彼氏が所持していた大麻について、自分が所持していたといわれているという相談(刑事弁護、大麻)
2024年12月04日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都目黒区のマンションで、彼氏と同棲している20代の女性です。彼氏から大麻を勧められて、私も大麻を吸うようになりました。大麻については私自身が買うことはなく、もらってばかりだったのですが、先日、彼と一緒に車にいるときに職務質問を受けて、警察が私の持っていたアタッシュケースから、眼鏡ケースに入った大麻が発見されました。彼が入れていたのだと思いますが、私も彼も大麻所持の嫌疑で逮捕されました。何故か彼は不起訴になりましたが、私は起訴されました。確かにアタッシュケースは私の物ですが、眼鏡ケースは知りません。彼が勝手に入れたのに理不尽だと思います。
A、難しい事件です。彼が不起訴になった理由はわかりませんが、アタッシュケースがあなたの物だったということが大きいのではないかと思います。後掲の参考裁判例では、自分自身では覚せい剤を入手していなかった人に覚せい剤の所持罪が認められているようです(公刊物未搭載)。具体的な証拠関係次第では、ご質問者様が「所持」しているという故意がなかったといえる場合もあると思います。弁護士に依頼して、検察に対する証拠開示を求めていく必要があります。
【解説】
基本的に、自分のアタッシュケースの中に入っていたということであれば、「所持」の故意があったとされると思います。とはいえ、例外的に否定される可能性もなくはありません。彼氏が積極的に自分が所持していたことを供述してくれれば別ですが、そういう展開にはならなかったのではないかと思います。証拠を見た上で、ご質問者様の弁解が認められるかどうかを検討する必要があるでしょう。違法薬物問題に詳しい弁護士へのご依頼をお勧めします。
令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html
厚生・労働2024年06月19日
大麻草から製造された医薬品の施用等の可能化・大麻等の不正な施用の禁止等に係る抜本改正
~大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律~ 令和5年12月13日公布 法律第84号
法案の解説と国会審議
執筆者:木村歩
https://www.sn-hoki.co.jp/articles/article3567820/
【(2)大麻等の施用等の禁止に関する規定・罰則の整備
① 大麻等を麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に位置付けることで、大麻等の不正な施用についても、他の麻薬と同様に、同法の禁止規定及び罰則を適用する。
なお、大麻の不正な所持、譲渡し、譲受け、輸入等については、大麻取締法に規制及び罰則があったが、これらの規定を削除し、他の麻薬と同様に、「麻薬」として麻薬及び向精神薬取締法の規制及び罰則を適用する(これに伴い、法定刑も引上げ)。】
【参考文献】
警察公論2019年8月号付録令和元年版警察実務重要判例174-177頁
被告人と行動を共にしていた者が,その所有するアタッシュケースに覚醒剤を収納しており,覚醒剤の存在を未必的にしか認識していなかった被告人につき,覚醒剤所持罪の成立を認めた事例東京高判平30.7.19
公刊物未登載
177頁
【本判決は,具体的な事実関係として,本件アタッシュケース内に本件覚醒剤と共に入れられていた物品の使用及び所有関係,被告人とIの共同生活の状況,被告人とIにおける本件覚醒剤を含む覚醒剤の使用状況,本件アタッシュケースの管理状況,本件アタッシュケースが本件車両に積み込まれた経緯等に着目し,上記結論を導いたものであり,同種事案の捜査において十分に捜査を尽くすべきポイントを示すものとしても実務上参考になるものと思われる。】
※2025/1/8 chatGPT o1 proで検証してもらいました。
以下では,ご提示いただいた**「彼氏が所持していた大麻が自分のアタッシュケースから出てきたため,自分に大麻所持の疑いがかけられた」という架空の相談事例の内容や,本文中に引用された解説や判例が「事実として正しいかどうか」という観点から検討します。結論としては,「物の実質的管理(所持)の認定」「持っていることの認識(故意)」が問題になる大麻所持事件の考え方や,未必的認識での所持罪成立の可能性などについて,本文が述べている法的解説は日本の刑法や判例実務に照らしておおむね正確**といえます。
1. 架空の相談事例としての前提
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
本Q&Aで描かれているストーリーは,「彼氏の大麻が自分のアタッシュケースに入っていたため,車内で発覚した際に自分も大麻所持容疑で逮捕された」という場面を想定しています。現実でも,一緒に暮らしている相手の大麻が身近な物(カバンや衣類)に紛れ込み,結果として本人も所持容疑を受けるといった事例は一定数存在します。
2. 大麻所持罪の成立要件と「所持」の判断
2-1. 大麻取締法による規制(令和6年以降は「麻薬及び向精神薬取締法」で扱われる予定)
- 大麻の所持は大麻取締法や(法改正後は)麻薬及び向精神薬取締法で厳しく禁止されています。
- 所持が発覚すれば,例外なく刑事罰の対象となる可能性があります(医療用など正当な理由がある場合を除く)。
2-2. 「所持」の実質的意味
日本の刑法・薬物事犯の解釈では,「所持」とは単に物理的に持っているだけでなく,実質的な管理支配を有しているかが問題となります。
- 例えば,自分のカバンや部屋の中に大麻が入っている場合,一般的には「カバン(部屋)を支配している=大麻を管理している」と評価されることが多いです。
- もっとも,「本人が全く認識していなかった」「実は他人が勝手にカバンに入れた」等の事情があれば,「所持の故意がない」として罪が否定される可能性も理論上はあります。
3. 「故意」がない場合に所持罪は成立しない?
