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薬院法律事務所

刑事弁護

交際相手から頼まれて口裏合わせをしたことで、逮捕されないか心配という相談(刑事弁護)


2024年12月07日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、東京都渋谷区のマンションで彼氏と同棲している20代女性です。昨日の深夜、彼氏が自動車で交通事故を起こしたそうで、怪我をさせたらしいけどそのまま逃げてきたそうです。彼氏は車は防犯カメラがない郊外で乗り捨ててきたということで、警察が来ても「車は3日前に盗まれた」ということで口裏合わせをしてくれと頼まれました。彼氏は暴走族のリーダーもしていて暴力的なところがあるので逆らうのも怖くて私も口裏合わせに協力することにしました。3日後に警察が来て事情を訊かれたのですが、私も打ち合わせどおり「彼氏から車は事故の3日前に盗まれたと聞いている」「仕事が忙しくて被害届を出すのが遅れた」と回答しました。ですが、1ヶ月後に彼氏が警察に逮捕され、私も警察から「犯人隠避の疑いがある」ということで呼び出しを受けました。どうすれば良いでしょうか。

 

A、最高裁の判例に照らせば、犯人隠避罪が成立する可能性は十分にある事件です。黙秘をし続けるのか、あるいは自白して起訴猶予処分を狙うのか、判断が難しい問題です。弁護士の面談相談を受けて結論を決める必要があるでしょう。

 

【解説】

 

犯人と口裏合わせをして虚偽供述をすることは、犯人隠避罪とされる危険性が高い行為です。親族が犯した場合には刑が免除されることもありますが、必ず免除されるわけでもありません。「黙秘」は権利ですが、「嘘をつく」ことは権利ではないです。私は、口裏合わせをしたいという相談には一切応じていません。

 

刑法

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_7

第七章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪
(犯人蔵匿等)
第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

(証拠隠滅等)
第百四条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

(親族による犯罪に関する特例)
第百五条 前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。

 

最判平成29年3月27日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86652

判示事項
参考人として警察官に対して犯人との間の口裏合わせに基づいた虚偽の供述をする行為が刑法(平成28年法律第54号による改正前のもの)103条にいう「隠避させた」に当たるとされた事例

裁判要旨
道路交通法違反,自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら,Aとの間で,事故車両が盗まれたことにする旨口裏合わせをした上,参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をした本件行為は,刑法(平成28年法律第54号による改正前のもの)103条にいう「隠避させた」に当たる。
(補足意見がある。)

【2 前記の事実関係によれば,被告人は,前記道路交通法違反及び自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら,同人との間で,A車が盗まれたことにするという,Aを前記各罪の犯人として身柄の拘束を継続することに疑念を生じさせる内容の口裏合わせをした上,参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をしたものである。このような被告人の行為は,刑法103条にいう「罪を犯した者」をして現にされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為と認められるのであって,同条にいう「隠避させた」に当たると解するのが相当である(最高裁昭和63年(あ)第247号平成元年5月1日第一小法廷決定・刑集43巻5号405頁参照)。したがって,被告人について,犯人隠避罪の成立を認めた原判断は,是認できる。】

 

【参考文献】

 

法務総合研究所編『研修教材 刑法各論(その2)-社会的法益に対する罪・国家的法益に対する罪- 三訂版』(法務総合研究所,2018年3月)215頁

【(2)隠避
隠避させるとは,蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れさせる一切の行為を指称し(前記大判昭5.9.18) ,例えば,犯人に変装用の衣服や旅費を与えるとか,潜伏場所を教えて逃がすとか,逃避中の者に捜査の進行状況や留守宅の状況・家族の安否を知らせて逃避の便宜を与えるとか(前記大判昭5.9.18) ,真犯人の自首を阻止させるとともに,身代り事件を進行させて結審させるとか(大判昭52 7大集9.2.51) ,真犯人の身代りとして別人を仕立てたり,自己が犯人であるとして捜査機関に虚偽の申立てをするとか(大判大4.8 24録21・1244,前記最決平元5.1) ,参考人として警察官に対して犯人との間の口裏合わせに基づいた虚偽の供述をする(最決平成29.327最刑集71・3 ・183.道路交通法違反,自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら,Aとの間で,事故車両が盗まれたことにする旨口裏合わせをした上,参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をした事案。)などがこれに当たる。】

 

