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薬院法律事務所

『セイラー教授の行動経済学入門』

2018年07月20日弁護士業・雑感

先日ノーベル賞をとったセイラー教授による入門書。
実験データをもとに、合理的人間を想定する主流の経済学に対して異議を述べています。

内容としては、実験データの解説部分も多いですが、身近な例を用いて人間の判断性向について記述しています。これは、法律学の前提とする経験則とも合致するところが多いです。

例えば、こんな実験があります。
2人組で、10ドルを分ける実験です。ます、一人に10ドルを渡します。もらった一人は10ドルのうち、いくらかを相手に提示します。相手はそれを受け入れるか、拒否するかの二択。相手が拒否した場合は、双方ともにお金は受け取れない。相手が受け入れた場合は双方ともにその金額を得る、というものです。

経済学の想定する合理的な人間であれば、提示する側は1セントを提示して、相手方は1セントでも入るのであればと1セントを受領する、ということになります。

が、もちろん現実はこうなるわけがありませんし、実験データもこれを否定しています。それは何故なのか?ということです。そこで、「公平」という概念が登場します。人間は、多くのお金を得ようと思う一方で、公平でありたいという気持ちも持っているということです。

その他、経済学では裏切ることが良いように見えても、実際の経営をするにあたっては協調することが良い戦略である理由、などが書かれています。興味深い内容でした。

本書の内容を象徴する部分をひとつ引用します。

「おそらく新しい理論においては、「個々人はそれぞれ最善を尽くすが、一方で、人間としての親切心や協調性も併せ持ち、情報を蓄えたり処理したりする能力には限界がある」とされているはずだ(11頁)。