本文でも言及されているとおり,大麻所持罪(刑法犯としては特に刑法第何条というわけではなく,大麻取締法等の特別法違反)は故意犯なので,持っていることの認識が必要です。
- 「自分が大麻を持っていると認識していなかった」という弁解が成り立つなら,**そもそも所持の故意がなかったとして無罪(あるいは嫌疑不十分で不起訴)**になる可能性があります。
- しかし,判例上,「未必的認識」(ひょっとしたら違法薬物かも,と思いつつ黙認している状態)でも「所持の故意がある」とみなされるケースが多いため,「自分の鞄に大麻が入っているなんて全く知らなかった」ことを立証するにはハードルが高いと言えます。
4. 「彼氏は不起訴,自分が起訴」という状況について
相談事例では,「彼氏が大麻を入れたはずなのに,彼氏は不起訴,自分が起訴された」とあり,自分だけ責任を負わされたのは理不尽という主張をしています。
- 実務上,捜査状況や供述状況などによって「どちらに故意があったか」「どちらが主導的に管理していたか」を警察・検察が判断します。場合によっては,被疑者同士の供述や物証などから「大麻を自分の所有物として認識していたのはA(彼氏)ではなくB(自分)」とされることもあるでしょう。
- 罪証が十分とみられれば起訴され,逆に証拠が乏しかったり,立件要件を満たさないと検察が判断すれば不起訴になる場合があるため,必ずしも「本当に所持していた方」が起訴されるとも限りません(不公平感を感じる場合もあり得ます)。
5. 引用されている「公刊物未搭載の覚せい剤事例(東京高判平30.7.19)」との関係
本文で紹介されている**「公刊物未登載」の高裁判例**は,覚せい剤所持に関する事案ですが,他人が所有するアタッシュケースに覚せい剤が入っていた状況で,被告人が未必的に覚せい剤を所持していると認定された例を示しています。大麻でも同様の論理が当てはまるため,
- 自分が直接入手していなくても,「自分の鞄(アタッシュケース等)」に入っていることを認識していた(または認識し得た)と判断されれば所持と認められる
- 他人(彼氏)が勝手に入れたとしても,自分が積極的に黙認していた場合には未必的故意が成立し得る
といった点で参考になるということです。
6. 記事内容の評価
- 「自分の持ち物(アタッシュケース等)から大麻が発見された以上,警察は『自分が所持していた』と判断しやすい」という指摘は正しい。
- 「もっとも,全く知らなかった場合には所持の故意が認められない可能性がある」という解説も正確。ただし,実務上は本人の供述や状況証拠(同居人との関係や普段の大麻使用状況など)から「未必的認識を持っていた」と推認されるケースが多い点に注意。
- 「彼氏が積極的に『自分が入れた』と供述してくれれば別だが,そのようにならなかったのでは」という解説も実務的にあり得る推測です。
- 大麻取締法や麻薬及び向精神薬取締法への改正動向が紹介されていますが,これは2024年(令和6年)以降の大麻所持規制強化の方向性を説明しており,事実として正しい。
総括すると,記事中の法的解説・判例引用・2024年以降の法改正情報はいずれも正確であり,誤りや虚偽は見当たりません。「アタッシュケースが自分の物である以上,所持を疑われやすい」「未必的認識でも所持罪が成立し得る」「それでも弁護士を通じて検察側の証拠を精査し,無罪(または不起訴)を主張する余地がある」という論旨は,日本の刑事実務に沿った妥当な見解です。
まとめ
- このQ&A・解説は,「彼氏の大麻が自分のカバン(アタッシュケース)から出てきた結果,大麻所持で起訴されそうだが納得いかない」という架空事例を題材に,大麻所持罪成立の論点(「所持の認識」や「アタッシュケースの管理状況」など)を説明しています。
- **「容疑がかかる理由」「未必的故意による所持罪成立の可能性」「ただし全く知らなかったならば無罪の可能性もある」**といった内容は,薬物事犯の実務において正確な法的説明といえます。
- よって,**当該記事の内容は刑法や実際の薬物事犯の捜査・裁判での考え方に即しており,真偽を問うならば「真実に即した正確な情報」**と言えるでしょう。