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薬院法律事務所

一般民事

不貞慰謝料に対する最高裁平成31年2月19日判決について


2019年02月20日家事事件

ネットでも話題になりました。

不貞行為の相手方の責任を制限する方向での重要な最高裁判例です。不貞による慰謝料は請求できるが、離婚したことの慰謝料は請求できない、というものです。

今後は、不貞行為解消後3年以内に提訴していないと時効成立となるでしょう。

『したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。
第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。』

不貞慰謝料の金額については、婚姻関係破綻の有無が従来重視されていたところですが、この判例からすれば、不貞行為の相手方に対する請求は、「仮に離婚していても」、従来でいえば離婚していない場合を前提とした相場の金額にとどまることになると思います。

加藤新太郎・松本昭敏編『裁判官が説く民事裁判実務の重要論点 家事・人事編』(第一法規,2016年12月)86頁

「慰謝料の算定要素としては、不貞行為の態様(不貞期間、具体的内容、頻度、相手方の認識・意図等) と婚姻関係への影響の有無・程度(特に破綻の有無)や他方配偶者の精神的苦痛の程度が重要なものとされ、ほかに当事者及び夫婦間の子の年齢、婚姻期間や婚姻生活の状況、他方配偶者の落ち度ないし婚姻関係破綻への責任の程度、謝罪等の慰謝の措置の有無等が考慮され得る。」

但し、「離婚」させたことを考慮できないとしても、「婚姻関係を破綻させた」ことを理由として慰謝料請求が増額出来ないか、という問題はあります。離婚していない=婚姻関係を破綻させていない、とは限りませんので。
多分請求側としてそういった理屈で、離婚に対する責任は負わないとしても、婚姻関係破綻に関する責任は負うのだ、だから離婚した場合と同水準の慰謝料、といった主張をすることになるのかなと思います。
しかし、最高裁判例の趣旨からすれば、婚姻関係破綻についても夫婦の問題、となるのではというのが私の現段階の考えです。判例タイムズの解説待ちです。