万引き事件、現行犯逮捕や家宅捜索がなされたが、微罪処分で終わらないかという相談(万引き、刑事弁護)
2024年09月17日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市内に住む50代の独身女性です。先日スーパーマーケットで食品を万引きしてしまいました。前科はありません。何度か繰り返していたせいか、突然自宅に警察が来て家宅捜索をされ、警察署に連れて行かれました。警察署で、私が何度か万引きをしていることを認めています。インターネットで調べていると、被害者が赦している場合には微罪処分という形で前科がつかないようにできるとみました。微罪処分で終わらせることは可能でしょうか。
A、地域の運用によりますが、微罪処分の他の要件が満たされていても、微罪処分はできない可能性があります。ただ、それでも不起訴処分は狙えるでしょう。なお、微罪処分の要件を知らない弁護人に依頼することはお勧めしません。
【解説】
万引き事件では、特に初犯の場合は、「微罪処分」として前科がつかない警察限りの処分で終わることがしばしばあります。もっとも、この微罪処分には色々な要件があり、そのうちの一つとして「逮捕や捜索」がなされていない事案であることが必要とされている場合もあります。そのため、逮捕、捜索がされている事案では、微罪処分を狙うこと自体ができない、という場合もあります。実務的には、不起訴を狙う場合と弁護活動の内容は重複するので問題となることは少ないと思われますが、要件を正確に把握しておくことは重要でしょう。
犯罪捜査規範
https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002
(微罪処分ができる場合)
第198条捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
(微罪処分の報告)
第199条前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を1月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第19号)により検察官に報告しなければならない。
(微罪処分の際の処置)
第200条第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
(1)被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
(2)親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
(3)被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。
【参考文献】
古田佑紀『刑訴法からみた犯罪捜査規範』(真正書籍,1989年11月)436頁
【細目(微罪処分のできる事件)
成人の被疑事件の、うち犯罪事実が軽微であって、次に掲げるものの一に該当するものは微罪処分をすることができる。ただし、被疑者を逮捕した事件、令状の発付を受けて押収、捜索、検証その他の強制捜査をした事件、告訴、告発、請求または自首にかかわる事件および検察官から特に送致すべきものと指示された事件については、微罪処分をしてはならない。】
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002080286
警察実務研究会編著『地域警察官のためのチャート式事件処理要領(第2版)』(立花書房,2014年6月)7-8頁
【イ 根拠と対象事件
微罪処分の根拠は,刑事訴訟法246条ただし書による,各地方検察庁検事正の指示「送致手続の特例の件」であり,この検事正指示で示された微罪処分相当事件は,各地方検察庁単位で異なるが,おおむね次のとおりである。
(略)
また,対象外事件としては
・被疑者を逮捕した事件
・許可状の発付を得て,押収,捜索,検証その他強制捜査をした事件
・告訴,告発,請求又は自首に係る事件
・少年事件
・駐留軍の構成員,軍属又は家族の犯罪
(各地検,検事正の別途指示・送致手続の特例に関する件による)
・検察官から特に送致すべきものと指示された事件】
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I025511372
※2025/1/7 chatGPT o1 proで検証してもらいました。
以下の文章は、
「万引き(窃盗)事件で、警察の現行犯逮捕や家宅捜索がなされた場合、微罪処分は困難になる。微罪処分の要件を満たさず通常送致(検察送致)される可能性が高い。もっとも、不起訴処分(起訴猶予)を目指す余地はなおある。」
という趣旨を含んでいます。結論として、この内容は日本の刑事手続(微罪処分の運用)や実務に照らして、正しく真実性が高いといえます。以下、その理由を説明します。
1. 微罪処分とは何か
(1)法的根拠
- 微罪処分は、犯罪捜査規範198条以下(および各検察庁の検事正指示「送致手続の特例」)などを根拠に、警察官が検察庁に送致しないまま処理を終わらせる制度です。
- 原則として「犯罪事実が軽微であり、検察官送致(通常送致)に踏み切るほどの必要がない」と認められる場合に限られます。
(2)要件と対象外事件
- 多くの地方検察庁の検事正指示では、微罪処分の対象事件を「軽微かつ逮捕や強制捜査(家宅捜索など)が行われていない事案」などに限定しているのが通常です。
- 具体的には、
- 被疑者を逮捕した事件
- 令状による押収・捜索など強制捜査を実施した事件
- 告訴・告発・自首事件
は微罪処分の対象外と定めるのが一般的です。
2. 万引き事件と微罪処分の難易度
(1)万引き初犯・軽微な額なら微罪処分もあり得る
- 軽微な万引きの場合、**「被害額がごくわずか」「任意捜査で事足りた」「被害者と和解や弁済ができた」**といった事情があれば、微罪処分が行われるケースがあるのは事実です。
- ただし、「微罪処分」自体が警察の裁量的な処理であり、地方検察庁ごとの指示・運用によって取り扱いが異なる点に注意が必要です。
(2)現行犯逮捕+家宅捜索があった場合
- 本文が指摘するように、逮捕や家宅捜索など強制捜査が行われている事案は、多くの地域で微罪処分の対象外とされるのが通例です。
- たとえば「家宅捜索で大規模な証拠を押収している」「被疑者を現行犯逮捕している」など、警察がすでに一定の手間とリソースを費やし、違反を重大視している事案なら、微罪処分を認める根拠が薄く、通常送致(検察へ事件を送る)されるのが一般的です。
3. 不起訴の可能性は否定できない
(1)微罪処分は困難でも、起訴猶予を狙う余地
- 逮捕・捜索があった場合は微罪処分が難しくとも、**検察に送致後、示談や被害弁償、被疑者の反省・社会的影響などを考慮して起訴猶予処分(不起訴)**がなされる可能性は残ります。
- つまり、「微罪処分では終わらないが、検察段階で不起訴(起訴猶予)となる」パターンは十分にあり得ます。刑法的に見ても万引きが「軽微」か、被疑者が初犯・反省しているか等がポイントです。
(2)弁護活動との関連
- 本文が述べる「(微罪処分を)狙う場合と弁護活動の内容は重複」というのは正しい。つまり、示談・反省文提出・再犯防止策などは微罪処分の段階でも必要ですが、逮捕後は通常送致される可能性が高いため、起訴猶予や略式罰金を視野に入れた弁護活動が実際のところ中心になります。
4. 本文の真偽
- 「逮捕や家宅捜索がなされた事案では、微罪処分は困難」
- 正しい。各地方検察庁の指示や実務運用からみても、逮捕・家宅捜索済みの案件は通常送致せずに微罪処分で済ませることが難しい。
- 「それでも不起訴を狙う方法はある」
- 正しい。示談や反省の姿勢で、検察が起訴猶予にする可能性は残っている。
- 「微罪処分には要件があり、弁護士がその要件を理解せずに希望しても現実的でない」
- 正しい。微罪処分はかなり限定的で、逮捕・捜索事案は排除する運用が一般的。
総合的に見て、本文の説明は日本の刑事実務に合致し、真実性が高いです。
結論
- 本文は「逮捕や家宅捜索など強制捜査が行われた万引き事案で“微罪処分”に期待するのは難しいが、不起訴処分(起訴猶予)に至る可能性はある」という主張をしており、これは日本の刑事訴訟実務において正しい。