※2025/1/8 chatGPT o1 proで検証してもらいました。

以下では,ご提示いただいた**「交際相手から口裏合わせを頼まれ,虚偽供述した結果,犯人隠避(犯人蔵匿等)の疑いをかけられた」という架空の相談事例と,本文中の解説や引用先の判例・文献の内容が,「事実として正しいかどうか」を検討します。結論としては,「犯人隠避罪として処罰されるリスクがある」という本文の説明は,最高裁判例や刑法の規定に照らして正確な解説**といえます。


1. 架空の事例としての前提

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

本Q&Aは,「交際相手が交通事故を起こして逃走し,虚偽の『盗難被害』を偽装するために口裏合わせを求められ,それに協力してしまった。その後,相手が逮捕され,自分も犯人隠避の疑いで取り調べを受けている」という想定シナリオを示しています。実際にも似たような事例(当事者に頼まれて虚偽供述をし,のちに犯人隠避罪が問題となるケース)はあり得ますが,あくまでここでは典型的なフィクション事例です。


2. 犯人隠避罪の成立要件

2-1. 刑法103条(犯人蔵匿及び隠避)

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者…を蔵匿し,又は隠避させた者は,三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

  • **「蔵匿」**とは,犯人をかくまったり,潜伏場所を提供したりする行為。
  • **「隠避」**とは,それ以外の方法で犯人の発見・逮捕を免れさせる一切の行為。

2-2. 最高裁判例(最判平成29年3月27日)

本文でも引用されているとおり,交通事故を起こした犯人が「事故車両が盗まれた」ことにする口裏合わせをして,捜査機関に虚偽供述を行った事案で,最高裁は

  • 「犯人をして現にされている身柄の拘束を免れさせるような行為」と認められる以上,犯人隠避の『隠避』に当たる
  • 親族の場合であっても必ずしも免除されるわけではなく,「親族特例」(刑法105条)が適用されない場合は刑事責任を負う可能性がある

との判断を示しました。

つまり,捜査機関に対して口裏合わせの虚偽供述をすること(たとえば「車が盗まれたことにしてほしい」という嘘のストーリーを作り,参考人として虚偽説明をする)行為は,「隠避」に該当しうるというのが最高裁の確立した考え方です。


3. 相談内容と本文の解説

  1. 「逮捕されないか心配」
    • 本文のA・解説では,犯人隠避罪の成立可能性が十分にあると指摘しています。これは最判平成29年3月27日の判例と合致し,正確です。
  2. 「黙秘をするか,自白して起訴猶予を狙うか」
    • 犯人隠避罪で捜査・起訴される可能性がある場合,取り調べに対してどう対応するかは戦略的な判断になります。黙秘権はあるものの,嘘をつく権利はないので,口裏合わせを継続的に主張し続けることはリスクが高いというのも正しい指摘です。
  3. 「親族による犯人隠避」なら刑免除の規定(刑法105条)もあるが,交際相手は親族に当たらない
    • 本文の解説では親族特例についても触れていますが,親族ではなく単なる交際相手であれば,当然に免除はされないことになります(もっとも,親族であっても必ず免除されるわけではありません)。

4. 総合評価:記事内容の真偽

  1. 「事例そのもの」は架空:口裏合わせをして虚偽供述した例は実際にもあり得ますが,ここではフィクションの相談として扱われています。
  2. 犯人隠避罪(刑法103条)の成立要件,最高裁判例(最判平成29年3月27日)の引用は正確:
    • 口裏合わせによる虚偽供述が捜査機関の逮捕や発見を妨げ,犯人を逃れさせる効果を持つなら,「隠避」に該当すると最高裁が明言している。
  3. 「黙秘」と「嘘をつくこと」の区別や,「親族特例」でも必ず免除されるとは限らないという解説も,刑法や判例に照らして的確。
  4. 本文が「犯人隠避罪が成立する可能性が高い」「弁護士に相談が不可欠」とする結論も,実務上妥当かつ正しいアドバイスといえます。

以上より,当該文章の法的解説は日本の刑法や最高裁判例の見解に即しており,虚偽や誤解を招く不正確な部分は見当たりません


まとめ

  • このQ&A・解説は,「交通事故を起こして逃走した交際相手のために口裏合わせをし,警察に嘘をついてしまった場合,犯人隠避罪となる可能性があるか」という架空事例を題材にしています。
  • 最高裁判例(最判平成29年3月27日)で,口裏合わせによる虚偽供述が犯人隠避罪の『隠避』に当たると認定されており,実務的にも処罰リスクは高いことが確認できます。
  • よって,記事中の解説は刑法103条や判例の理解に沿っており,真実に即した正確な内容と評価できます。