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薬院法律事務所

刑事弁護

不起訴理由「罪とならず」「嫌疑なし」「嫌疑不十分」の違い


2021年08月21日読書メモ

司法研修所検察教官室編『検察講義案 平成30年度版』(司法研修所,2018年6月)106頁以下に記載があります。

【罪とならず(事規75Ⅱ⑯)
被疑事実が犯罪構成要件に該当しないとき又は犯罪の成立を阻却する事由のあることが証拠上明確なときにする処分をいう。したがって,被疑者が被疑事実とされる行為の行為者であったとしても, その行為が犯罪構成要件に該当しないとき,又は被疑者に責任阻却事由, あるいは法令若しくは正当の業務に基づく行為(刑35) ,正当防衛(刑361), 緊急避難(刑371本),盗犯等の防止及び処分に関する法律第1条第1項, 第2項該当などの違法性阻却事由のあることが明白となったとき, すなわち, その行為が犯罪に当たらないことが明らかな場合に限ってする処分である。】

【ア嫌疑なし(事規75Ⅱ⑰)
被疑事実につき,被疑者がその行為者でないことが明白なとき,又は犯罪の成否を認定すべき証拠のないことが明白なときにする処分をいう。
すなわち, 被疑者が人違いであることが明白になったとき (注①), 又は被疑者がその行為者であるかどうか(注②), 若しくは被疑者の行為が犯罪に当たるかどうかの点について認定すべき証拠がないことが明白になったとき (注③)には, 「嫌疑なし」と裁定する。】

【イ嫌疑不十分(事規75Ⅱ⑱)
被疑事実につき, 犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なときにする処分をいう。すなわち,被疑者がその行為者であることにつき,又はその行為が犯罪に当たることにつき。 これを認定すべき証拠が不十分な場合は, 「嫌疑不十分」と裁定する。】

 

実務上はこの三者のなかでは嫌疑不十分という裁定が多いと思います。

その理由は、警察は告訴・告発事件以外では、在宅事件で嫌疑が十分でないと思ったものは「不送致」という形で検察官に送致せずに終わらせることが多いからです。すなわち、検察官に送致されている段階で通常は一定の嫌疑があるのです。

これは法律上の適法性に疑問はありますが、広く行われていることです。私の取扱い事件でもそういった処理で終わったものがあります。