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薬院法律事務所

刑事弁護

「逮捕の可能性はどの位あるんでしょうか」という質問について


2021年06月25日刑事弁護

私は弁護士ドットコムで良く法律相談の回答をしているのですが、良くある質問で「逮捕の可能性はどのくらいあるんでしょうか」というものがあります。

これについては、「わからない」というのが一般的な回答です。

正確にいえば、「詳しく事案を聞けば、知識と経験のある弁護士であればある程度可能性の高低を推測することは可能。だが、究極的にはわからない。」というものです。もっとも、あまり考えず「わかりません」と回答する弁護士も多いと思います。

何故「わからない」という回答になるかといいますと、そもそも逮捕状が発付される要件が固定的な基準ではなく令状裁判官の裁量による部分があることが大きいです。

通常逮捕については「逮捕の理由」、すなわち刑事訴訟法199条1項にいわゆる被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由に加えて、「逮捕の必要性」も要件とされています。「逮捕の必要」とは,被疑者につき逃亡するおそれ又は罪証を隠滅するおそれのいずれかの事由があり,かつ逮捕を不要とする特段の事情が存在しないことをいうと解されています。これらは裁判官が、個別具体的に、どういう犯罪か、どういう証拠を警察が収集しているかといったことを確認した上で判断します。そのため、弁護士としてはそこを推測した上で逮捕状請求が認められるか検討します。

 

ただし、刑事訴訟規則143条の3は次のとおり定めており、裁判官が逮捕の必要性がないとして逮捕状請求を却下するのは例外的であることに注意が必要です。

※第143条の3 (明らかに逮捕の必要がない場合)
逮捕状の請求を受けた裁判官は,逮捕の理由があると認める場合においても,被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし,被疑者が逃亡する虞がなく,かつ,罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは,逮捕状の請求を却下しなければならない。

逮捕状が発付されるかどうかについては、相場感と呼べるものがあります。この程度では認められない可能性が高い、などと推測します。例えば、初犯の軽微な道路交通法違反(速度違反)で、1回出頭しなかっただけで逮捕状請求が認められることはないだろう、などと判断します。この判断にあたっては裁判官向けの本などを確認します。もっとも、すべてについて文献があるわけではないです。検察統計調査の身柄率も参考になります。

そして、そもそも捜査官が逮捕状発付を裁判所に請求しなければ逮捕状は発付されないのですから、捜査官が逮捕状を請求するかどうかも考えないといけません。

捜査官が逮捕状を請求するかどうかについては、まず捜査官が捜査の端緒を得る可能性があるか、事件として立件する可能性があるか、どういった証拠を捜査官が収集できるのか、といったことを検討します。

さらに、捜査官は、逮捕状を請求すれば認められる場面でもあえて任意捜査を先行させることもあります。早く逮捕し過ぎてしまうと、再逮捕が原則として認められないことから、結局証拠不十分で不起訴になり犯人に逃げられてしまうからです。これらも考慮しないといけません。

また、私の経験則ですが、警察が逮捕状を請求する場合は、その後の勾留請求でも勾留が認められるだけの証拠(犯罪の嫌疑や証拠隠滅、逃亡のおそれなど)を集めた上で請求することが多いです。

こういった請求するかしないかの判断については、捜査官向けの本を参考にします。

弁護士としては、捜査官の気持ちに立って、具体的な事案で逮捕状請求がされるかを検討し、裁判官の立場にたってその請求が認められるか検討します。ただ、どこまでいっても推測は推測なので、保証はできないのです。