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薬院法律事務所

労働事件

会社の責に帰すべき事由で働けない場合の賃金請求


2019年01月27日労働事件

解雇無効紛争が典型例ですが、使用者の責に帰すべき事由で働けなかった場合、民法536条2項により会社は賃金全額の支払い義務を負います。

もっとも、実は、就業規則や雇用契約の定めで、休業手当(60%の支払)に抑えることが可能です。

東京弁護士会労働法制特別委員会編『新労働事件実務マニュアル(第4版)』(ぎょうせい,2017年2月)89頁

「また、民法536条2項は任意規定であるため就業規則、労働協約や個別契約等による適用排除が可能であるが、その場合、民法536条2項の適用を排除する旨を明確に規定する必要がある(いすゞ自動車(雇止め)事件:東京地判平成24年4月16日労判1054号5頁は、 「臨時従業員が、会社の責に帰すべき事由により休業した場合には、会社は、休業期間中その平均賃金の6割を休業手当として支給する。」との就業規則上の定めにつき、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」による労務提供の受領拒絶がある場合の賃金額について定めたものとは解されないとしている。)。)」

『新版注釈民法13巻(債権4)』(有斐閣,2006年12月)656頁

「危険負担に関する規定は 任意規定だとされるので、特約によってその適用を排除しうる」

金子征史・西谷敏一編『基本法コンメンタール労働基準法【第5版】』(日本評論社,2006年2月)144頁
「また、同条同項(※民法536条2項)は任意規定と解されているから、労使間の特約(合意)によって排除することもできる」

そうすると、雇用契約や就業規則で使用者の責に帰すべき事由による労務不提供の場合の賃金請求について民法536条2項の適用を排除することを明示すれば、最大でも労基法26条の60%に抑えられることになります。

インフルエンザの疑いで休ませる時などの対策も兼ねて、少なくとも新規の雇用契約や就業規則には導入すべきと思います。

但し、就業規則で導入する場合は、既存の従業員との関係では、不利益変更として合理性が問題になり得ます(労働契約法10条)。新規に就業規則を作る場合や、就業規則の変更後に入社する従業員との関係でも就業規則の合理性は問題になり得ますが(労働契約法7条)、雇用契約書でも合意しておけば大丈夫でしょう。

また、解雇無効紛争となれば、労働者側が公序良俗違反と言ってくる可能性もありますので、導入の際は専門家に相談すべきです。

※労働契約法
第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

(労働契約の内容の変更)

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。