既婚者との不倫が発覚した婚約者の婚約破棄をしたら、慰謝料を請求されたという相談(一般民事)
2024年11月28日一般民事
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市に住む30代男性です。婚活用のマッチングアプリで女性を探していたのですが、マッチングした相手と何度か面会し、好きになったので私からプロポーズしました。彼女のご両親にも会いにいって、結婚式の段取りを進めていたのですが、ある日、表に何も書かれていない封書がポストの中に入っていました。開けてみると、彼女が職場の上司と不倫しているということで、上司の実名も書いていました。ショックを受けましたが、まさかと思って、訊いてみたところ、最初は知らないといっていましたが、本当だと認めました。上司が無理矢理迫ってきたそうで、もう別れているということでした。彼女にも事情があったのでしょうが、私は不倫する人はどうしてもダメですので、別れようといい、LINEもブロックしました。すると、数週間後、弁護士から婚約破棄を理由に慰謝料500万円を支払えという請求書がきました。私は支払わないといけないのでしょうか。正直なところ、私の方が慰謝料を請求したいです。
A、婚約が成立しているかどうかが問題になります。仮に成立している場合は、「不倫をしていた」ということが婚約破棄を正当化する理由になるかということが問題になるでしょう。また、金額として500万円の金額が正当かどうかということも問題になります。弁護士の面談相談を受けられて下さい。
【解説】
まず、こういった場合はそもそも「婚約」が成立しているかどうかが問題になります。状況からすれば一定の結構に向けた段取りは進んでいるようなので、「婚約」が成立しているといえる場合もあると思いますが、ケースバイケースです。
仮に婚約が成立している場合、次は不当破棄か否かが問題になります。本件が、婚約後、あるいは交際中に不倫行為を継続していたのであれば、婚約破棄に至ったのは相手方が原因ということで、婚約破棄の正当な理由になると考えられます。逆に慰謝料を請求することも出来るでしょう。「どちらが婚約破棄を申し出たか」は婚約破棄による慰謝料発生に直結はしません。離婚事件で、離婚を申し出た側が慰謝料請求をできることと同じです。
もっとも、交際前となれば話は少し変わります。過去の不品行が婚約破棄の正当な理由になるかどうかについて見解が分かれています。ただ、近時の裁判例・学説の傾向からすれば、婚約破棄が違法とされる可能性は低いと思われます。
裁判年月日 平成24年 7月26日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平23(ワ)826号
事件名 結納金その他返還請求及び慰謝料請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2012WLJPCA07268004
【上記認定事実及び本件前提事実によれば,本件婚約関係破綻の主な原因は,本件婚約成立後も,被告が,原告以外の男性との男女関係を継続してきたことにあるものといわざるを得ない。男女が婚約した場合は,婚姻に至った場合とは異なり,互いに貞操義務まで負うものではないが,婚約は婚姻予約であることからすれば,婚約当事者は,以後,互いに婚姻に向けて誠実に努力すべき義務を負うことになる。してみれば,婚約後,その一方当事者が,同義務に違反し,相手方以外の異性と男女関係を結ぶことは相手方との将来の婚姻を障害させる重大な背信行為であるから,これにより婚約が破綻した場合,当該背信行為を行った婚約当事者は,相手方に対し,損害賠償責任を負うものと解される。】
【参考文献】
二宮周平「4 婚約解消の正当理由」梶村太市・棚村政行編『夫婦の法律相談[第2版]』(有斐閣,2010年12月)21-23頁
【最近の判例でも,結婚式の打合せの際の男性の母親の言動,男性が母親の言いなりになっていたこと,男性の家の独特の家風や行儀作法が細かいことなどから,女性が男性との結婚生活に入ることに自信を失いまた自分の両親の反対もあり,結局自分から婚約の解消を申し出た事案において,「婚約解消を理由として,それまでにかかった費用の清算以外の精神的損害に対する損害賠償義務が発生するのは,婚約解消の動機や方法等が公序良俗に反し,著しく不当性を帯びている場合に限られるものというべきである」として,婚約解消に違法性はないとしています**1 東京地判平5• 3 • 31 判夕857 • 248】
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641006461
吉岡睦子・榊原富士子編『Q&A離婚相談の法律実務』(民事法研究会,2020年4月)287頁
【裁判例で婚約破棄に正当な理由がない場合と判断されたのは、①性格の不一致、②容姿に対する不満、③年回り、④親の反対、⑤方位が悪い、⑥家風に合わない、⑦破棄された婚約者側の親に前科があるなどです。
学説では、結婚に至るまでに性格や価値観が合わないことがわかるなどの場合も多いので、婚約破棄の正当事由を広く解すべきとの考え方が一般的で、裁判例でも婚約破棄理由につき、費用の清算以外の損害賠償責任が発生するのは、「婚約解消の動機や方法等が公序良俗に反し、著しく不当性を帯びている場合に限られるものというべき」としたものもあります(前掲東京地判平5• 3 • 31)。
