万引き事件、自転車窃盗事件で微罪処分を獲得するポイント(万引き、刑事弁護)
2024年08月02日刑事弁護
「真面目な人」が、ストレスから起こす犯罪の類型として「万引き事件」と「自転車窃盗事件」があります。これらが偶発的なものである場合、検察に送検されず終わる「微罪処分」という措置が執られることがあります。この処理がされた場合は「前科」がつかないことになるため、依頼者にメリットは大きいです(※なお、微罪処分歴があっても、再度の微罪処分が認められることがあります)。
ただ、微罪処分については対象事件につき厳しい要件があります。どういった場合に認められるについては、各地方検察庁検事正の指示によりますので、地域毎に異なりますが、概ね次のとおりだとされています。また、「成人」に限られますし、公務員については対象外とされています(刑事法令研究会編『3訂版 ヴィジュアル法学 事例で学ぶ刑事訴訟法』(東京法令出版,2015年12月)242-243頁)。
警察実務研究会編著『地域警察官のためのチャート式事件処理要領(第2版)』(立花書房,2014年6月)7-8頁
【まず,前提として
① 被害僅少であること。
② 犯情が軽微であること。
③ 盗品の返還等被害の回復が行われていること。
④ 被害者が処罰を希望しないこと。
⑤ 素行不良者でない者の偶発的犯行であること(都道府県によって,微罪歴があっても可能)。
⑥ 再犯のおそれがないことが明らかなこと。】
①については、概ね2万円以下ということが多いようです。
②については、一概には言えません。犯罪の原因・動機等を総合考慮するとされており、例えば「転売目的」といったことであれば認められにくくなるでしょう。
③と④については、被害者次第ということになりますが、「警察による厳重注意」までは希望しても、「処罰」までは望まないということもあります。
⑤と⑥については、前科があるとか、暴力団員などでないことになりますが、前科については微罪処分の欠格要件ではないので、他の要素との総合考慮の結果、「偶発的犯行で再犯のおそれがない」と判断されれば微罪処分は可能です。
刑事法令研究会編『3訂版 ヴィジュアル法学 事例で学ぶ刑事訴訟法』(東京法令出版,2015年12月)243頁
【その他の判断基準 公務員による犯罪を微罪処分の対象から除外する旨の規定はないが、公務員は全体の奉仕者として公共の利益のために職務を行いその清廉性が強く要求されており、いかに軽微な犯罪であっても、微罪処分にはなじまない】
愛知県警察本部編『改訂版 問答でわかる微罪処分手続のすべて』(東京法令出版,2001年3月)という書籍が要件について詳細な記載をしていますが、これは一般販売されていません。
弁護人になった場合は、詳細な聴き取りの上で、被害者に対する慰謝の措置を尽くすことに加えて、「再犯可能性がない」ということを、本人の反省文や謝罪文の作成を通じて示します。万引きや自転車盗の場合は、本人自身が気付いていない大きなストレスが「逸脱行動」として出ていることがありますので、「何故それをしてしまったのか」を十分に検討することが必要です。習慣化している場合には、その習慣を変えるための助言もします。私は、『人生修復大全』という本をお勧めすることが多いです。「第8章 習慣をつくり、悪習を断ち切るためには」が特に参考になります。「人生をやり直す」ために必要なことにつき、全般的なフォローがなされています。
https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=4053-1
※刑事訴訟法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131/20231215_505AC0000000066#Mp-Pa_2-Ch_2
第二百四十六条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
※犯罪捜査規範
https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002#Mp-Ch_11
(微罪処分ができる場合)
第198条
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。(微罪処分の報告)
第199条
前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を1月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第19号)により検察官に報告しなければならない。(微罪処分の際の処置)
第200条
第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
(1)被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
(2)親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
(3)被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。
(犯罪事件処理簿)
第201条
