ゴミ捨て場に置いてある古い雑誌を持ち去って、窃盗罪といわれたという相談(窃盗、刑事弁護)
2024年12月15日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都板橋区板橋に住んでいる者です。先日、朝の散歩の際に、ごみ捨て場を通りかかったところ、マニアの間では高値がついている昭和の古い雑誌の束が、無造作に捨てられているのを見つけました。誰かがなくなってコレクションが捨てられたのだろうかと思い、近くに捨てた人がいないか見渡しましたが、誰もいないようでした。家に帰ってインターネットで検索すると、板橋区では資源物の持ち去りには警告があり、繰り返した場合には罰則もあるということでしたが、「資源物」として処理されてしまうのが忍びなく、「1回だけなら警告書だけで済むだろう」と思い切ることにして、もう一度自転車で行って、持ち帰りました。自宅に保管していたのですが、後日、警察が来て「窃盗罪」の疑いがあると言われています。警察の話では、夫婦げんかでコレクションがゴミ捨て場に捨てられていたようです。どうすれば良いでしょうか。
A、資源ゴミが「窃盗罪」の対象にあたる「財物」といえるかは一つの問題です。状況からすれば「窃盗」とはいえないと考えます。きちんと弁明すれば窃盗罪や占有離脱物横領罪として処罰されるような案件ではないと思います。弁護士の面談相談を受けられてください。
【解説】
コレクションは、価値を感じない人にとってはただの「ゴミ」に過ぎません。私は古い法律書を多数収集していますが、インターネットオークションを見ると、非常に貴重な本が、バルクセール品としてまとめ売りされていることがあります。以前、インターネットオークションで落札した古本のなかに、最高検察庁『(秘・無期限)再審無罪事件検討結果報告-免田・財田川・松山各事件-』(最高検察庁,1986年)が混じっていたという経験もあります。最近では、ブックオフにまとめて引き取ってもらったり、メルカリなどのフリマアプリで販売されることも多いと思いますが、それでも、貴重な本が無造作に捨てられていることはあります。こういった場合は、持ち去り行為が「窃盗」や「占有離脱物横領罪」にあたるかが問題になります。窃盗罪の擬律判断に詳しい弁護士に相談すべきでしょう。
なお、こういった場合の対応ですが、警察に「貴重品がごみ捨て場にあるとして届ける」という方法が考えられます。
警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/ishitsubutsu/otoshimono/chart/choice_pick8.html
板橋区 資源物持ち去り対策について
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/tetsuduki/gomi/shigen/1001864.html
区では新たに、青色防犯パトロールカーを使用した巡回パトロールを日曜日及び年末年始を除く毎日実施するとともに、関係機関との合同パトロールを継続して実施しています。資源物の持ち去りを発見した際には、収集又は運搬する行為を行わないよう警告書を交付します。
警告を受けてもなお、資源物の持ち去り行為を繰り返す者には、命令書の交付を行い、それでも続ける者に対しては、氏名・住所等の公表及び警察との連携による告発を行い、20万円以下の罰金刑に処することとします(更なる常習者については、50万円以下の罰金刑に処することとします)。
【参考文献】
木村昇一「検察官から見た警察捜査のポイント 窃盗事件を中心として(第13講)ごみの持ち去り行為に関する捜査上の諸問題」警察公論2021年3月号10-21頁
15頁
【当該資源ごみが,例えば,道路上に設置してある蓋付きのダストボックス内に排出・保管されており, しかも, 同所に「町内会管理の資源ごみにつき,持ち去り禁止」などと表示してある場合には,町内会(町内会役員)の支配意思や支配事実が明確であり,その占有下にある財物と認定することが可能であるとして,当該資源ごみの持ち去り行為について窃盗罪の成立を認めることができる場合があると思われます(城祐一郎「盗犯捜査全書一理論と実務の詳解一」414頁参照)。】
https://cir.nii.ac.jp/crid/1521980705948388480
※2025/1/8 chatGPT o1 proで検証してもらいました。
以下では,ご提示いただいた**「ゴミ捨て場に置いてある古い雑誌を持ち去ったところ,窃盗罪といわれた」という架空の相談事例**の内容や,引用されている法令・文献等が「事実として正しいかどうか」という観点から検討します。結論としては,事例自体は「架空の設定」ですが,ゴミ捨て場の資源物を持ち去る行為が窃盗罪または占有離脱物横領罪にあたり得るという法的解説や,自治体による持ち去り禁止措置の存在などは,日本の刑法や実務上の通説に即しており,正しい内容といえます。
1. 架空の相談内容(事例設定)について
