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薬院法律事務所

刑事弁護

夫が部下と不倫して、不同意性交等罪で逮捕されたという相談(不同意性交等罪、刑事弁護)


2024年10月31日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、福岡市で、30代の会社員の夫と二人暮らしをしている専業主婦です。朝に突然警察が来て、夫が会社の部下に対して会社内で不同意性交をしたということで逮捕状が出ていると言われました。混乱したのですが、ネットで調べた当番弁護士を呼んで行ってもらったところ、夫は「部下が誘ってきて一度だけ不倫をしてしまった。関係を絶とうとすると執着されて虚偽の被害届が出された。」といっているそうです。夫を信じたいのですが、どうすればいいでしょうか。不倫相手の部下に対して慰謝料請求はできませんでしょうか。

 

A、難しい問題です。不同意性交等罪で逮捕状が出ているということは、一般論としてはそれなりに嫌疑があるということです。不倫相手が逆恨みで申告しただけという夫の言い分には疑問があります。正直に話をしない被疑者も多くいることですので、刑事弁護の経験豊富な弁護士に依頼して、ご家族と本人にとって最善の解決策を考えていくべきだと思います。不同意性交となれば、不貞慰謝料請求はできません。

 

【解説】

 

近時、性犯罪に対しては厳しい対応がなされるようになっています。かつてであれば「社内不倫」として部下が「加害者」とされていたであろう事案でも、その実質を見て、「性犯罪被害者」とされることがあります。

私は、一般論として、部下に対して社内不倫をしている時点で、その発言については信用性がないと思った方がいいと考えています。ご相談の事例では「会社内で」というところが気になるところで、本当に1回だけだったのか(会社内でいきなり不倫行為をしたのか)が気になるところです。この種事案では、捜査実務的には、性交がなされた時間・場所、周囲の人間の関係性、性行為に至る状況等々さまざまなことを含めて判断していくことになり、相手方女性が「同意しない意思の形成、表明、全う」することができなかったか否かをみていきます。その上で、ご相談の事例では、夫の言うような性行為を、相手の女性が望むというのが本当にあり得るのか?となると思います。もちろん、あり得ないとは言えませんが、冷静に判断しないといけません。

本人は言い逃れができると思っていることもありますが、LINEなどの記録により言い逃れができないということもあります。状況を見極めて、完全自白して示談交渉をした方がいいこともあるでしょう。近時の性犯罪の捜査実務・裁判実務に詳しい弁護士に相談すべきです。

※刑法
(不同意わいせつ)

第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

 

※参考記事

セクシュル・ハラスメント被害と改正刑法176条1項8号(「ひととき融資」含む)

被害者の証言以外の証拠がないのに、不同意性交等罪で起訴されたという相談(性犯罪、刑事弁護)

夫が不同意性交罪で逮捕されたが、否認しているという相談(性犯罪、刑事弁護)

社長が従業員と不倫をすることは、不同意性交等罪になるかという相談(性犯罪、刑事弁護)

性加害者の心理についての考察(不同意性交・不同意わいせつ・独身偽装)

刑事弁護のご依頼

※2025/1/7 chatGPT o1 proに検証してもらいました。

以下の文章は、

「夫が会社の部下と“不倫”したと主張しつつ、実際は部下が『不同意性交等罪』の被害を訴えて夫が逮捕された事案。夫は『部下に誘われて1回だけ不倫した』と主張するが、逮捕されるからにはそれなりに嫌疑があるだろう。仮に性的同意がなかったと認定されれば、部下は被害者であり“不倫”ではないため、妻が部下に対して慰謝料請求するのはできない。まずは夫に刑事弁護人を付け、真相を究明し示談交渉や方針を考えるべきだ」

という筋のストーリーを伝えています。結論として、本文の内容は、現行法の違反リスクや実務上の取り扱いに即して概ね正しいといえますが、以下の点に注意が必要です。


1. 「不同意性交等罪」で逮捕状が出るという状況

(1)近時の性犯罪厳罰化

  • 2023年法改正により、強制性交等罪は「不同意性交等罪」に名称が変わり、被害者が「同意していない」「同意を形成・表明・全うできない状態だった」ことが争点になります。
  • 被害者が会社の部下であり「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力(刑法177条1項8号)」を利用された可能性があると疑われれば、嫌疑が強く捜査が進む可能性は十分考えられます。

