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薬院法律事務所

刑事弁護

児童買春事件で、示談をする意味はあるのか


2023年06月10日読書メモ

まず、児童買春は示談すれば不起訴になるといったものではありません。

 

立法にあたって活動された議員らによる書籍には、次のとおり記載されています。

森山眞弓・野田聖子編著『よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』(ぎょうせい,2005年3月)167頁

【強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、これを訴追し処罰することにより被害者の精神的苦痛等の不利益が増すことが考えられることから、被害者の保護の観点から親告罪としているものと解されています。
しかし、児童買春罪については、加害者やその背後の組織の報復を恐れて告訴できなかったり、保護者への金銭の支払で示談をし、告訴を取り下げさせたりするようなことが通常の性犯罪以上に多いことも考えられ、これを親告罪とすると、児童買春の相手方となった児童の保護や、児童を性欲の対象としてとらえる風潮の抑制、児童一般の心身の成長への重大な影響の防止を十分に図ることが困難になるので、非親告罪としました。】

 

そのため、私は原則として児童買春や青少年健全育成条例違反では示談交渉はしていません。

 

もっとも、示談が常に無意味かというと、そうではありません。

 

量刑上考慮されることはありますし、検察官によっては示談したことを考慮して不起訴にする人もいるようです。さらにいえば、示談するか否かとは無関係に、被害児童や被害児童の保護者が事件化することを望まないこともあります。プライバシーの侵害の危険性があることや、証人尋問の負担がある可能性があるからです。その場合は、自白があり、被害児童の供述があっても、起訴されないことがあるようです。実際に私が取り扱った事件でも、被害児童や被害児童の保護者の意向から余罪が立件されなかったと思われるものがありました。

 

なお、私はしたことがないですが、早期の示談をした結果、被害児童が以後の取調べに協力せず、証拠不十分で検察官に送致できないといった可能性も考えられなくはないと思いますが…仮に示談書などで被害児童に対して以後の取調べに応じないように求めた場合、証拠隠滅罪に問われる危険性が高いです。私は絶対にいたしませんし、やるべきではないです(以前、そういう示談がされた事案があったという話を、どこかで聞いた記憶があります)。