事件を送致し、又は送付したときは、長官が定める様式の犯罪事件処理簿により、その経過を明らかにしておかなければならない。
※2025/1/7 chatGPT o1 proに検証してもらいました。
以下の文章では、
「万引き・自転車盗のような『軽微な財産犯』でも、\n – 被害額が少なく、偶発的犯行・再犯可能性が低い等の場合\n – 被害回復や謝罪がなされ被害者が処罰を望まない等の場合\n警察で『微罪処分』となる可能性がある。微罪処分は検察官に事件を送致しないので、前科がつかない。ただし、逮捕・捜索など強制捜査がなされると微罪処分の要件を満たさず、通常送致されることが多い。各地の検事正指示によるが、前科や微罪歴があっても、要件をクリアすれば再度の微罪処分が認められる場合もある」
といった主張が含意されています。結論として、この内容は刑事訴訟法上の微罪処分制度およびその運用実態に照らして、正しく真実性が高いといえます。以下、その理由を解説します。
1. 微罪処分制度の概要
(1)法的根拠と趣旨
- 刑事訴訟法246条本文は「司法警察員は、犯罪を捜査したときは……事件を検察官に送致しなければならない」と定める一方、ただし書で「検察官が指定した事件については……送致しないことができる(いわゆる微罪処分)」としています。
- これを受け、犯罪捜査規範198条以下や各地方検察庁の「送致手続特例の件」(いわゆる検事正指示)によって、「犯罪事実が極めて軽微」「検察送致の必要がない」と認められる場合に、警察のみで処理を完結して検察に送致しない制度が運用されています。
(2)軽微事件の円滑処理が目的
- 微罪処分は、軽微な犯罪について捜査リソースを過剰に費やさず、被疑者を過度に刑事手続に巻き込まずに済ませるという実務上の合理性から設けられた措置です。
- 処理の際には「厳重注意」「被疑者に被害弁済や謝罪を促す」などが行われ、前科はつかないというメリットがあります。
2. 適用される典型例と要件
(1)万引き・自転車盗など
- 万引きや自転車盗のような少額・軽微の財産犯が微罪処分の代表例とされがちです。
- ただし、「防犯カメラや警備員により現行犯逮捕され、後日家宅捜索まで行われるような事案」は、“軽微”とはみなされないことも多いため注意が必要。
(2)各検事正指示の要件
- 概ね、
- 被害額が少額(たとえば2万円未満など)
- 犯情が軽微である(転売目的等でない)
- 被害回復がなされ、被害者が処罰を求めない
- 被疑者が前科や余罪がなく、再犯可能性が低い
- 逮捕・捜索などの強制捜査がなされていない
などの要件が、多くの検事正指示で列挙されています(地域によって細部は異なる)。
3. 逮捕・捜索がある場合は微罪処分が難しい
(1)逮捕・捜索があれば通常送致が原則
- 本文のとおり、強制捜査(逮捕や捜索)を行った事件は、多くの地方検察庁で“微罪処分対象外”とされているのが通常です。
- 警察限りで幕引きするほど軽微な事件ではないとみなされるため、検察へ送致して本格的に刑事処分を検討するのが原則となります。
(2)再度の微罪処分が認められるか
- 本文で「微罪処分歴があっても、再度の微罪処分が認められることがある」と記載されていますが、これは要件を満たせばあり得るということで、厳格な運用により認められないケースも多々あります。
- 一般に、同種前歴がある被疑者を“本当に偶発的な軽微犯行”と言えるかどうかは疑問があるため、容易ではないが絶対不可というわけでもないです。
4. 弁護活動による微罪処分狙いと実際の運用
- 示談・被害弁償:万引きや自転車盗であっても、被害回復し被害者が処罰を望まない場合、刑事処分の軽減や微罪処分の可能性が高まる。
- 再犯防止策:本人の病的・依存的要素があれば治療やカウンセリング、自助グループ参加などを通じて再発リスクを低減する弁護活動が効果的。
- ただし強制捜査や逮捕が行われている場合:上述のとおり微罪処分対象外となることが多いが、最終的には検察官の不起訴(起訴猶予)を狙う弁護活動に移行する、という展開になる。
5. 本文の真偽
- 「万引き・自転車盗は典型的に微罪処分の可能性がある事件で、前科がつかずに済むメリットがある」
- 正しい。実務でも軽微財産犯が主な適用対象。
- 「ただし、逮捕や家宅捜索など強制捜査が行われている事件だと要件を満たさず、通常は微罪処分にならない」
- 正しい。多くの検事正指示の運用で排除規定がある。
- 「『再度の微罪処分』もありうる」
- 可能性としては否定されていないが、実務上は非常に困難なケースが多い。しかし本文は「あり得る」と述べるにとどまり、誤りではない。
- 「弁護活動として被害弁償、再犯防止策を提示することが重要」
- 正しい。微罪処分に限らず起訴猶予を得るための定番アプローチ。
結論として、本文の説明は刑事訴訟法上の微罪処分の要件や日本の実務運用に基づいており、真実性が高いと言えます。
まとめ
- 本文は「万引き・自転車盗のような軽微な財産犯であれば、微罪処分が認められる場合がある。たとえ過去に微罪処分歴があっても、再度の微罪処分が絶対ダメとは限らない」という趣旨。
- これは正確で、各地方検察庁の指示や事件の事案次第で運用されるものの、逮捕・捜索があれば厳しいなどの要件を把握して弁護活動することの重要性に言及しており、実務と整合的です。