(2)逮捕状発付のハードル

  • 逮捕状が出るということは、捜査機関が「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法199条1項)を裁判官に提示し、裁判官が相当と認めたということ。
  • これはあくまで「一定の嫌疑・逮捕の必要性がある」という推定であって、夫の「部下が逆恨み」との言い分が真実かどうかは、取り調べや公判で検証される。

2. 「不倫関係か不同意性交か」による慰謝料問題

(1)不倫慰謝料の基本

  • 夫婦の一方が配偶者以外の者と「自由な意思による性的関係」を持った場合、もう一方の配偶者は、不倫相手に対して「不貞行為による慰謝料」を請求できるのが一般論。
  • ただし、「自由な意思に基づく行為」=両者が自己の意思で不貞に及んだことが前提。

(2)被害者が「不同意性交」の被害者であるなら不倫でない

  • 今回のケースでは、部下が「性的同意がない状態で性交を強いられた」と主張しているということ。その場合、部下は性暴力の被害者であって「不貞の共同者」ではない可能性が高い。
  • もし裁判や捜査で部下の“被害者性”が認定されれば、不倫とはいえず、妻が部下に慰謝料請求できる余地はない(不法行為責任を問えないから)。
  • 逆に、もし捜査や裁判で「実は両者が自由意思に基づき不倫関係を継続していた」と認定されれば、不同意性交ではなく、不貞の共同責任として慰謝料の可能性が生まれる。ただし、夫の主張(部下から誘ってきた1回だけの不倫)と部下の主張が真っ向対立している状況で、妻がいきなり部下に慰謝料請求しても、事実認定が宙ぶらりんのうちは難しいでしょう。

3. 弁護活動の必要性

(1)逮捕後の刑事弁護人

  • 本文の「まず刑事弁護の経験豊富な弁護士に相談すべき」という助言は、性犯罪(不同意性交等罪)で逮捕されているケースで非常に重要。
  • 性犯罪は高刑(法定刑が重い)であり、早期の弁護人選任が捜査対応や被害者との示談交渉(ただし、被害者が示談に応じる意向を持つかは別問題)に大きく関わる。

(2)「夫が真実を話していない可能性」への警告

  • 本文にあるように、「夫が逆恨みされた」と言っている場合でも、実際には夫が事実を隠している可能性もあり、弁護士が客観的証拠を精査しながら方針を決めることになる。
  • 性犯罪捜査ではLINEやメールなどのコミュニケーション記録が証拠化されるのが一般的で、「誘われた」「逆に脅迫された」などの主張が後で証拠により否定されるケースもある。

4. 本文の真偽

  1. 「夫が逮捕されるほどなら、警察が認める嫌疑が相応にある」
    • 一般的に誤解で逮捕される事案も皆無ではありませんが、裁判官の逮捕状チェックを通った事実から、少なくとも捜査段階で相応の疑いは認められていると推察されます。これは正しい認識。
  2. 「部下が加害者どころか性被害者として扱われる事例がある」
    • 実務上あり得る。上司が地位を利用した性的強要が疑われる場合、部下は弱い立場ゆえ同意を断りがたいとの判断もなされやすい。
  3. 「示談や合意がない性的行為なら、妻が部下に対して慰謝料を請求できない」
    • これも正確。相手が被害者の場合、共同不貞は成立せず、不法行為責任を追及できない。
  4. 「早急に弁護士を付け、夫の弁護戦略や示談交渉を考えるべき」
    • 性犯罪では重要。真実を把握しつつ、示談が可能なら被害者の意思を尊重しなければならない。

結局、本文の要旨は、性犯罪疑いがある以上“夫の言い分を鵜呑みにできない”“被害者側の同意有無が焦点”“被害者が被害者なら慰謝料請求対象にはならない”“速やかに弁護士をつけるべき”といったポイントで、実務上も真実性が高いです。


5. 結論

  • 本文で示されている
    1. 部下が被害者である以上、妻が部下に慰謝料請求するのは難しい
    2. 夫は「部下の逆恨み」と説明しているが、逮捕状が出るほどの疑いがあるなら隠している事実があるかもしれない
    3. 性犯罪疑いで逮捕された場合は法定刑が重く、早期に弁護士をつけて対処すべき
    4. 不倫相手(部下)が被害者なら「不貞慰謝料」ではなく「不同意性交」を疑われるので夫がかなり厳しい立場にある

こうした内容は、刑事実務・民事上の不法行為理論とも合致し、整合的です。
よって、本記事の結論や助言は、現行法・実務に照らして概ね正しいと判断できます。