load

薬院法律事務所

刑事弁護

デート相手に覚せい剤を盛られて、警察から疑われているという相談(刑事弁護、違法薬物)


2024年11月27日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

Q、私は、都内の会社に勤務している20代女性です。先日、同性の友人に誘われて、一緒に港区西麻布のクラブに行きました。クラブに行ったことは今まで一度もなくて緊張していたのですが、思っていたのと違ってみんな優しく楽しかったです。その後、何度か自分でも行くようになったのですが、知り合った男性に勧められたお酒を飲んだ後に気分が悪くなり、寝込んでしまいました。その日はなんとかタクシーで帰ったのですが、後日、その男性が覚醒剤取締法違反で逮捕されたということで、警察から私にも連絡がきて、尿検査を求められました。尿検査で陽性反応が出たといわれているのですが、私は自分で覚醒剤を飲んだりしません。処罰されないか不安です。

 

A、一般論として、尿検査で覚醒剤が検出された場合には、覚醒剤とわかって摂取したと「推認」されます。とはいえ、状況によっては「故意」が認められないということは当然あるものです。近時は、相手の飲み物に違法ドラッグを入れる男性もいるようであり、きちんと弁解することでむしろ「被害者」であることをわかってもらえることもあります。薬物事件に詳しい弁護士の面談相談を受けるべきでしょう。

 

【解説】

近時、クラブなどで女性が薬物入りと知らずに違法薬物を飲まされる事例が起きているようです。一般には、覚せい剤の場合は、尿検査で陽性であれば「自己の意思で覚せい剤を摂取した」とされるところですが、具体的な事情に照らして「特段の事情がある」といえることもあります。想定事例の場合は、男性が、仮に女性に覚せい剤を騙して飲ませたということになれば罪が重くなることから、女性に責任転嫁をしてくる可能性があります。「黙秘」したり、「知らないふり」をする可能性が一番高いと思いますが、どういう対応をしてくるかはわかりません。早急に違法薬物問題に詳しい弁護士の面談相談を受けて、「故意」がないことについての証拠を固めておくべきでしょう。

 

【参考記事】

 

デート相手の飲み物に密かに〇〇を混入!? 港区で蔓延(はびこ)る「スパイク行為」の恐怖

https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2024/08/11/124113/

 

令和04年度 第3回 麻布警察署協議会 議事概要
令和04年12月21日 午後03時00分 午後04時30分
麻布警察署 講堂

会議に先立ち地域課長の出席について委員から了承を得た。
[業務説明]
1 前回の会議で出された意見要望等の取組結果について
(1)「クラブなどで女性が薬物入りと知らずに飲まされると聞いている。薬物に関する注意喚起をしてほしい。」との要望について、各課が積極的に飲食店等に立入りを行い、経営者や従業員に注意喚起を行っている旨を説明した。

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/shokai/kyogikai/kyogikai.files/azabu.pdf

 

【参考文献】

 

大西直樹「覚醒剤の自己使用事案における故意の認定」警察学論集70巻11号(2017年11月号)155-174頁

169頁

【b 覚せい剤の味
覚せい剤は、白色無臭であるが、苦味があるとされている9) から、口にした飲み物に批せい剤が入っていた旨の供述がされた場合には、飲んだときに苦味を感じたか否かがその供述の信用性判断に影響し得る。もっとも、飲んだ飲料の種類や含まれていた覚せい剤の量等によって苦味に気付きにくいことも考えられ、決定的な要素とはいえないであろう。】

 

山崎祥吾「実例捜査セミナー 覚せい剤使用事件における典型的な弁解である「覚せい剤を盛られた」旨の供述を覆す捜査をした事例」捜査研究2018年9月号(814号)95-103頁

97頁

【覚せい剤使用事件においては,被疑者の尿から覚せい剤が検出されれば,前記第1に記載の推認が働くとの考えが捜査機関にあるため,証拠収集が不十分のまま捜査が終結することも多いように思われる。
しかし,裁判例上,被疑者の尿から覚せい剤が検出された事実が認められた上で,前記推認が妨げられる特段の事情もまた認められるとして,無罪とされた事案も散見されるところである。
東京高等裁判所平成28年12 月9日判決(高等裁判所刑事裁判速報集平成28年171 頁)では,覚せい剤使用事件において,第三者により覚せい剤が混入された飲食物をそれと知らずに摂取したとの合理的な疑いがあるとして,尿中から覚せい剤成分が検出された被告人が無罪とされた。
同判決中において,東京高等裁判所は, 「尿中から覚せい剤成分が検出されたことのみに基づいて,自らの意思で覚せい剤を摂取したものと認定するには,その者の生活状況等や前記推認を妨げる特段の事情に関する慎重な検討が必要である」旨判示しており,被疑者の尿から覚せい剤が検出されたとしても,慎重な検討を要することを念押ししている。】

https://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/sousakenkyu/201809/

尿検査で大麻の陽性反応が出たが、使用した記憶がないという相談(大麻、刑事弁護)