ほかの人を好きになったというのは、もちろん正当な理由とはいえないので、慰謝料などの請求が可能です。】
http://www.minjiho.com/shopdetail/000000001149/
武藤裕一・野口英一郎『離婚事件における家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』(新日本法規出版,2022年11月)46頁
【裁判例で婚約破棄に正当な理由がないと判断されたのは、容姿が気に入らない、親に反対されている、年齢が離れている、性格が合わない、親に前科がある等です。裁判例の傾向としては一旦成立した婚約の解消を容易には認めていませんので注意が必要です。】
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/item/5100246
※2025/1/8 chatGPT o1 proで検証してもらいました。
以下では,ご提示いただいた**「婚約者が既婚者と不倫していたことが発覚し,婚約破棄をしたところ,逆に慰謝料500万円を請求された」という架空の相談事例と,本文で示されている婚約の成立・正当な婚約破棄理由・慰謝料請求の可否**などに関する解説が,日本の民法や判例に照らして「事実として正しいかどうか」を検討します。結論としては,婚約関係が認められたとしても,相手の不倫(浮気)行為が婚約破棄の原因であるならば,婚約破棄に正当な理由があり,むしろ慰謝料を請求されるのは相手側という可能性が高いという本文の説明は,日本の判例や学説に沿って正確といえます。
1. 架空の事例としての前提
※相談事例はすべて架空のものです。
実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
今回のQ&A形式の相談は,「婚活アプリで知り合った女性と婚約して式の準備まで進めていたが,実は彼女が職場の既婚上司と不倫していた。その事実を知った男性が婚約破棄をしたところ,女性サイドから『婚約破棄を理由に500万円の慰謝料を支払え』と請求されている」という状況を扱っています。
2. 婚約の法的性質と「婚約破棄」の損害賠償
2-1. 婚約は「法的拘束力のある契約」に近い
- 婚約は,民法上の**「婚姻予約」**にあたると解されています(形式的に契約とは異なるものの,両者が結婚に向けて相互に協力・誠実に努める合意と捉えられる)。
- 婚約を一方的に破棄した場合,「正当事由」がないにもかかわらず破棄すれば,相手に対して損害賠償義務を負う可能性があります。
- 「正当事由」とは,婚姻を継続することが難しい合理的理由をいい,たとえば**不貞行為(他の異性との不倫)**は典型的に「正当理由」とされるケースが多いです。
2-2. 不当破棄 vs. 正当破棄
- 不当破棄:性格が合わない,容姿が気に入らない,親が反対する等の理由で婚約を突然破棄することは,「正当な理由」に当たらないとして損害賠償が認められやすい。
- 正当破棄:不貞行為や深刻な暴力・暴言など,相手が契約的信頼を裏切るような行為をした場合,破棄した側が**「正当な理由がある」と主張して損害賠償を免れる**どころか,逆に相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
3. 今回の事例のポイント
- 「相手が既婚上司との不倫行為をしていた」
- これは明らかに婚姻予約(婚約)の根本を否定する背信行為とみなされる可能性が高い。
- **「すでに不倫関係は解消した」**としても,婚約者として不倫関係を継続していたこと自体が重大。
- 「男性のほうが婚約破棄を告げた」
- 破棄を告げた側だからといって慰謝料を払う義務が生じるわけではなく,むしろ正当な理由がある破棄として認められる可能性が高い。
3-1. 金額500万円の妥当性
- そもそも婚約破棄の損害賠償として500万円というのはかなり高額です。
- 実際の判例では,慰謝料の相場は数十万円~100万円程度に落ち着く例が多く,もともと婚約破棄賠償で数百万円が認められるのは稀です。
4. まとめ:記事内容の評価
- **「婚約が成立しているかどうか」「破棄理由が不当かどうか」**の2点が問題になるという本文の指摘は正しい。
- 相手の不倫行為が婚約破棄の正当理由として認められるかについては,「継続的に浮気していた」のならほぼ間違いなく正当理由となり得るという本文の見解も,判例・学説に照らして妥当です。
- **「逆に男性のほうが慰謝料を請求できる可能性がある」**とする本文の示唆も,日本の婚約破棄事案で広く認められている枠組みに合致します。
- **最終的に金額や当事者の事情は個別判断となるため,「弁護士に面談相談を」**とする本文の結論も適切。
総合的に見て,当該記事は婚約破棄の法的理論や判例を大まかに踏まえており,誤りや虚偽の記述は特に見当たらないと言えます。
結論
- 今回の解説は,「婚約破棄の正当理由として相手の不倫行為があれば,慰謝料を請求されるどころか逆に請求できる可能性がある」などの点を示し,日本の婚約破棄に関する判例理論と合致しています。
- 「慰謝料500万円」という高額請求に対して「不倫が原因で婚約破棄したなら高確率で支払う必要はない」という見解も妥当であり,記事内容はおおむね正確と評価できます。