河原崎裕司「電動アシスト自転車の体を為した原動機付自転車による重傷ひき逃げ事件の検挙」月刊交通2023年11月号(674号)
2024年01月22日月刊交通
読み物として大変面白かったです。この事案は、当初は傷害罪・道路交通法違反(救護措置義務違反・事故不申告)で逮捕されましたが、結局危険運転致傷(通行妨害目的)・道路交通法違反(救護措置義務違反・事故不申告)で起訴されています。何故そうなったのか、ということも興味深かったです。
【今回の事件は、「電動アシスト自転車の体を為した原動機付自転車による重傷ひき逃げ事件」という、これまで取り扱ったことのない事件であり、捜査に従事した捜査員は、法の執行者として知恵を出し、汗を流し、創意を凝らしながら捜査に挑み、発生から僅か1日半で被疑車両を発見するとともに被疑者を割り出し、逮捕・起訴そして判決にたどり着いたもので、今後のリーディングケースにもなり、若手交通捜査員にも刺激を与えたものであった。】
近時は、防犯カメラの位置や管理者を警察が把握しているので、事件・事故発生となれば地引き網のようにデータが収集されています。ひき逃げ事犯については、一刻も早く自首することを強くお勧めします。
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川上拓一編著『裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断』(学陽書房,2022年2月)58頁
【これに対し、事故後逃走したものの翻意してさほど時間を置かずに現場に戻った場合には、法的に自首が成立する場合はもちろん、そうでない場合も量刑上多いに考慮されるべきであろう。裁判所の量刑においても、「自動車運転過失致傷罪で傷害の程度がそれほどでない場合には、ひき逃げが伴っても、捕まるのが恐ろしくなって現場から逃走したが、結局、家族等に相談して、事故直後ではないけれども、程なくして警察に出頭したようなときは、執行猶予の余地がある。」と指摘される(原田・前掲『量刑判断の実際〔3版〕」46頁)。筆者の経験でも、確かに人身事故を惹起した後、自らの意思で「直ちに停止」せず現場を離れた段階で救護義務違反は成立するものの、翻意して戻った場合にはこれを評価し適宜減点していた。それ故に、通常の評点計算であれば、公判請求(自由刑求刑)が必至の「ひき逃げ」事案でも、(もちろん、被害者の負傷の程度にもよるが) 「現場への舞い戻り」を評価して減点計算の結果、略式処理(罰金刑)にとどまることもあった。もし、読者の皆さんが、知人や依頼者から突然電話が入り「交通事故を起こした。怖くなってその場から離れた(逃げた)。」と打ち明けられたら、「勇気を出して直ちに現場に戻りなさい。」旨助言することを勧めたい。それによって、最終処分が、被害者の負傷程度により「実刑から執行猶予」「公判請求から略式処理(罰金刑)」に変わる余地が生じるからである。】