犯罪行為を行って警察に連れて行かれたが、示談書を交わして終わったという事例
2021年08月28日読書メモ
時折あるタイプの相談です。
暴行事件や盗撮事件などで、現行犯で捕まって警察に連れていかれることがあります。その場で、「示談書」を作成してお金を支払うことになり、「上申書」を書いて帰されたがどうなるのか、というものです。
良くある話なのですが、インターネットには正確な情報がないようです。犯罪捜査規範の「微罪処分」と混同されていることもあります。
この問題については、警察公論2016年10月号の「クローズアップ実務 青年警察官の執行力向上を目指して 交番勤務立花巡査の一日(第71回)和解書を徴するべき?(その1)」と、翌月号の(その2)に解説があります。
被害者が事件化を望んでいないのであれば、後で紛争が生じないように被害者の意思を書面化しておくこと(答申書の作成)と、加害者が反省していること、後で事件化したときに自供していることを示すため書面化しておくこと(上申書の作成)が勧められています。併せて、写真撮影等の証拠保全をして事後の事件化に備えた措置をとることが勧められています。
一方、和解書を警察が保管することは、警察から和解を強制されたといった紛議を生じたり、和解金が入らないと和解書を被害者から開示請求されても加害者名が黒塗りになる等の問題もあるのでやるべきではないとされています。
なお、各都道府県により取扱いが異なることもあるそうです。いずれにしても、前科にはなっていません。警察のデータベースで犯罪事件として登録されているかは不明ですが、被害届が出ていないので登録されていないのではないかと思います。
※参考
昇任試験研究会編著『部内用 MPD SA過去問2019』(立花書房,2018年11月)255頁
<相互暴行の取扱い〉 和解・示談については,当事者間のことであり,警察が関与すべきものではないので,取扱い時において和解書等を作成させて受理するのではなく,当事者それぞれから上申書や答申書等を徴しておき, また取扱いの状況を報告書等にしておく,必要な写真を撮影しておくなど,後に立件することも視野に入れた措置を執っておくことが妥当である。当事者間で和解書等を作成するのであれば, 当事者らに対し,双方の署名押印のある原本を2通作成し, それぞれが保管しておく方法を教示すればよい(平27. 10.15刑事指導旬報第1505号「適正な事件処理について~和解書等を徴することの適否~」P2)。