2014年に日本が批准した国連障害者権利条約では、障害のある人の行為能力を制限し第三者が代わって意思決定を行う代理代行決定制度を廃止し、障害のある人の意思決定を支援する意思決定支援制度への概念転換が求められています。同記事によると、2017年10月時点で締結国全部の制度がこれに違反しているそうです。

そこで、今後の対応として、記事で紹介されている英国意思決定能力法(MCA)が紹介されています。そこではこのようなスキームがとられているそうです。

1 意思決定能力があることを推定する
2 本人による意思決定のために実行可能なあらゆる支援をする
3 賢明でない判断≠意思決定能力の欠如。
医師や福祉関係者による厳密なテストを行う
あらゆる実行可能な支援を尽くしても意思決定が行えない場合に代行決定に移行する。
4 本人の価値観・選好から導かれる最善の利益に基づく代行決定を行う
5 より制限的でない手段を実施

また、厚生労働省の障害者福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドラインも参考として挙げられています。

記事の結論は、意思決定支援方式に移行すべきだ、というものです。但し、意思決定支援は家族、裁判所、その他の関係者の思惑や「(客観的)最善の利益」に基づく反対に遭い、何か問題が発生した場合の責任を問われかねないという危惧がある。適切に意思決定支援を行った関係者の結果責任を問われないようにすることや、意思決定支援の仕組み構築が重要ではないか、ということです。

ただ、私が着目したのは、英国でも実務上は意思決定支援はほとんど行われずに、容易に代理代行決定に移行している、という記述です。これは、意思決定支援という建前が実情に合っていないのでは?という危惧があります。一見すると人権を重視しているようでもですね。

本人の意思の尊重と、本人の意思決定を支援するというのは、大きく違います。これは成年後見人の活動方針に関わってくることです。一見すると、意思決定支援、良いことではないかとなりそうですが、そうともいえません。

例えば、認知症になった高齢者がいたとして、「とても良い人」の勧めるままに様々な商品を購入して、生活が出来なくなっているとします。

現在の仕組みの場合、弁護士後見人であれば、意思能力がなかったのではないかということで返品を求めたり、以後については契約しないということで対応すると思われます。

しかし、本人が自分の施設費を出せなくなってもその人の歓心を買いたいということでお金を出したいという場合どうすべきでしょうか、これがさらに第三者でなく親族だとさらに問題が深刻になります。元気なときと、認知症になったときで行動が大きく変わってしまう人がいるのは周知の事実です。そういった状況で「本人の意思決定」を支援したからといって、それで良いのか、本人の自己責任で切り捨てて良いのかという思いがあります。判断能力の低下というのはそんな簡単に「支援」によって補えるものではないです。

なお、意思決定支援が素晴らしいのだというのであれば、未成年者についても親が法定代理権を有して判断権を奪っていることも疑問になりますね。