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薬院法律事務所

一般民事

書評 遺言・相続実務問題研究会編『実務家が陥りやすい相続・遺言の落とし穴』(新日本法規,2018年10月)


2019年01月10日読書メモ

相続法改正対応。肢別本レベルの基本的な話が多いですが、この基本的なところというのが間違えやすいのです、、、ざっと読むといいと思います。

姉妹書の遺言・相続実務問題研究会編著『遺言・相続法務の最前線-専門家からの相談事例-』(新日本法規,2012年12月)も持っていると便利です。

いくつかメモします。

1、養子縁組前に出生した養子の子には、養親の代襲相続権はない。
→弁護士でも勘違いしている人がいますが、条文があります。事案の特殊性から代襲を認めたものとして、大阪高判平成元年8月10日判例タイムズ708号222頁。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

2、平成12年10月から平成13年6月までの期間については、非嫡出子の相続分規定が違憲といえるかもしれない

3、マンションの賃貸借契約の解約は処分行為とされる可能性があり、有効な相続放棄ができなくなる可能性がある。

4、相続人が相続放棄をしつつ特定遺贈により遺産を取得することについては、信義則違反、詐害行為取消権の対象になりうる

5、限定承認するとみなし譲渡所得課税が発生する

6、方式違背により遺言としては無効であったとしても、死因贈与契約として効力が認められる場合がある(複数の裁判例あり)。

7、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の解説書としては、西山詮『民事精神鑑定の本質』 (新興医学出版社、2015)が参考になる

8、持戻し免除の意思表示については、改正民法(相続法) (1年以内施行〕では、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は
贈与がされたときは、持戻し免除の意思表示があったものと推定するとされている (改正民(相続) 903@[1年以内施行])。

9、相続人に遺言で包括遺贈がされた場合、相続放棄に加えて、包括遺贈放棄も3ヶ月以内にしないと責任をおうことになる

10、在外資産については、現地の弁護士に依頼し、現地で遺言書を作成する等の方策を講じた方が安全(参考文献として、酒井ひとみ=東京クロスボーダーズ「国際相続の法務と税務』 (税務研究会出版局、 2014)

11、特別受益としての贈与は、特段の事情のない限り、相続開始前1年間であるか否かを問わず、 また損害を加えることの認識の有無を問わず(つまり民法1030条の要件を満たさなくても)、全て遺留分算定の基礎に算入される(最判平10・3・24民集52・2・433)。
これに対して改正民法(相続法) 1044条3項[1年以内施行〕では次のとおり定められ、特別受益としての贈与について、遺留分算定の基礎として算入される場合が限定されている。すなわち、相続人に対する贈与については「相続開始前の10年間にしたものに限り」「生計の資本として受けた贈与の価額」を遺留分を算定するための財産の価額に算入するものとされている。

12、改正民法(相続法) [1年以内施行〕で、 1007条2項として、 「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない」との規定が新設された。

13、従来は遺留分減殺請求がなされたら、遺言執行者は業務を停止すべきと言われていたが、法改正により逆転した。改正民法(相続法) [1年以内施行] 1046条には、 「遺留分権利者及びその承継人は、受遣者(特定財産承継遺産により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」と規定し、遺留分減殺請求権が金銭債権にすぎないことを明らかにした。よって遺言執行者としては、改正民法(相続法) [1年以内施行〕施行後に発生した相続に関する遺言については、仮に遺留分減殺請求の意思表示がされていても、遺言執行を完了して差し支えない。

14、被相続人の葬儀費用を遺言執行者が支出することは、同人の生前債務の弁済とも、遺言執行の費用ともいえず、当然には認められない。

15、遺言の効力を争うときであっても、予備的に遣留分減殺請求の意思表示をしておかないと、時効にかかる場合がある。

16、赤字企業を生前に引き継ぎ立て直した場合、特別受益は理屈上相続開始時で価値を評価するので、多額の特別受益を受けたとなりえる(遺留分減殺の対象になりえる)。これに対して、特段の事情を主張したり、あえて相続放棄して特別受益でなくするという手法がある。

17、相続分の放棄は登記の関係で処理が不透明。相続分の譲渡を使うべき。

18、収益物件の収益を独り占めしている相続人がいる場合、審判前の保全処分で遺産管理者を選任する手法がある

19、遺産の一部分割の際は、残余財産の分割の際にはどう考慮するのか明確に定めておく

20、相続させる旨の遺言と異なる合意は贈与税が課税される可能性がある。国税庁は、民法907条を根拠に、贈与とはならないものと考え
ているようだが(国税庁タックスアンサーNo.4176)、一旦遺言に基づく登記を経由した場合においても贈与とならないとするのかは定かではない。

21、実務上、特別受益の「特別」性が強調され、持戻し免除の意思の推認もかなり簡単に行われており、特別受益の持戻しのほうが例外的といってよい。

 

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