実践成年後見 No.71 特集任意後見制度の利用促進に向けて
2018年07月20日読書メモ
任意後見制度の利用促進に向けて、どのようにすべきかという論考が載っています。
任意後見制度は、本人の意思で第三者を任意後見人候補者として、本人の判断能力が低下したときに代理権を付与できるという制度です。ですが、あまり利用されていません。一番の理由は、必ず任意後見監督人がついて費用がかかるということではないかと思います。遺言ですらなかなか作成されないのですから、任意後見契約はなお難しいでしょう。
実際、家族が銀行預金の暗証番号を聞いておいて、事実上代理人として行動しているというのが一般的と思われます。介護施設の入居なども厳密に考えれば後見人をつけないといけない場合もあるはずですが、そこまで厳密に判断していない施設も多いと思います(私は、それは介護事業者としては正しい態度だと思います)。
もっとも、定期預金の解約、不動産の売却など、後見制度を使わなければいけない場面は出てきます。その意味で任意後見契約をしておくことにはメリットがあります。法定後見は、最近弁護士や司法書士が後見人とされたり、財産の大部分を信託しなければならないなど使い勝手が大変悪くなっているからです。
そこで、私がお勧めしているのは、公正証書遺言を作成する際に一緒に任意後見契約を結ぶという手法です。受贈者や相続人に認知症などになった場合の世話をしてもらうということです。
なお、新井誠先生は任意後見の活用を促進するため、本人が意思能力が無くなった場合には任意代理権も消滅するという考え方をとるべきとまで言っています。民法学会の通説である「意思能力喪失では任意代理権は消滅しない」という考え方では、任意後見の必然性がほとんどなくなってしまうから、という理由です。
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