アパートの敷地内に置いていた、自転車のサドルが取り外されて近くに捨てられたという相談(犯罪被害者)
2024年11月29日窃盗(犯罪被害者)
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都文京区本郷で一人暮らしをしている20代の男子大学生です。アパートの駐輪場に、自転車をおいて通学しているのですが、最近、サドルが取り外されて近くの場所に捨てられているということが2回ありました。凄く気持ち悪いので警察に相談したのですが、「窃盗罪」でもなく、「器物損壊罪」でもないので警察では対応できないと言われました。大家さんに相談して防犯カメラをつけるようにいわれたので管理会社を通じて連絡をしたのですが、大家さんは対応してくれません。引っ越したいくらいですが、そこまでお金がないので困っています。なんとかならないでしょうか。
A、お見舞申し上げます。サドルだけを盗む人や、サドルを外して捨てる人はいます。本人は「イタズラ」のつもりなのかもしれませんが、正体不明の相手から「悪意」が向けられているということはたいへん不安なものです。状況からすれば確かに窃盗罪は成立しませんが、器物損壊罪は成立する可能性はあります。犯罪被害に詳しい弁護士に相談すべきでしょう。
【解説】
以前私自身が被害を受けた事例を元に作成しました。私自身の時は、管理会社が防犯カメラをつけたことで解決したのですが、状況によっては頼ることができないということもあると思います。警察官の対応もまちまちで、「いたずら」ということで相手にしてくれないということもあると思います。しかし、性犯罪予防にあたっては「前兆事案」を取り締まることが大事なように、こういった「悪意」に対しては早期の段階で対応することが大事だと思います。「隠した」という場合には器物損壊罪が成立することが考えられますし、あるいは、「カゴの中に入れる」といった案件であればストーカーや迷惑行為防止条例違反での立件も考えられます。あるいは、管理会社に対して警察から「行政指導」として連絡をしてもらうといったことも考えられるでしょう。民間防犯カメラの整備は警察としても推進しているところですので、専門の弁護士の助力を得てきちんと対応すべきだと思います。
刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045/20250601_504AC0000000067#Mp-Pa_2-Ch_40
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(親告罪)
第二百六十四条 第二百五十九条、第二百六十一条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
【参考記事】
「え?サドルが無い…」それだけ盗んでどうするの? 近年増加している「自転車盗難」…元警察官に聞いた防犯対策
https://maidonanews.jp/article/15286451
【参考文献】
名取俊也「刑法261条」大塚仁ほか編『大コンメンタール刑法 第三版 第13巻〔第246条~第264条〕』(青林書院,2018年7月)799-821頁
809頁
【(b) 物が備え付けられるなどした場所から移動させることも,その物の効用を損なうと評価される場合がある(他人の挿苗を引き抜き投棄した行為につき大判昭3• 5 • 8新聞2884号15頁,他人の所有物の置場所を換えたり,作物をひそかに引き抜いて放置しておくいわゆる「天狗降ろし」という行為につき大判昭7• 6 • 15集11巻848頁,労働組合員が会社の2階庇に掲げてあった第2組合の木製看板を取り外し, これを同所から140メートル離れた他家の板塀内に投げ捨てた行為及び同会社の事務所土問に置いてある第2組合員家族より同組合員あての輸送小荷物に付けてあった荷札をはぎ取り,これを持ち去った行為につき最判昭32• 4 • 4集11巻4号1327頁)。】