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薬院法律事務所

犯罪被害者

サイコパスと反社会性パーソナリティー障害の違い(犯罪被害者)


2025年02月02日犯罪被害者

chatGPT o1 proに作成してもらいました。

サイコパス(psychopathy)と反社会性パーソナリティ障害(Antisocial Personality Disorder: ASPD)の違いは、主に以下のように整理されることが多いです。両者はしばしば類似点が多いため混同されがちですが、厳密には理論的な起源や診断基準のあり方が異なっています。


1. 診断基準・概念の位置づけ

  1. 反社会性パーソナリティ障害(ASPD)
    • アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)に明記されている正式なパーソナリティ障害の一種です。
    • 行動面の特徴を重視し、他者の権利を侵害する行為や社会的ルールを無視する行動が、15歳以前から持続していることなどが診断の主な要件となります(素行症との連続性)。
    • たとえば「頻繁な嘘、衝動性、他人への攻撃性、責任感の欠如、後悔や罪悪感が少ない」等のパターンが続いているかどうかをチェックし、18歳以上で診断されます。
  2. サイコパス(Psychopathy)
    • DSMなどの一般的な精神疾患分類には「サイコパス」という診断名は直接含まれていません。
    • 主にロバート・ヘア(Robert Hare)のPCL-R(Psychopathy Checklist-Revised)など、臨床・研究用のチェックリストによって判定される概念です。
    • クレックリー(Hervey Cleckley)が著書『The Mask of Sanity』(邦題『精神病質者の仮面』など)で示した臨床的特徴がベースになっており、「表面的な魅力」「良心の欠如」「共感の欠如」「浅薄な感情」「慢性的な嘘、欺瞞」「寄生的・無責任な生活様式」などの対人面・情動面での特性が重視されます。

2. 病理の焦点と特徴の違い

2-1. ASPD(反社会性パーソナリティ障害)

  • 行動面の問題が大きな診断の柱
    • 反社会的な行為(窃盗、暴力、詐欺など)や規範違反を反復し続ける。
    • 衝動的・攻撃的で他者の権利を踏みにじるなど、社会不適応な行動が顕著。
  • 性格的特徴としては責任感の欠如や良心の欠如は重視されるが、DSMの診断上は「具体的な反社会的行動の反復」がより大きな比重を占める。

2-2. サイコパス(Psychopathy)

  • 情動面・対人面の特徴が核
    • 強い「共感性の欠如」「良心の欠如」「冷酷さ」といった感情的・対人関係の歪みが強調される。
    • 他者の感情を読む能力(認知的共感)はある程度高いが、それを“操作(manipulation)”のために利用する場合が多い。
    • 必ずしも暴力的とは限らず、詐欺や巧妙な搾取など社会的制裁を逃れる形で行動するケースも多い。
  • 狭義のサイコパスは「ASPDの中でも特に対人操作・感情の鈍麻が顕著なサブタイプ」とみなされることもある。

3. 両者の関係

  1. 包含関係:
    • 一般的には「サイコパスは反社会性パーソナリティ障害(ASPD)の中に含まれる、あるいは重なる部分が多い」とされがちです。
    • ただし、ASPDと診断される人すべてがサイコパスというわけではありません。たとえばASPDの基準を満たす人のなかには、「情緒面の欠如」というよりは生育環境や若年期の非行、経済的困窮などによって犯罪行動を繰り返している人も含まれます。
  2. 診断率・有病率:
    • 反社会性パーソナリティ障害はDSM上の公式な診断基準があるため、推定される有病率は比較的高めに出ます(人口の数%程度とも言われる)。
    • サイコパスとして特にPCL-Rで高得点を示す人は、受刑者など特定集団では一定数見られますが、一般人口ではさらに少ないとされます。
  3. 研究の場面:
    • サイコパスは、刑務所などでの受刑者研究や脳機能の研究で特に注目されてきた経緯があります。
    • 近年は一般社会にも「サイコパス傾向」を持った“成功したサイコパス(successful psychopath)”がいるのではないか、と議論されるようになり、ASPDの基準だけでは把握しきれない部分としても注目されています。

4. 実務・臨床での扱い

  1. 臨床・診断
    • 精神科医や臨床心理士が実際に診断する場合、「反社会性パーソナリティ障害」のDSM-5基準を満たすかどうかをまず確認します。
    • サイコパスかどうかを判定するのは、原則としてHareのPCL-Rなど特定のチェックリストを用いた評価が必要ですが、これは研究や法医学領域など特定の場面で行われることが多く、一般の臨床現場で常に用いられるわけではありません。
  2. 法曹実務
    • ASPDと診断される被告人が裁判で問題になることは多くありますが、「この人はサイコパスかどうか」までは詳細に評価されない場合もあります。
    • 一方、重大事件や連続殺人などの法医学的鑑定では、PCL-Rスコアを含めてサイコパス性が強調される事例もあります。

5. まとめ

  • サイコパス(psychopathy)
    • 古典的にはクレックリー、近年はヘアのPCL-Rなどで理論・研究が積み重ねられている概念。
    • 主に「冷淡・無慈悲」「罪悪感の欠如」「高度な対人操作」「浅薄な感情」など情動面・対人関係面の特異性が中核。
    • DSM-5などには「サイコパス」の独立した診断カテゴリはなく、公的診断というよりは研究的・臨床的に用いられる言葉。
  • 反社会性パーソナリティ障害(ASPD)
    • DSM-5などに明記されたパーソナリティ障害の一種。
    • **行動面の反社会性(規範違反や犯罪行為の反復)**が診断の中心要件。
    • 有病率は比較的高いとされるが、情緒・認知の歪みがどの程度かは個人差が大きい。
  • サイコパスを**「ASPDの中でも対人・情動面の特性が特に顕著な subgroup」**とみなす向きもあれば、ASPDとサイコパスを区別して扱う研究もあります。両者は重なる部分が多いものの、強調点が異なるため「必ずしもイコールではない」点がポイントです。

以上が、サイコパスと反社会性パーソナリティ障害の主な違いです。サイコパスは学術研究や法医学領域で重視される概念であり、ASPDは医療・臨床の診断実務での正式な枠組みです。両者を混同せず、それぞれの定義や評価手法を押さえることが重要だとされています。