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薬院法律事務所

刑事弁護

「留置の必要性がない」として、逮捕後すぐに釈放されることがあります


2020年03月12日刑事弁護

逮捕後、検察官送致前に「留置の必要性がない」ということで釈放されることがあります。弁護士向けの本では書いていないのですが、これが実現すれば一番早く釈放されるのですよね。

あまり知られていないので、そもそも警察官と交渉しない弁護人もいるのですが、現行犯逮捕の事例ではこれで釈放されることもあるので、積極的に狙っていくべきです。

 

刑事訴訟法

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_2-Ch_1-At_203

 

昇任試験問題研究会編著『全訂版体系整理警察実務用語辞典 第8回全訂版』(日世社,2006年9月)291頁

【被疑者留置の要否を判断する要素
犯罪捜査規範一三○条三項は「被疑者の留置の要否を判断するに当たっては、その事案の軽重及び態様並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無並びに被疑者の年齢、境遇、健康その他諸般の状況を考慮しなければならない」と規定している。
(1)通常逮捕の場合は、誤認逮捕ではないか、逮捕状の有効期間内か、逮捕手続は、適正に履践しているか、緊急逮捕の場合は、逮捕要件を充足しているか、現行犯や準現行犯逮捕の場合は、その要件に当てはまっているか、時間を経過し、緊急逮捕すべきものでないか等である。
(2)逃亡のおそれの有無については、住居、家族関係、職業関係、年齢、社会的地位、身柄引請人の有無等の身上関係、また、犯罪の軽重、前科前歴、執行猶予、余罪等の犯罪関係、被疑者の態度等である。
(3)証拠隠滅のおそれの有無は、証拠が十分確保されていない。目撃者や参考人等の取調べが終わっていない又は未逮捕の共犯者があり、通謀や証拠隠滅のおそれがある等が一応考えられる。側その他諸般の事情は、高齢者(おおむね七十歳以上)か、年少者か、健康状態、被害者の感情、特に示談成立、被害回復、処罰を望まない等である。】

https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002

 

最高裁平成8年3月8日民集50巻3号408頁

判示事項
司法警察員による被疑者の留置についての国家賠償法一条一項所定の違法性の判断基準

裁判要旨
司法警察員による被疑者の留置は、司法警察員が、留置時において、捜査により収集した証拠資料を総合勘案して刑訴法二〇三条一項所定の留置の必要性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて留置したと認め得るような事情がある場合に限り、国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受ける。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55870

 

【参考文献】

大野重國「18 留置の必要性 最高裁 (2小)平成8年3月8日判決・判例時報 1565号92 頁ー」

麻生光編『刑事新判例解説(5)刑事訴訟法』(信山社,1998年6月)165~172頁

【本判決は,直接的には,留置の必要性についての国賠法上の違法性判断基準について判示したものであるが,前記のとおり,間接的ながら,刑訴法上の留置の必要性についての最高裁の考え方が窺えるものである。この留置の必要性の問題は,国賠訴訟においては論じられているものの,当該事案が道路交通法違反など比較的軽微なものであることから刑事事件として公判請求されることが少なく,刑事裁判において論じられることは比較的少ない。そのため,実務上参考となる点があると思われるので紹介した次第である。】

 

【解決事例】飲酒運転で逮捕、すぐに釈放してもらえないかという相談(酒気帯び、刑事弁護)

ご相談後の流れ(身柄拘束事件)