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薬院法律事務所

一般民事

東京弁護士会親和全期会編著『こんなところでつまずかない!交通事故事件21のメソッド』


2018年07月20日読書メモ

21のメソッド交通事故編。

失敗談も含む体験談の寄せ集めですが、こういうものを読んでおくことでうっかりミスが予防できます。特に、保険関係はそもそも問題点に気づけず失敗するパターンが多いので、事故の状況や傷害の程度だけでなく、どの順番で、どの保険を利用するのが良いのか良く考える必要があります。

知らなかったネタや、そうそう、と思い出して気をつけるネタがありました。

車両保険には、車価協定額があり、経済的全損について固定額が払われることがある。そうすると、裁判で認められる交換価値より高いことがある(87頁)

労災保険を利用して、相手方が自賠責保険しかない場合、被害者請求を早めにしておかないと、労災からの求償で自賠責保険が使えなくなることがある(110頁)

歯牙障害、鎖骨変形障害だけで逸失利益が認められることは稀。慰謝料で斟酌(150頁)。しかし、鎖骨変形が肩関節の可動域制限を引き起こしたり、神経症状が出たりすることがある。歯牙障害も咀嚼、言語機能の障害といった後遺症が残ることがある。事前認定等で認められていないときは主治医らの協力を得た上で異議申し立てをすべき(160頁)

代車費用について、レンタカー特約があり、利用しても事故としてカウントされないことがある。その場合はそれを利用することで相手方が払う代車費用を少なくすることが出来て、和解に有益になる(178頁)

自転車の賠償保険については、自動車保険や火災保険のオプションとしてついていることがある。個人賠償責任保険もある(184頁)

読んで思ったこと。相手方に資力がない上、自賠責保険しかなく、被害者が健康保険の傷病手当金の支給を受けられる場合。とりあえず健康保険で治療と傷病手当金を受けつつ、健康保険組合から求償される前に、慰謝料部分と治療費の自己負担分を被害者請求するというのが良いのかな。休業損害も差額を請求できそうです。どうでしょう?

なお、余談ですが、健康保険を利用した場合の医療機関の後遺障害診断書作成拒否問題について、塩崎勤ほか編著『専門訴訟講座1 交通事故訴訟』359頁に記載がありました。「定型用紙の作成拒否は、被害者に健康保険の利用を断念させ、自由診療によらざるを得ない状況を強いるに等しいといえ、妥当でない。」と厳しく批判しています。参考までに。

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