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薬院法律事務所

一般民事

交通事故、休業中に雇用契約期間が満了(退職)した場合の「休業損害」の取扱いについての相談(交通事故)


2024年09月08日交通事故

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、交通事故に遭いました。現在休業して入院治療しているのですが、入院中に雇用契約が期間満了になり、保険会社から「休業損害」の支払ができないといわれています。

A、休業損害については,雇用契約が存続していることを前提にしていますので,原則として退職後は認められません。しかし,事故を原因としての退職であるとすれば,現実に稼働可能になるまでのある程度の期間は休業損害に準じて賠償請求することが可能です。また,慰謝料として考慮する扱いがされることがあります。

 

【解説】

 

裁判になった場合については、正社員が事故を原因として解雇されてしまった場合は働けるようになるまでの期間と、再就職までの期間が認められることがあります。契約社員であっても、更新が予定されているなら準じて考えられるでしょう。実務的には、本来交通事故の怪我がなければ雇用が継続する予定であった、ということの証明をして貰うべきではないかと思います。その上で,保険会社に掛け合うという事が考えられます。

 

【参考文献】

 

日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準 上巻(基準編)2024』(日弁連,2024年2月)84頁

【⑦ 症状固定(治癒)前に退職した事例】

 

高野真人『新版 注解交通損害賠償算定基準』(ぎょうせい,2022年12月)144-145頁

【⑥ 症状固定(治癒)前の退職・解雇と休業損害
(ア) 受傷による休業のために失職してしまった場合は、身体機能が回復しても、直ちには、就労して賃金その他の収人を得ることはできない。
それゆえ、事故による受傷が原因で解雇されあるいは退職を余儀なくされた場合は、無職状態となった以降についても、休業損害の対象となり得ることになる。赤い本では、「症状固定(治癒)前に退職した事例」として各種裁判例が多数掲載されているが、このような場合における休業期間認定の仕方の特殊性を認識できるようにするためである。青本は、「事故による受傷が原因で解雇されあるいは退職を余儀なくされた場合には、無職状態となった以降も、現実に稼働困難な期間が休業期間とされる。また、稼働可能となっていても就職先が得られなかった場合には、現実に就労先を得られたときまでの期間か転職先を得るための相当期間のいずれか短期の期間につき損害算定をする。」(第2 章•第1 • 2 • (1)の解説vii)として碁本的な考え方を示している受傷内容にもよるが、事故により退職せざるを得なくなった具体的な事情、再就職の有無、再就職までの期間、再就職に向けて行った具体的な活動等の主張立証が必要であろう。】

 

平岡将人編集代表『適切な賠償額を勝ち取る交通事故案件のベストプラクティス』(中央経済社,2020年10月)87頁

【被害者が事故により復職できず退職する場合があるが,退職が事故と結びついていなければ,退職後の休業損害が支払われない可能性がある。このような場合に必要となる書類は,
・休業損害関係書類
・離職票など,失業関係の害類
・退職に関する医療照会・回答書もしくは意見書
・退職証明書
が挙げられる。
前二者は,休業損害の請求および退職の事実を示す書類として必須である。
退職理由に事故による休業が関与している場合には,本来であれば.勤務先に「交通事故によって」,「解雇した」ことを示してほしいものである。しかし,勤務先としては,その後の手続のために「解雇」とはせずに「自主退職」とすることがあり.その場合には.自己都合退職として.その後の休業損害が支払われないことがある。これに対する対応としては,「この症状であれば退職しても仕方がない」とする主治医意見を取得したいが.通常,主治医はそこまで書いてくれない。そのため,勤務先に対し.「00という症状によって. 00という業務遂行に困難を来したこと」.それによって「配置転換もできず退職に至ったこと」を退職証明書に記載してもらうことを依頼すべきである。具体的には,先の「勤務先意見(例)」の標題を,「退職証明書」に変更し.末尾を.「以上の理由から.業務遂行の継続が困難となっているため.職場復帰は困難と判断し00年0月0日.退職するに至った」と変更することになる。】