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薬院法律事務所

企業法務

「早春鼎談 今後の労働時間のあり方 〜労働時間をめぐる労使の課題〜木下潮音(弁護士)/小川英郎(弁護士)/山本圭子(司会・法政大学講師)」労働判例2018年2月1日号


2018年07月20日読書メモ

労働判例2018年2月1日号の特集「今後の労働時間のあり方」。興味深い記事でした。

使用者側の木下先生と、労働者側の小川先生、法政大学講師の山本先生が対談しています。

労働時間は、それが労働時間と認められるかどうかによって、0か100かという結論になります。事業場内に集まって皆で作業をするという古典的な勤務形態が変わってきたのに、法律はほとんど変更がないことから色々と難しい問題が出てきています。

使用者側弁護士は、事業場外か事業場内かということに拘る意見を多くみます。これは実態が把握できないという意味では理解できるところもあるのですが、クラウドワークが広がっていくと、場所的な要素をどれだけ重視するかはきめ細かに判断する必要が出てくると思います。

記事でも、タブレットを持たされた労働者が、時間外や土日も顧客の問い合わせに頻繁に応じなければならない時に、対応時間だけを労働時間として良いのかという議論がされています。これは、警備員と同じで頻度次第と考えられるようです。

なお、類型別労働関係訴訟の実務では持ち帰り残業を労働時間と認めるのは例外的で、労働者側が業務に専念した時間を立証すべきとしています。

また、労使協定を結ぶ際の過半数代表者の選任について、小川弁護士が、過半数代表者の選任手続が適正に行われたことについて使用者が立証責任を負うことを前提とする裁判例を紹介しつつ、労働者の民主的な選出手続に使用者がどこまで介入していっていいのか、ということも述べられているのが印象的でした。先日私も記事で指摘した話です。

他にも、事業場外みなし、裁量労働制、固定残業代の問題なども取り上げられていました。読み応えのある記事でした。