業務上横領をしてしまい、前科はないが実刑になる可能性があるのかという相談(横領、刑事弁護)
2024年09月21日企業犯罪
【相談】
Q、私は、福岡市内の事務用品販売会社で経理業務をしています。独身なのですが、あるアイドルの推し活にはまってお金に困るようになり、会社のお金を流用するようになってしまいました。副業をして穴埋めしようと思っていたのですが、気付けば数百万円単位の金額になってしまいました。会社に発覚したのですが、弁済できるお金がありません。刑務所に行く危険性はどの程度あるのでしょうか。
A、一般に、「起訴された金額」が100万円を越えると初犯でも実刑の危険性が出てきます。もっとも、どういう経緯で横領したかによって、多少の情状酌量の余地はでてくると思います。弁護士をつけて示談交渉をして、分割弁済の合意をするのが良いと思います。
【解説】
良くある相談です。一般論としては回答のとおりですが、実際には示談をして刑事告訴されないといったこともあります。横領事件については立証作業が大変といったことや、会社にとっても不名誉といったことがあり、表沙汰にならないこともあります。とはいえ、放置していては刑事告訴されやすくなりますし、弁護士をつけずに交渉すると実際に損害額より多額の賠償請求をされることもあります。費用がかかっても弁護士をつけて対応すべきでしょう。
検察庁検察庁についてQ&Aコーナー裁判の執行等について
https://www.kensatsu.go.jp/qa/qa4.htm
「執行猶予」とは何ですか?
「執行猶予」には,刑の全部の執行猶予と刑の一部の執行猶予があります。
以前に懲役刑や禁錮刑に処せられたことがないなど一定の条件を満たす場合に,判決で3年以下の懲役刑又は禁錮刑を言い渡すとき,情状により,刑の全部の執行(刑務所に入ること)を1年から5年の範囲で猶予することができます。
また,同様に3年以下の懲役刑又は禁錮刑を言い渡すとき,犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して,再び犯罪をすることを防ぐために必要かつ相当である場合に,その刑の一部の執行を1年から5年の範囲で猶予することができます。
したがって,猶予されている期間は,刑務所に入ることはありません。
しかし,「猶予」ですから,その期間内に再び犯罪を犯すなどしたときは「猶予」が取り消され,刑務所に入ることとなります。
【参考記事】
植野聡「刑種の選択と執行猶予に関する諸問題」大阪刑事実務研究会編著『量刑実務大系第4巻 刑の選択・量刑手続』(判例タイムズ社,2011年12月)1-103頁
52頁
【財産罪の場合には,被害の程度やその回復の状況がかなり中核的な考慮要素になる。財産罪の罪種や態様は千差万別であり,法定刑と損害額が同じでも,類型的な非難可能性は罪名ごとに異なるし, また,例えば,詐欺の場合には窃盗よりそれが高く,恐喝の場合にはより高いと一応はいえるであろうが,反社会性が極めて高い巧妙かつ卑劣な手口の詐欺が,比較的単純な手口の恐喝よりも強く非難されるべき場合などもあるであろうから,定型的な一律の基準を設定することは困難である94)。
一般的指標にはできないという留保を付した上で, あえて具体的な数額を提示するとすれば,かつて庁内で行われた研究会では,比較的単純な手口の窃盗で,反省心も認められるが,被害回復がされておらず,被害者の宥恕も得られていないような場合を例にとると,未回復の被害額が100万円に近い額に達していれば,初犯でも実刑の選択をかなり現実的に考慮すべきではないかという意見が比較的多く,本研究会の席でも,ある程度有用な目安になるという限度では,特に反対する意見は見られなかった。】
第一東京弁護士会刑事弁護委員会編『量刑調査報告集Ⅳ』(第一東弁,2015年3月)120頁
11 業務上横領
求刑 3年
判決 2年
勤務する中華料理店の副支配人として、売上金等の保管・管理等の業務に従事していた被告人が、同店事務室において業務上預かり保管中の売上金合計615万円余を自己の用途に費消する目的で着服して横領した
示談交渉するも不成立
前科なし
H20.7
男37