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薬院法律事務所

解決事例

【解決事例】コカイン使用での勾留決定を、準抗告で取消し


2020年06月29日解決事例

私は、勾留された事件については良く準抗告で争っています。今回、コカインの使用事件で勾留決定を覆し、被疑者を釈放させるという珍しい成果を挙げましたので記事にしました。

一般論として、違法薬物の使用案件については容易に勾留決定が認められます。また、準抗告で争っても覆えれないというのが常識です。

また、被疑者が薬物を所持していた場合、まず違法薬物の所持で逮捕勾留し、さらに違法薬物の使用で再逮捕するというのも一般的に行われています。

私は、所持で勾留決定がなされた時点から弁護人に就任し、勾留に対する準抗告、さらに最高裁判所への特別抗告を行っていたところ、使用で再逮捕され、勾留決定がなされました。

これに対する準抗告が画像のとおり認められました。

 

私の準抗告申立書の一部を抜粋します。こんなことを書きました。

【第3 勾留の必要性がないこと
1 同時処理が可能であったこと
被疑者の尿については,6月9日時点で採取されていた。コカインを含有する粉末についても同様である。
従って、その尿鑑定や薬物鑑定の結果は6月18日の勾留決定時には得られていたと思われる。
その上で,前回の勾留決定の際には既にコカインの入手元や常習性に関する捜査が行われている(福岡地方裁判所令和2年(む)第・・・・号は「本件事案の性質及び内容,証拠の収集状況,被疑者の供述状況によれば,コカインの入手経路や常習性等の重要な情状事実について,被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると認められる。」と述べており,これらの捜査が行われることを前提としている)。
しかも,平日なのに被疑者の取調べがなされていない日(6月23日)も存在するなど,主要な捜査は完了していた。
実際,前回の勾留決定の満期は6月27日であったのに,6月25日には処分保留釈放とされ,同日に逮捕されている。既に必要な捜査は完了しているのである。
コカインの所持と使用の同時処理を阻害する事由はなかった。

2 同時処理が可能な場合,勾留請求が却下されることがあること
一般論として,併合罪関係にある複数の被疑事実については,基本的に再勾留は可能であり,社会的事実としては一連一体の事実で,関係者が同一であり,必要とされる捜査の内容もその大半が共通するような場合であっても異ならないと解されている(覚せい剤の使用と残量所持等も含む)。
とはいえ,先行勾留における先行被疑事件の捜査の結果として本件被疑事実に関する証拠も相当程度収集されたなど,捜査経緯や証拠関係等を踏まえてて両被疑事実の同時処理の可能性を具体的に検討した上で,勾留の必要性がないことを理由に再度の勾留請求を却下することはありえるとされる(最高裁平成30年10月31日・判例時報2406号の匿名解説参照)。

3 勾留決定にあたっては,検察官からの具体的な説明が必要であること
この点,上記最高裁判例に対する前法務省刑事局参事官東京高等検察庁検事(当時)宮崎香織氏による解説では次のとおり述べられている(警察学論集72巻5号148頁「刑事判例研究〔502〕」)。
〔157頁〕
【捜査においては,一連のものとして密接に関連する複数の犯罪事実につき,嫌疑の明白なものについて先に被疑者を逮捕・勾留し,その勾留期間中の捜査によって他の犯罪事実の嫌疑が強まれば,引き続き被疑者を同事実につき逮捕・勾留するということがしばしば行われる。その場合,被疑者やその弁護人から,先行する逮捕・勾留が違法な別件逮捕・勾留であると主張されることや,後の逮捕・勾留が同一の犯罪事実についての実質的な逮捕・勾留であると主張されることが想定される。そのような主張は,公判に至ってから,勾留中に得られた証拠が違法収集証拠であるとしてなされることもあれば,勾留請求の段階における弁護人の申し入れあるいは勾留の裁判に対する準抗告という形でなされることもある。
本決定においては,被疑者の勾留請求を却下した準抗告決定につき,同決定が説示した捜査の同時処理義務については否定したが,結論としては同決定を破棄しなかったため,結局,被疑者の勾留は認められないこととなった。
近時,裁判所は,勾留の要件をより厳しく審査するという傾向が顕著であるところ,いったん勾留請求を却下されると,その後に準抗告又は特別抗告を行っても,その結果を覆すことは相当困難であると考えられる。勾留請求を行うのは検察官であるが,検察官送致から勾留請求,これに対する裁判,更に準抗告まで,短時間のうちに行われることから,捜査機関としては,勾留が身柄拘束の不当な蒸し返しであると主張される可能性があることを意識し,かかる主張が失当であることが送致記録上明らかになるよう,予め備えておくことが望ましいと思われる。
そのためには,まず,後の勾留に係る被疑事実について,先行する勾留に係る被疑事実よりも相当に幅広い捜査が必要であるということを,具体的な捜査事項を踏まえて説明できることが必要であると考えられる。また,一罪一勾留の原則を潜脱する意図でないことを明らかにするためには,後の勾留に係る被疑事実について嫌疑が強まっていった経過を示す必要があるとともに,当然のことではあるが,先行する勾留の期間において,先行する勾留に係る勾留事実につき可能な限りの捜査を尽くしたこと(先行する勾留に係る被疑事実の捜査を後の勾留期間に持ち越そうとするものではないこと) も示す必要があると考えられる。】
しかし,本件では,コカインの使用について,コカイン所持より相当に幅広い捜査が必要という状況でもない。