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
今回のQ&A形式の相談は,「実在の人物や具体的なトラブル」を示すものではなく,典型的に起こりうるケースをモデルにしたフィクションとして提示されています。
したがって,「この事件が実際にあったかどうか」という点を問題にする必要はなく,あくまで事例を通じて法的な考え方を示していると理解すべきです。
2. ゴミ捨て場からの持ち去り行為と窃盗罪・占有離脱物横領罪
資源物の持ち去り禁止と刑事法上の評価
- **ゴミ捨て場に出された資源物(紙・雑誌・空き缶等)**については,多くの自治体が「持ち去り禁止」や罰則付きの条例を定めています。
- 刑法上は,そのゴミに対して誰がどういう「占有」をもっているかがポイントとなります。
- ごみの収集・管理を町内会や自治体が行っており,その管理権限(占有)を有していると認められる場合,勝手に持ち出す行為は窃盗罪に該当する可能性があります。
- あるいは,「捨てた」とは言っても,実際には持ち主が占有(またはそれに準ずる権利)を放棄していなかったと評価される場合もあり(本事例では夫婦喧嘩で勝手に捨てられた),同様に窃盗罪が成立しうる。
- 仮に所有者が明示的に「廃棄(占有放棄)した」といえる場合でも,拾った行為が他の法令(自治体の禁止条例など)に違反することはありえますし,状況次第では占有離脱物横領罪(刑法254条)の問題になることもあります。
本文中で指摘されているように,
「窃盗罪にあたる『財物』と評価されるかどうか」
「捨てた人が本当に所有権を放棄していたのか(または管理権者が占有しているのか)」
「地域の持ち去り禁止条例等との関係」
などが検討ポイントとなります。これは刑法や自治体条例の実務上,正しい説明です。
3. 板橋区の「資源物持ち去り対策」と罰則
本文中で紹介されている「板橋区 資源物持ち去り対策」のページを見ると,資源物の持ち去りを発見した場合は警告し,さらに繰り返す場合には罰金刑の可能性もあるという制度が記載されています。これは実際に板橋区が公表しているルールであり,「初回は警告書→繰り返すと命令書→それでも従わなければ20万円以下の罰金刑(常習者は50万円以下の罰金刑)」という流れも事実です。
一方,刑法上の窃盗罪とは別に,地方自治体の条例による罰則が適用され得るのがポイントです。仮に自治体の管理物とみなされれば,刑法的には「他人の物を盗んだ」として窃盗罪が成立する可能性があると同時に,条例による行政罰が科されうることになります。本文の記載は,このような実務上の二重の問題を適切に示しています。
4. 「捨てられたもの」でも窃盗や横領になるケース
本文では,夫婦喧嘩で勝手にコレクションが捨てられたという事情が明らかになっています。実際の判例や捜査実務でも,
- 形の上ではゴミ置き場に出されていたが,本人(所有者)は全く捨てる意思がなかった
- 自治体や町内会が管理し,回収に備えていた「資源物」という扱い
などの場合に「窃盗罪」の成否が問題となることがあります。また,「誰かが明らかに所有権や占有を放棄した」と認定できるなら,占有離脱物横領罪が成立し得る可能性もあります。こういった検討は日本の刑法実務でしばしば争点になるため,「窃盗罪か占有離脱物横領罪になるかの分岐点」を挙げた解説は正確です。
5. 総合評価:記事内容の真偽
- 「事例そのもの」は架空:実在の事件ではなく,典型的に想定されるゴミ持ち去りのトラブルをモデルにしたもの。
- ゴミ捨て場の資源物を「窃盗」または「占有離脱物横領」として捜査・起訴される可能性があるという説明は日本の刑法・自治体条例に則した正しい解説。
- 板橋区の「資源物持ち去り対策」ページの紹介や,持ち去り行為に対する警告→罰則の流れも実際に定められている制度であり,誤りではない。
- 引用文献(「警察公論」やその他の文献)も,ゴミの持ち去りに関する捜査上の諸問題を扱った実在の論稿である。
したがって,本記事の法的説明や自治体の制度紹介はおおむね真実に即しており,実際の法律実務と矛盾するような内容は見当たりません。冒頭に「架空の事例」とある点を踏まえて理解すれば,内容的には十分参考になる正しい解説といえます。
まとめ
- このQ&A・解説は,「捨ててある雑誌を持ち帰ったところ,窃盗罪といわれた」という架空の事例を題材に,ゴミ捨て場の資源物をめぐる刑事法上の争点を説明したものです。
- 窃盗罪や占有離脱物横領罪になるかどうかは,「実際に誰がその物を管理・占有していたか」「本当の所有者に捨てる意思があったのか」「自治体や町内会が管理していた資源ごみではないのか」などによって結論が変わります。
- 板橋区の資源物持ち去り禁止条例や,ほかの自治体の同様の制度についても,本文の記載通り罰則や警告が規定されている場合があります。
以上のとおり,当該記事は法的・実務的に正確な内容を含み,「真偽」を問うのであれば真実に即しており,誤りや虚偽は特に認められません。