フリマアプリで買った商品が盗品だったけど、既に処分してしまっているという相談(刑事弁護)
2024年09月15日窃盗(万引き)
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市内に住む30代の女性です。先日、フリマアプリで服を購入しました。ところが、1年ほど経過して警察から連絡があり、盗品だったと知りました。盗品の場合は、被害者の方は2年間は代金額を支払って返還請求できるということで、被害者から返還して欲しいという要望があっていますが、どうすれば良いでしょうか。
A、既に処分している場合は、民法194条の回復請求権は発生しません。そのため、対応しなくてよいという結論になります。
【解説】
盗品や遺失物については、民法192条の即時取得が成立した場合でも、元の所有者は二年間は回復請求ができます。もつとも、相手方が既に処分している場合には回復請求権は発生しません。最高裁判例によれば、被害者は回復に代わる賠償請求もできないとされています。そのため、回答のとおり特に対応する必要はない、という結論になります。
民法
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_2-Ch_2-Se_2
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
(盗品又は遺失物の回復)
第百九十三条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
第百九十四条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
【参考文献】
我妻榮・有泉亨補訂『新訂物権法(民法講義Ⅱ)』(岩波書店,1983年5月)230頁
【なお、この請求権はその性質をどのように解するにせよ([217]参照)、物が現存していることを前提とする。物が滅失し、加工されまたは没収された場合には本条の適用はなく、不当利得もしくは不法行為による請求権の存否の問題が残るだけである(最判昭和26.11.27民集5巻13 号775 頁-他の物と共に加工された場合に不当利得返還請求もできないという)。】
林良平ほか編『注解判例民法物権編』(青林書院,1999年10月)129頁
【(3) 目的物の現存
本条の回復請求をするためには、請求時に相手方のもとに物が現存することを要する。このことは、民法194 条の代価弁償を条件とする回復請求権についても同様であり、物が滅失すれば回復請求権が消滅するのみならず、被害者は回復に代わる賠償を請求することもできない(最判昭26 • 11 ・27 民集5巻13 号775 頁)。】
【参考裁判例】
最判昭和26年11月27日
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55923
裁判要旨
一 民法第一九二条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し且つかく信ずるにつき過失のなかつたときのことをいい、その動産が統制品であるにかかわらず、割当証明書によらないで買い受けたという事実は、右の善意無過失を決するための要件とならない。
二 民法第一九四条により被害者が盗品を回復することを得る場合において、その回復請求前その物が滅失したときは、右の回復請求権は消滅するのみならず、被害者は回復に代る賠償をも請求することはできない。