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薬院法律事務所

刑事判例研究(491)いわゆる「だまされたふり作戦」が実施された現金送付型の特殊詐欺事案において同作戦開始後に共謀関係に入った「受け子」 につき詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めた事例(最高裁判所 第三小法廷平成29年12月11日決定・裁判所ウェブサイト登載))法務省刑事局参事官 隈良行

2018年07月20日読書メモ

警察学論集2018年3月号。

私が一審から弁護人をして、一審無罪、高裁で逆転有罪判決を受けたいわゆる騙されたふり作戦の最高裁判決に対して、法務省刑事局参事官の隄良行氏が解説しています。

最高裁が不能犯説に立っていないというのは同意見です。結局最高裁がどういう立場で判断したのか分からないのですよね。記事では不能犯以外の考え方でどうにか正当化できないか苦心されていますが、かなり苦しい議論をしているように思います。

「3 本決定が共犯論についてどのような立場をとっているのか、どのような理論構成によって受け子について詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めたのかは、判文上、必ずしも明らかではなく、受領行為の実行行為性について どのように考えているのかも判然としない。
しかしながら、本件の控訴審 判決やこれまでの下級審裁判例が一般人が認識可能な事情及び行為者が特に認識した客観的事情を基礎として犯罪実現の危険性の有無を判断する具 体的危険説と同様の考え方によっているものと考えられるのに対し、本決 定においては、だまされたふり作戦が開始されたことが一般人にとって認 識可能かどうかについて言及されていないことからすると、本決定が不能犯の問題と同様の理論構成に基づいて受領行為の実行行為性を判断したと 断定することはできないと思われる。
被告人が「だまされたふり作戦が開 始されたことを認識せずに」と判示する部分は、だまされたふり作戦が開 始されたため計画どおり現金をだまし取ることができないことを認識していないこと、裏を返せば、このまま計画どおりに受領行為を行えば現金を 受領できると認識している、すなわち詐欺の故意を有する状態であることを意味するにすぎないと考える余地もある。
いずれにしても、本決定は、受け子が詐欺を完遂する上で欺岡行為と一体のものとして予定されていた受領行為に関与した場合には、だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず、受け子は加功前の欺岡行為を含めた詐欺について共同正犯の責任を負う (だまされたふり作戦が実施されず、既遂となった場合には詐欺既遂罪の共同正犯、だまされたふり作戦が実施されて未遂となった場合には詐欺未遂罪の共同正犯がそれぞれ成立すると考えられる。)ことを認めたものであり、だまされたふり作戦の開始前に受け子について事前共謀が成立したと認められない事案においても受け子の刑事責任を問うことができることを最高裁判所として明らかにした点で、実務上、大きな意義があるといえる。」

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