しかも,第3の1で述べたとおり,被疑者が警察に尿やコカインを含む粉末の付着したパケを提出したのは6月9日であり,勾留決定がなされたのは6月18日である。既に所持と使用の嫌疑はいずれも十分に存在していたはずである。勾留期間中に嫌疑が深まったという事例ではない。
例えば,職務質問でコカインの所持が発見され現行犯逮捕したような事例では,コカイン所持の勾留期間にコカインの鑑定や尿の鑑定が行われ,コカインの施用についての嫌疑が深まり再逮捕・再勾留するということはありえると思われる。しかし,本件は被疑者が自ら110番した事例であり,そういった事例でもない。
本件は,被疑事実を分離して逮捕・勾留することで,勾留延長と同様の効果を得ようとしたものと疑わざるを得ない。これを覆して勾留決定するのであれば,検察官から具体的な反論が必要である。
なお,本最高裁判例の評釈として片岸寿文・佐藤元治「日々の刑事弁護の実践例から理論を考える 第3回」(季刊刑事弁護99号98頁),言及する文献として齋藤司『刑事訴訟法の思考プロセス』(日本評論社,2019年10月)169頁が存在したので添付する。

4 結論
本件では,勾留の必要性が認められないことから,勾留請求は却下されるべきである。
なお,本件について,弁護人に確認または追加資料提出等の必要があれば,深夜でもいつでも連絡頂きたい。】

※参考

愛知県弁護士会刑事弁護委員会編『勾留準抗告に取り組む99事例からみる傾向と対策』(現代人文社,2017年12月)124頁

【覚せい剤取締法違反被疑事件で勾留を認めなかった事件は1件もなかった。決定文上、覚せい剤の入手先に関する供述が得られていないことや常習性に言及して罪証隠滅及び逃亡を疑うに足りる相当な理由を認めるものが多い。
これに対し、唯一薬物事犯で勾留を認めなかった事例(30※大麻取締法違反)では、入手先や常習性につき罪証隠滅の可能性があることに言及しつつも、被疑者がこれらについて具体的な供述をし、入手先が特定されていることから、罪証隠滅のおそれが高いとはいえないとしている。
このことから、薬物事犯では、薬物の入手先・常習性に関する被疑者の供述内容が特に重視されているかのように見える。
しかし、そもそも薬物の入手先など被疑者本人の罪体・量刑に特に関わりがないと思われる(裁判所は決定書で重要な情状事実と摘示することもあるが、論理的な根拠を見出しがたい)。 また、常習性について自白があったとしても勾留が認められることもある。
このことに鑑みれば、実際には、薬物事犯の場合、ほぼ間違いなく起訴され、懲役刑(執行猶予含む)を科されること、薬物事犯の被疑者は多くの場合生活状況が不良であることを考慮し、勾留を認めるべきという先入観をもって準抗告の成否が判断されていると考えざるを得ない。】